【占い師・makotoの鑑定日記】

記事
占い
―「言葉にできなかった涙」―
4月最後の夜、私はひとり、蝋燭の灯りだけで部屋を照らしていました。
この仕事をしていると、外の喧騒から遠ざかるように、自分の内側の音に耳を澄ませたくなる瞬間が多々あります。

その晩、予約に遅れて現れたのは、40代前半の女性でした。名を「かずえ」と名乗りました。やや震える声、肩までの髪は雨に濡れて少し乱れていました。

彼女が最初に口にしたのは――

「先生、私、息子に嫌われてるかもしれません」

それは“相談”というよりも、“告白”のようでした。

テーブルに置かれたタロットカードは、彼女が指先で触れるより早く、私の中にある種の違和感を伝えてきました。
シャッフルして引いたのは、「塔」「月」「カップの6」――
壊れた信頼、見えない恐れ、そして子供時代の記憶。

私は一呼吸おいて、言葉を選びました。

「息子さんがあなたに冷たくなったと感じたきっかけ、何かありますか?」

彼女は目を伏せ、長い沈黙のあと、ぽつりぽつりと語り出しました。
高校生になった息子さんが、急に距離を取るようになったこと。何を聞いても「うるさい」と言われるようになったこと。
夫は家を空けがちで、相談しても「思春期だから」で片づけられてしまう。

しかし――カードは言っていました。
これは単なる“思春期のすれ違い”ではない、と。
彼女自身の中に、長く言葉にしてこなかった感情がある、と。

私は静かに、ひとつ提案をしました。

「今夜、息子さんに『私、あなたが怒っている理由がもしあるなら、聞きたい』って、ただそれだけを伝えてみてください」

彼女はしばらく無言でしたが、最後にこう言いました。

「占いって、答えを出すものじゃなくて……自分の中の声を引っ張り出すものなんですね」

私はただうなずきました。
そう――それが私の占いの本質。
未来を当てるのではなく、言葉にできない涙の正体を探ること。

その日の夜、私はキャンドルを吹き消したあともしばらく眠れませんでした。
彼女の「聞いてもらえた」という安堵の涙のあとに、ほんの少し、光の気配が差し込んだような気がしたからです。

もし、あなたの中にもまだ言葉にならない「揺れ」があるなら、
誰かに話す前に、カードにそっと問いかけてみてください。

そのとき、あなた自身すら気づいていなかった「心の声」が、
ひとすじの風のように、静かに耳元を通り抜けていくかもしれません。
サービス数40万件のスキルマーケット、あなたにぴったりのサービスを探す