精神障害者福祉手帳(以下、手帳または障害者手帳)の申請は人生負け組だという声をたまに聞きます。
本当にそうでしょうか? ムリしていないならその答えも良いですが、
「手帳はあなたの「自立」を支えるためのツール」
ということを意識してもらえると良いかと思います。
1.はじめに
障害者の取得を検討する際、「自分はそこまで重くないのではないか」「取得すると何かが終わってしまうのではないか」という不安を感じる人が実際にいらっしゃいます。しかし、社労士の視点から見れば、手帳は決してあなたを縛るものではなく、社会生活における制約を補い、 「自立」という目標を達成するための有効な支援ツール ということを知ってほしい。
まずは、制度の対象となる基本的な申請条件を確認しましょう。
・精神科の初診から半年(6ヶ月)以上が経過していること
・症状が一定程度「固定」しており、今後1〜2年は持続すると見込まれること(症状の固定化)
・精神障害により、日常生活や社会生活に具体的な支障が生じていること手帳は単に「税金の控除や割引などのメリットを得るためのカード」ではありません。本質は、 病気や障害によって生じている社会生活上の制約を、公的なサポートであなたの生活を補完し、あなたが自分らしく生きることを支える制度 なんです。
制度の目的を正しく理解し、必要であれば申請をお勧めします。
2.認定等級
手帳は3つの等級に区分されます。
1級
精神障害であって、日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの
2級
精神障害であって、日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの
3級
精神障害であって、日常生活若しくは社会生活が制限を受けるか、又は日常生活若しくは社会生活に制限を加えることを必要とする程度のもの
おやと思った方、いらっしゃいますよね。するどい!
障害年金の精神の診断書に似ていますね。その通りです。3級の判定が異なるだけです。
では、手順を取得するかを判断する3等級の 段階を見てみましょう。
3.客観的に見る「日常生活の8項目」
厚生労働省の基準において、3級は「日常生活は概ね自立しているが、社会生活には明確な制限がある状態」と定義されます。以下のテーブルは、医師に診断書を作成依頼する際の視点を整理したものです。
1. 適切な食事摂取
視点:栄養を考えた食事の準備、適切に食べられるか?
3級の目安:準備に手間取り、放置や中抜きなど栄養が偏ることがある。
2. 身辺の清潔保持
視点:入浴や着替え、規則正しい生活リズムを保てますか?
3級の目安:概ね自立。気分の波により入浴や着替えができない日がある。
3. 金銭管理と買い物
視点: 計画的にお金を使い、必要な判断ができますか?
3級の目安: 基本はできるが、混乱時や判断ミスにより生活を乱すことがある。
4. 通院と服薬
視点: 自発的に通院し、薬を正しく飲めますか?
3級の目安: 通院は可能だが、自分の判断で服薬を自己中断をしてしまう。
5. 他人との意思伝達
視点: 自分の意見を伝え、適切な対人関係を築けますか?
3級の目安: 会話はできるが、強い緊張やストレスにより対人接触を避けがち。
6. 安全保持・危機対応
視点: 緊急時や危険な場面で、身を守る行動ができますか?
3級の目安: 普段は問題ないが、強い不安や混乱がある時に対応ができない。
7. 社会的手続き・施設利用
視点: 役所や銀行、交通機関を一人で利用できますか?
3級の目安: 一人で利用できても、人混みや緊張する場面で行動できなくなる。
8. 社会活動
視点: 趣味や地域活動に、関心を持ち続けられますか?
3級の目安: 興味はあっても、気分の波や外出の困難さから参加が続けられない。
手帳の判定は、どれか一つの項目だけで決まるものではありません。上記の項目のうち、 「複数の項目」において中等度以上の援助が必要 、あるいは「できる時とできない時の波がある」と判断された場合に3級の認定対象となります。
1回できると「できる」と判断する人もいらっしゃいますが、一週間に例えた場合、3日はできるけど4日はできない場合は、「できない」と判断するのが適切です。できるは毎日できて、「できる」です。
4.さいごに
冒頭でもお話したとおり、
「手帳はあなたの「自立」を支えるためのツール」
です。回復するまでの間お世話になるだけで良いのです。
では、回復プロセスは?それは個人の症状によって全く異なります。主治医の先生のアドバイスに従ってゆっくり進めてください。
回復プロセスの例
・病院の精神科医療によるリハビリテーション
・リワークプログラム(復職支援)
・就労支援
自分に合った「回復の道」を選ぶために
精神障害者手帳3級は、「日常生活は自立していても、社会生活で困難を抱える方」を支えるための、一つの選択肢です。しかし、手帳はあくまでゴールではなく、あなたの人生を前進させるための「手段」の一つに過ぎません。
自立支援医療や就労支援などのツールを上手に使い、小さな「できた」を積み重ねること。それが精神疾患の再発を防ぎ、最も確実な回復へと繋がります。
最後に、主治医と対話するための大切な視点をお伝えします。「なぜ手帳が必要(あるいは不要)なのかを、理由を持って説明することが医師の仕事です」もしあなたが「3級の目安」に当てはまると感じたなら、「日常生活の8項目」のチェックの結果を持って、主治医に相談してみてください。単に書類を作るだけでなく、あなたの1年、2年先の未来を見据えた「最善の回復プラン」を、先生は描いてくれると思いますよ。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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