セカンドキャリアについて書かれた本を読んでいると、こんな言葉をよく目にします。
「マイクロ起業すれば、70歳まで働ける」
「会社員のように時間に縛られず、自分らしく働ける」
「定年後は、好きなことを仕事にすればいい」
確かに、うまくいけばそうなのだと思います。
でも、実際に自分自身のセカンドキャリアを考え、少し動いてみて感じるのは、
そんなに簡単なものではない。
ということです。
副業と言っても、簡単に収益化できるわけではない
ブログ、note、アフィリエイト、せどり、ハンドメイド、オンライン講師……。
「副業」として紹介される仕事は、世の中にたくさんあります。
しかし、実際にやってみようとすると、そう簡単に収入には結びつきません。
ブログを書いたからといって読者が増えるわけでもありません。
記事を書いたからといって、すぐに売れるわけでもありません。
商品を仕入れて販売すれば利益が出る、というほど単純でもありません。
結局のところ、長い時間をかけて取り組み続けられること。
そして、試行錯誤しながら改善し続けられること。
何より、それに対して情熱を持ち続けられること。
そういうものがなければ、簡単に収益化できるものではないのだと思います。
「定年後に何か始めればいい」というほど、甘い世界ではありません。
実際に会社の外側を少し見てみて分かったこと
私自身、セカンドキャリアを考える中で、人事についてもっと勉強したいと思い、中小企業に飛び込んでみました。
大きな組織に長年いた私にとって、これはかなり大きな経験でした。
そこで分かったのは、人事という仕事の守備範囲の広さです。
採用、労務、給与、社会保険、人材育成、評価、組織開発、社員とのさまざまな調整……。
大きな組織では、それぞれに専門部署や担当者がいます。
しかし、中小企業では一人の人間が非常に広い範囲を担わなければなりません。
そして、そこで何年も、何十年も仕事をしてきた人たちがいます。
そこに、これまで大組織の中で人事の一部分しか見てこなかった私が入っていっても、簡単に太刀打ちできるものではありません。
これは、実際にその世界に入ってみなければ分からなかったことでした。
さらに、もう一つ大きな発見がありました。
それは、
「下請けには下請けの苦労や苦渋がある」
ということです。
これまで私は、どちらかというと発注する側、大きな組織の側にいました。
しかし、立場が変われば見える景色も変わります。
大きな会社から見れば「当たり前」のことが、別の立場の人にとっては大きな負担になっている。
そんなこともあります。
会社の中にいるだけでは見えなかった世界を、少しだけ経験することができました。
これは、私にとって大きな財産になったと思っています。
今「よかった」と思えること
そして、今回の経験を振り返って、「これはよかった」と思えていることがあります。
それは、転職ではなく、社内公募という形を選んだことです。
私は今も元の会社の社員という身分を持っています。
もし、これが完全な転職だったらどうだったでしょうか。
この年齢で転職して、もし転職先の仕事や人間関係が自分に合わなかったら。
「こんなはずではなかった」と思っても、元の会社に戻ることはできません。
55歳を過ぎてからの転職です。
若い頃とは違います。
やり直しが簡単にできる年齢ではありません。
そう考えると、社内公募という形で新しい環境に挑戦しながらも、元の会社とのつながりを残せていることは、とても大きな意味があります。
もちろん、今の仕事で苦労していることはたくさんあります。
それでも、完全に会社の外へ出てしまうのとは、リスクがまったく違います。
セカンドキャリアの答えは「会社の外」とは限らない
セカンドキャリア本やセカンドキャリア研修では、
「定年前から準備して、会社の外に出よう」
というメッセージが語られることがあります。
もちろん、それも一つの選択肢です。
でも、私は今、少し違うことを考えています。
セカンドキャリアの答えが、必ずしも会社の外にあるとは限らない。
社内異動かもしれません。
社内公募かもしれません。
今までとは違う部署で、新しい仕事に挑戦することかもしれません。
あるいは、会社員を続けながら小さく副業を始めることかもしれません。
そして、会社を辞めるのは、その後でもいいのかもしれません。
特に、個人事業主として企業研修講師を目指す場合、在職中には応募しにくいケースもあります。
だからといって、何も準備せずに退職してしまうのは、やはりリスクがあります。
「会社を辞めてから考える」のではなく、
会社にいる間に、どこまで準備できるか。
これが重要なのだと思います。
セカンドキャリアは「勢い」より「慎重さ」
私はこれまで、セカンドキャリアについてかなり前向きに考えてきました。
研修講師になりたい。
キャリアコンサルタントとして仕事をしたい。
ひとりで事業をやってみたい。
そんなことを考えてきました。
でも、実際に少し動いてみると、夢や希望だけではどうにもならない現実も見えてきました。
だからといって、挑戦しなければよかったとは思っていません。
むしろ、実際に動いたからこそ分かったことがあります。
それは、
セカンドキャリアは、思っている以上に慎重に考えたほうがいい。
ということです。
特に50代半ばを過ぎてからのキャリアチェンジは、若い頃の転職とは違います。
失敗したときに、やり直すための時間が限られています。
だからこそ、夢だけで決めない。
本に書いてある成功事例だけを見ない。
「70歳まで働ける」「自由な時間が増える」といった魅力的な言葉だけに飛びつかない。
実際にその仕事をしている人の話を聞き、小さく試してみる。
できれば会社を辞める前に、実際の仕事や市場を見てみる。
そして、
「本当に自分は、この仕事を10年、15年続けられるのか」
と自分に問いかけてみる。
それくらいの慎重さが必要なのだと思います。
セカンドキャリアは、人生の後半戦です。
だからこそ、焦って答えを出す必要はありません。
会社の外に出ることだけが、セカンドキャリアではありません。
むしろ、会社に残るという選択肢を含めて、いくつもの可能性を持っておく。
そして、少しずつ試しながら、自分に合う場所を探していく。
私自身、まだセカンドキャリアの答えを見つけたわけではありません。
ただ、実際に一歩踏み出してみたことで、
「セカンドキャリアは、そんなに簡単なものではない」
ということだけは、身をもって分かってきました。
だからこそ、これからセカンドキャリアを考える人には伝えたいと思います。
焦らなくていい。
会社の外に出ることを、最初からゴールにしなくていい。
そして、
セカンドキャリアは、用意周到に、慎重に考えるべき。
人生の後半戦だからこそ、私はそう思っています。