【本田教之】透明な傘を差しながら、雨粒の数を数える方法
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ビジネス・マーケティング
雨の日に駅のホームで電車を待っているとき、ふと自分の差している透明なビニール傘を見上げて考えました。空から降ってくる無数の雨粒を、もし一粒残らず正確にカウントできる仕組みがあったら、私たちの世界の見え方はどう変わるでしょうか。二十年もシステムという名の巨大な計測器を作り続けていると、目に映る景色をどうしても分解可能なデータの集まりとして捉えてしまう職業病があります。でも、その雨粒一つひとつを数えるという一見無意味な空想の中に、実は人生の悩みを解決する究極のヒントが隠されていることに気づいたのです。
多くの人が抱える不安や問題は、正体のわからない霧のようなものです。なんだか仕事がうまくいかない、将来が漠然と不安だ。そんな心の曇り空を抱えたまま立ち止まってしまうのは、降ってくる雨の総量に圧倒されているからです。私はエンジニアとして、そんな混沌とした状態を一つひとつの要素に切り分ける作業を二十年続けてきました。大量の雨も、一粒ずつに分解してしまえば、それはただの水の玉に過ぎません。どんなに複雑なビジネスの課題も、実は小さな判断の積み重ねで構成されているのです。
私が提供しているサービスの本質は、プログラムを書くことそのものではなく、お客様の頭上に降り注ぐ土砂降りの悩みを整理し、視界をクリアにするための透明な傘を設計することです。視界を遮る真っ黒な傘ではなく、外の景色が見える透明な傘を差すことで、初めて自分の歩むべき道が見えてきます。今、自分が直面している雨粒はどれくらいの大きさなのか。それを数える余裕を持つだけで、心の中のパニックは静まり、論理的な次の一手が見えてくるはずです。
もし、あなたが今、解決の糸口が見えない問題に直面しているのなら、あえてその悩みをバラバラに分解してみてください。一つひとつを数え、名前をつけ、順番に並べてみる。そうするうちに、克服不可能な壁に見えていたものが、実は乗り越えられる段差の集まりだったことに気づくはずです。私はそんなデバッグのような人生の整理整頓をお手伝いするのが、たまらなく好きです。
雨はやがて上がります。でも、その雨の中にいる時間に何を考え、どう過ごしたかで、晴天の日の歩き方は劇的に変わります。一粒の雨を愛おしむように、自分の直面している課題をじっくりと観察すること。効率化のプロとして私が最後に行き着いたのは、そんな一見すると非効率な、自分自身との静かな対話でした。もしあなたの世界が雨に濡れて、何から手をつければいいか分からなくなったときは、一緒に傘の下で雨粒を数えることから始めましょう。そこから、あなたの新しい物語の設計図が描き出されていくのです。