前回の記事では、夕方のエネルギー切れと、チョコや甘いものに頼ってしまう流れについて書きました。
今回は、その続きです。
テーマは「下痢・冷え・腸の回復」です。
個人が特定されないよう、一部内容はぼかして書いています。
今回のご相談者さんは、最初の段階で、
・腸の調子が悪い
・油物や肉を食べると食後すぐ下痢になりやすい
・足が冷える
・お腹を触ると冷たい
・疲れが抜けない
・朝から眠たい
という状態がありました。
一見すると、下痢は腸の問題、冷えは冷えの問題、疲れは体力の問題のように見えます。
でも、命縁弁証学では、これらを別々に見るのではなく、ひとつの流れとして見ていきます。
今回まず大きなポイントになったのは、
お腹の冷えと、消化吸収の弱り
でした。
お腹が冷えていると、食べたものを受け止めて、消化し、体の力に変える働きが弱くなりやすくなります。
すると、食べたものが十分に力にならない。
体力が作れない。
疲れが抜けない。
体を温める力も弱くなる。
さらに冷えやすくなる。
こういう流れが起きていた可能性がありました。
特に、油物や肉で下痢になりやすいという点は重要でした。
油や脂の多い食事は、消化にある程度の力が必要です。
元気な時なら問題なく食べられるものでも、胃腸が弱っている時には負担になることがあります。
今回のご相談者さんの場合、もともと下痢が続きやすい状態がありました。
そこに油の多い食事が入ると、腸の中の水分や動きがさらに乱れ、便がゆるくなりやすいと考えられます。
また、アルコールも腸を刺激します。
楽しく飲める時もありますが、体が整っていない時には、腸の動きを強めたり、お腹の痛みや下痢につながることがあります。
このように見ていくと、
「何を食べるとお腹が反応するのか」
「どのタイミングで下痢になるのか」
「冷えがある時にどう変化するのか」
ということが、とても大切になります。
今回の見立てでは、下痢を単に「腸が弱い」で終わらせませんでした。
冷えがある。
お腹の働きが弱っている。
油やアルコールなど、今の状態では受け止めにくいものがある。
朝の冷たい飲み物も、胃腸の働きに影響している可能性がある。
こうした要素を重ねて見ていきました。
そこで、まずは体に負担の少ない形を提案しました。
・朝は冷たい飲み物を控える
・温かいものを中心にする
・主食はお米を中心にする
・油の多いものは様子を見ながら調整する
・一度にたくさん食べず、少量をこまめにする
・よく噛んで食べる
特別なことではありません。
けれど、今の体の状態に合わせるという意味では、とても大事なことでした。
実際に、ご相談者さんは、朝のアイスコーヒーをやめて、ご飯をしっかり食べるようにしたところ、夕方まで体力が持つようになったと報告してくださいました。
そして腸の状態にも変化が出てきました。
それまで下痢が多かった状態から、
排便が一度止まり、
その後、普通便が出るようになってきたのです。
これは、かなり大きな変化です。
下痢が続いていた方にとって、急に便が出なくなると不安になることがあります。
でも、今回の流れでは、下痢が止まり、腸が食べたものを受け止め始めている過程として見ることができました。
もちろん、便秘が続いたり、お腹の痛みが強かったりすれば注意が必要です。
ただ、今回のように、
下痢が続いていた
↓
食事を整えた
↓
一時的に出ない日があった
↓
普通便が出た
という流れなら、腸の働きが変わり始めているサインと見ることができます。
ご本人も、今までほぼ下痢だった状態から、普通便が出たことを大きな変化として感じていました。
さらに印象的だったのは、冷えの変化です。
最初は、足の冷えや、お腹を触った時の冷たさがありました。
ところが、食事や飲み物を整えていくうちに、手足が温かくなり、お腹も温かいことに気づかれました。
これはとても大事な変化です。
体の表面だけでなく、お腹の温かさを感じられるようになったということは、体の内側の働きが動き始めているサインとも考えられます。
そして、ご本人はそこからさらに、自分の体を観察するようになりました。
「今、お腹は温かいかな」
「仕事で負荷がかかる時は、お腹の表面が冷たくなる気がする」
「ストレスと消化の働きがつながっているのかもしれない」
このように、自分で体の変化に気づき始めたのです。
これは、命縁弁証学においてとても重要なことです。
こちらが一方的に答えを渡すだけではなく、本人が自分の状態を見られるようになる。
それが、本当の意味での回復に近づいていく流れだと思います。
その後、お腹の張りやガスの問題も出てきました。
食事量が増え、キャベツ・きのこ・海藻などの食物繊維も増えたことで、腸の中で発酵が活発になり、ガスが溜まりやすくなっていた可能性がありました。
ここでも大切なのは、単純に、
「食物繊維が悪い」
「野菜を控えればいい」
という話にしないことです。
食物繊維は大切です。
でも、胃腸がまだ整いきっていない状態で、急に量が増えると、お腹の張りにつながることがあります。
つまり、良いものでも、今の状態に対して多すぎると負担になることがあるのです。
ここでも、命縁弁証学の基本は同じです。
何が良いか悪いかではなく、
今の体に合っているかどうか。
今回の場合は、
・キャベツやきのこ、海藻は少し量を調整する
・毎食たっぷりではなく、1〜2回程度にして様子を見る
・温かい食事を中心にする
・よく噛む
・一度に食べすぎず、分けて食べる
という方向で考えました。
「減らす」というより、「整える」です。
下痢が改善してきた。
冷えも改善してきた。
体力も戻ってきた。
でも、腸はまだ変化の途中で、食物繊維が多いとガスが出やすい。
このように見ると、今の体の段階が分かりやすくなります。
回復とは、一直線に良くなるものではありません。
下痢が止まる。
普通便が出る。
また少し緩くなる。
ガスが増える。
お腹の張りが出る。
でも全体としては、体力が戻り、冷えが減り、便の状態も安定に向かっている。
こうした揺れを見ながら整えていくことが大切です。
一時的な変化だけを見て、
「また悪くなった」
「やっぱりダメだ」
と判断してしまうと、せっかくの回復の流れを見失ってしまいます。
大切なのは、全体を見ることです。
体力はどうか。
冷えはどうか。
便の質はどうか。
お腹の張りはどうか。
気分はどうか。
食事との関係はどうか。
その全体の流れを見て、今は整ってきている途中なのか、負担が強くなりすぎているのかを判断していきます。
今回のケースでは、最初は下痢・冷え・疲れ・落ち込みがつながっていました。
そこから、朝食や飲み物を整え、夕方のエネルギー切れに対応し、油やアルコール、食物繊維の量を調整することで、少しずつ体の反応が見えてきました。
この流れは、命縁弁証学で大切にしている「状態を見る」という考え方そのものです。
下痢を、ただの腸の問題にしない。
冷えを、ただの冷え性にしない。
疲れを、ただの体力不足にしない。
落ち込みを、ただのメンタルの弱さにしない。
それらがどうつながっているのかを見る。
そして、今の体が何を受け止められて、何がまだ負担になるのかを探っていく。
今回の実践例から言えることは、体はかなり正直に反応しているということです。
冷たいものが負担になる。
油が多いと下痢になりやすい。
温かい食事で楽になる。
お米でエネルギーが安定する。
食物繊維が多すぎるとガスが増える。
お腹が温かくなると、体も気持ちも安定しやすくなる。
こうした反応をひとつずつ見ていくことで、自分に合う整え方が見えてきます。
健康法は、正しさだけでは続きません。
自分の体で変化を感じられること。
なぜそれが合っているのか納得できること。
無理なく生活に入れられること。
この三つがそろうと、整えることは続けやすくなります。
今回のご相談者さんも、自分の体の反応を見ながら、少しずつ調整できるようになっていきました。
それは、ただ体調が良くなったというだけではなく、自分の状態を見られるようになったという意味でも、とても大きな変化です。
次回は、体が整うことで心の受け止め方がどう変わったのかについて書いていきます。
仕事でミスをした時の落ち込み方や、気持ちの切り替えに出てきた変化を見ていきます。