こんにちは、ゆらぎです。
このご時世、クラウド型のサービスを受けることがかなり多くなってきていると思います。
今回は、従来のシステム購入と異なる点、それによって誤りがちな会計処理についてまとめようと思います。
なお、本記事では、固定資産の計上基準以上の金額のものを対象とします。
少額のものは費用処理でよいかと思いますので。
なお、システムまわりについてはほぼ素人ですので、用語の誤りがあればご指摘いただけますと幸いです。
税務と会計の処理を混同しがち
私自身も実務にあたって、調べながら処理を検討していますが、
会計士さんや税理士さんの個人ブログですら、処理を混同されている(あるいはあえて曖昧にしている?)ものを見かけます。
だとしたら、一般の経理の方はなおのこと処理を誤るリスクが高いですよね。
オンプレミスとクラウド
まず、システムの購入・利用形式は、オンプレミスとクラウドの2つに大別できます。
・オンプレミス
オンプレミスとは、自社サーバーにシステムをインストールするタイプを指します。
いわゆる買い切りタイプはこれにあたり、
購入にかかる費用が比較的高額になるものの、自社仕様へのカスタマイズもしやすいメリットがあります。
・クラウド
クラウドとは、サービス事業者側のシステムにアクセスして利用するタイプを指します。
毎月や毎年の利用料を払い続ける必要がありますが、オンプレ型と比べると安価なことが多いです。
と、ここまではよくある説明なのですが、
実務で目の当たりにしたことをもう少し補足します。
クラウド型でもそれなりの初期費用がかかる場合がある
従来使用していたシステムから乗り換えてクラウドを利用する場合で、データの移行が必要になるケースがあります。
今まてま使用してきた諸々の情報が残っているわけで、それを捨ててしまって一からデータ構築する、なんてことはあまりないですよね。
そうすると、データの移行を業者に依頼するのですが、
これが数十万円~数百万円と、ともすれば固定資産と判断してしまうような金額になることがあります。
また、新たにデータやクラウド環境を構築するにしても、必要な情報が多いと、それもまた高額になることがあります。
クラウド型は比較的安価、といいながらも、初期費用については一時に多額の支出となることもあるのです。
データ移行にかかる処理
データ移行にかかる費用については、税法独自の規定がありませんので、会計処理についてのみまとめます。
会計上は、「研究開発費及びソフトウェアの会計処理に関する実務指針(移管指針第8号)」(以下、研究開発費等実務指針)の第16条第1項に示されています。
新しいシステムでデータを利用するために旧システムのデータをコンバートするための費用については、発生した事業年度の費用とする。
これは、ソフトウェアを利用するための環境整備でしかなく、ソフトウェアそのものの価値を高めるものではないためです。
一方、データのコンバートにあたり、データの有用性を高めるような粒度の変更や大幅な加工を行う場合には、データ自体の価値を高めるものとして、資産計上が可能と考えられます。
クラウド利用時の初期費用やカスタマイズ費用
・会計処理
クラウドサービスに関連する会計処理については、現時点で個別に会計基準化されていません。
そこで、日本公認会計士協会による研究資料を参考にしてみます。
「ソフトウェア制作費等に係る会計処理及び開示に関する研究資料 ~DX 環境下におけるソフトウェア関連取引への対応~(会計制度委員会研究資料第7号)」では、クラウド、特にSaaSのユーザー側の会計処理について触れている部分があります。
あくまで研究資料であり、会計基準ではないため、現状の課題と検討を繰り返しており少し読みにくさは感じました。
まず、ソフトウェアとして無形固定資産計上が可能か?について。
この点、オンプレの購入の場合には、ユーザー側がシステムを保有することになりますので、システム自体を固定資産に計上し、これにかかる初期費用も付随費用として固定資産に含めます。
クラウドの場合は、システム自体はベンダー側が保有しており、ユーザーはそれに対して利用料を払う構図です。
ユーザーがシステム自体を固定資産に計上しない以上、付随費用に相当する初期費用やカスタマイズ費用だけを単独で無形固定資産に計上することはできないと考えられます。
研究資料はこれで終わっているわけではなく、じゃあ
資産計上自体は可能か?
についても、「財務会計の概念フレームワーク」(以下、概念フレームワーク)に照らして検討されています。
概念フレームワーク第3章第4項では、資産について以下のとおり定義しています。
資産とは過去の取引または 事象の結果として、報告主体が支配している経済的資源をいう。
ここでいう「支配」とは、所有しているかどうかとは別の概念で、そこから便益を享受できるか、という点で判断します。
初期費用やカスタマイズ費用の支出(とその先のクラウドサービスの利用)により、費用削減や収益獲得に貢献する場合には、便益を享受し、支配しているといえますので、資産性があると考えられます。
資産計上時の科目についてですが、初期費用等の効果が将来の期間にわたって及ぶ場合には、その期間に対応して費用処理するよう、前払費用として資産計上することがよいのかと思います。
ただし、費用計上する期間については、ソフトウェアとして計上する場合の償却期間や、後述する税務上の損金算入時期にひっぱられることなく、
別途効果の及ぶ期間を判断することが必要です。
会計監査でも根拠をもって説明する必要があることを考えると、
・利用料を一定の期間まとめて初めに払っている場合は、その期間
・その他契約等で明記しているクラウドサービスの利用期間
あたりを使うのがよいかと思います。
クラウドサービス利用開始にあたり、社内の稟議決裁時に期間を明記するのも一つかもしれませんが、
事業のうちの特定の目的に限って利用するものならまだしも、社内インフラとして利用する場合には、特段の事情がなければずっと使い続けるでしょうし、あまり有効策ではないでしょうね。。
・税務処理
税務上は、法人税法施行令第14条第1項第六号ハの「役務の提供を受けるために支出する権利金その他の費用」に該当します。
期間については、5年間(契約更新のたびに支出することが見込まれる場合は、契約の有効期間)にわたって損金算入します。
おわりに
はじめにも述べたような、個人のブログを参考に経理処理を検討されている方や、各部署からの計上申請を受けて固定資産処理をされているような場合には、今回のようなクラウド関係の費用についても固定資産に計上してしまっている場合があるのでは、と少し危惧しています。
会計上は明確な基準はなく、あくまで参考程度の情報しかないものの、
会計監査時にもめることのないよう、事前に各方面と協議しながらスムーズに会計手当をしていきたいものです。
ここまでお読みいただき、ありがとうございました。
ではまた。