管理職になって長い間、私は「部下を育てる」ということを勘違いしていました。
部下から相談を受けたとき、仕事の進め方や判断を求められたとき、私はほとんど反射的に「私ならこうする」と答えを伝えていました。
早く解決したい。
迷わせたくない。
失敗させたくない。
そんな思いからでした。
当時は、それが上司としての役割だと思っていたのです。
【答えを教えることは、部下の成長を止めてしまう】
しかし、後になって気づきました。
私が答えを先に言ってしまうことで、部下は考える必要がなくなっていたのです。
一見すると仕事は早く進みます。
でも、それでは次に同じような場面が来ても、自分で判断できる人材には育ちませんでした。
「これくらい自分で判断して欲しい」と思えることでも、部下は私の判断を求めてきました。
管理職が目指すべきなのは、自分の代わりに考えられる部下を育てることです。
そのためには、上司が答えを出すのではなく、部下自身に答えを見つけてもらうことが大切なのだと、ようやく理解しました。
【キャリアコンサルタントの学びが転機になった】
この考え方が裏付けられて身についたのは、キャリアコンサルタントの資格を取得したことがきっかけでした。
キャリアコンサルタントの面談では、相談者に答えを与えることは基本的にありません。
相手の言葉を丁寧に聴き、その言葉を追いながら問いかけを重ね、自ら気づきを得られるよう支援します。
「その判断をした理由は何ですか?」
「この判断をする上で、何を一番大切にしたいと思っていますか?」
「他に考えられる方法はありますか?」
こうした問いによって、相手は自分自身で考え始めます。
私はこの手法を学びながら、「これこそ部下育成にも必要なことだった」と気づきました。
【コーチングは、上司が答えを持たないことではない】
もちろん、コーチングとは、ただ質問を続ければよいというものではありません。
部下が迷い続け、話が堂々巡りになってしまっては意味がありません。
だからこそ、上司にはゴールの見立てが必要です。
組織として目指す方向性や、判断の軸は頭の中に持っておく。
その上で、
「どんな基準で判断する?」
「その選択のメリットとデメリットは?」
「会社として大切にすべきことは何だろう?」
そんな問いを投げかけながら、部下自身が答えにたどり着けるよう支援する。
これがコーチングなのだと思います。
【コーチングは一朝一夕では身につかない】
私は若い管理職だった頃、このことが全くできていませんでした。
会社の研修でも、コーチングについて話を聞く機会はありましたが、実践的に身につくほどのトレーニングはありませんでした。
だからこそ、キャリアコンサルタントの学びは、私にとって大きな財産になっています。
とはいえ、知識を得ただけで上手にできるようになるわけではありません。
部下から相談を受けた瞬間、今でもつい答えを言いたくなることがあります。まだまだ試行錯誤が続いています。
そんなときは、自分にこう言い聞かせます。
「今、本当に必要なのは答えを教えることか。それとも、考える機会をつくることか。」
この一呼吸が、部下の成長を左右するのだと思います。
【管理職の仕事は、「答えを出すこと」ではなく、「考えられる人を育てること」】
管理職は、自分が一番仕事ができればいいわけではありません。
部下が自分で考え、自分で判断し、自分で行動できるようになること。
その積み重ねが、強い組織をつくります。
私自身、まだまだ道半ばです。
それでも、以前のようにすぐ答えを言うのではなく、「まずは問いかけてみよう」と意識できるようになったことは、大きな変化だと感じています。
部下を育てる近道はありません。
だからこそ、今日も一つひとつの問いかけを大切にしながら、管理職として成長し続けたいと思います。