私がまだ、占い師として駆け出しだったころの話です。
今ではご相談件数も増え、全国各地から依頼をいただけるようになりましたが、当時は「本当にこれで人の役に立てるのか?」と、自信を持てずにいました。
そんなある夜、一人の女性が飛び込みで私の元を訪ねてきました。
「すみません、ここ…占いできますか?」
疲れ切った顔で、コートの襟をぎゅっと握りしめていたのを覚えています。
彼女は35歳、広告代理店で働くバリバリのキャリアウーマン。
しかし、話を聞くうちに、キャリアの陰に隠れていた"大きな空白"が見えてきました。
それは「子どもを持つこと」への焦りと、「愛される自信のなさ」でした。
そのとき、私はただホロスコープを読むだけではなく、彼女の手のひらをゆっくりと包み込むように見ました。
そしてふと、口から出たのがこんな言葉でした。
「あなた、まだ誰にも見せていない優しさがありますね。強く見せることに慣れすぎて、本当のあなたが寂しがってる。」
彼女はぽつりと泣き出しました。
「なんで…それ、私の親にも言われたことないのに。」
そこから、彼女は涙を流しながら1時間以上話し続けました。
私がしたことは、占いというより、心の鍵を見つけるお手伝いだったのかもしれません。
数か月後、その女性から手紙が届きました。
あの夜から、私は初めて「一人で頑張らなくていい」と思えました。
恋人と向き合う勇気が出て、先日プロポーズされました。
占いって、未来を当てるものじゃなくて、心を照らすものなんですね。
震えるような文字で綴られた手紙を、今も私は大切に保管しています。
「未来」を言い当てるだけなら、誰だってできるかもしれません。
でも「その人の目の奥にある光を見つけてあげる」ことは、言葉に命を吹き込む仕事です。
私にとって占いは、奇跡を起こす道具ではなく、"心の声を通訳する言葉の魔法"。
あの夜の彼女の涙が、私を本当の意味で占い師にしてくれました。
そして今も私は、あの一言の重みを忘れずに、ひとりひとりと向き合っています。