人の心は変えられない。それでも組織を動かすために

人の心は変えられない。それでも組織を動かすために

記事
ビジネス・マーケティング
管理職として長く仕事をしてきて、改めて感じることがあります。

それは、「人の心というものは、本当にさまざまだ」ということです。

上司の言葉を素直に受け止め、すぐに行動に移してくれる人もいます。

一方で、自分なりの考えや価値観を強く持っていて、なかなか考えを変えない人もいます。

どちらが良い、悪いという話ではありません。

人はそれぞれ違う経験を積み、違う価値観を持っているからです。


考えを変えない人にも、いろいろなタイプがいる

以前は、「上司の言うことを聞かない人」は、扱いにくい人だと思っていました。

しかし、長くマネジメントを経験する中で、それだけでは判断できないと感じるようになりました。

自分の考えを曲げない人にも、大きく分けるといくつかのタイプがあります。

一つは、自分の信念や専門性を持ち、高い成果を出す人です。

こういう人は、簡単には人の意見に流されません。しかし、そのこだわりが良い方向に発揮されると、大きな力になります。

一方で、自分の考えを強く持っているものの、なかなか仕事の成果につながらない人もいます。

「なぜ自分がこの仕事をしているのか」
「自分は本当にこの仕事に向いているのか」

そんな思いを抱えながら仕事をしている人もいます。

また、素直な人にもいろいろあります。

素直に吸収して成長する人もいれば、言われたことはきちんとするけれど、なかなか期待する成果につながらない人もいます。

つまり、「素直だから良い」「頑固だから悪い」という単純なものではないのです。


マネージャーの仕事は、人を変えることではない

以前の私は、部下に理解してもらうこと、納得してもらうことを強く求めていたように思います。

「なぜ分かってくれないのだろう」
「なぜ考え方を変えてくれないのだろう」

そう思うこともありました。

しかし、マネジメントを経験するほど、人の心を変えることの難しさを感じます。

人は、他人から強制されて変わるものではありません。

むしろ、変えようとすればするほど、相手は防御的になります。

指摘されたときに言い訳をしたり、自分の正しさを主張したりするのも、自分を守ろうとする自然な反応なのだと思います。

だから、管理職が目指すべきなのは「人を変えること」ではないのではないでしょうか。


必要なのは、成果を出せる環境をつくること

組織には、それぞれ役割があります。

会社は、一人ひとりに何らかのアウトプットを期待しています。

どれだけ個性が違っても、組織の一員である以上、必要な仕事をしてもらわなければなりません。

だからマネージャーの役割は、

「自分の考えに合わせること」

ではなく、

「その人が持っている力をどう活かし、必要な成果につなげるか」

を考えることなのだと思います。

もちろん、本人の考え方や価値観をすべて変えることはできません。

しかし、

「この仕事ではここまでやってもらう必要がある」
「組織として大切にする基準はここにある」

ということを伝え、その中で本人がどう折り合いをつけていくかを支援する。

そこにマネージャーの役割があるのだと思います。


画一的なマネジメントでは人は動かない

特に、長く一つの組織で働いていると、「こうあるべき」という考えに陥りがちです。

私自身、鉄道会社という安全を最優先する組織で長く仕事をしてきました。

ルールを守ること、決められたことを確実に実行することは非常に重要です。

しかし、組織にはさまざまな人がいます。

同じ教育を受けても、同じ言葉をかけても、受け取り方は違います。

だから、

「全員に同じ方法で接する」

というマネジメントには限界があります。

必要なのは、一人ひとりを見ながら、その人に合った関わり方を考えることです。

ある人には任せることが必要かもしれません。

ある人には、具体的な目標や基準を示す必要があるかもしれません。

ある人には、まず話を聴くことが必要かもしれません。


完璧な上司になる必要はない

以前の私は、上司である以上、何でも分かっていなければならないと思っていました。

正しい答えを示さなければならない。
部下を納得させなければならない。

そう考えていました。

しかし、今は少し考えが変わりました。

管理職は、すべての人を思い通りに動かす存在ではありません。

違う価値観を持つ人たちがいる中で、組織として進む方向を示し、成果につながるように舵を取る存在なのだと思います。

人の心は変えられない。

だからこそ、人の違いを前提にする。

そのうえで、必要な成果を出してもらうためにどう関わるかを考える。

それが、管理職として今も試行錯誤している、マネジメントの本質なのだと思います。
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