天気が良い日は、可能な限り呪具(じゅぐ)たちに日光浴をさせています。 太陽の強烈な陽のエネルギーを吸い込ませ、彼らに蓄積した「陰」の澱みを浄化させるための、危険を伴う作業です。
ふと、厚手のレース越しに、恐る恐る光を浴びる彼らの姿を見て、 「毒と薬は紙一重だな」と感じ、その張り詰めた空気を切り取ってみました。
せっかくの機会ですので、普段は決して口外することのない、 私の相棒たち深淵を覗き込むための道具について、少しだけ触れましょう。
光を恐れ、闇を喰らうものたち
呪具は、本来「陰」の属性を強く持ちます。直射日光のような強すぎる「陽」の気は、彼らにとって劇薬となり得ます。一歩間違えれば、その力が暴走したり、あるいは霧散して使い物にならなくなってしまうのです。
だからこそ、こうして厚手のレースという結界越しに、慎重に、慎重に光を届けるのです。
この木箱、写真ではただの古びた箱に見えるでしょう。しかし、これ一つ持ち上げようとすれば、収納している外箱が悲鳴を上げるほどの重量があります。それは物理的な重さではありません。そこに凝縮された、数え切れないほどの祈りと、呪詛にも似た強い念の重みです。 私はいつも、彼らの機嫌を損ねないよう、畏怖の念を抱きながら、細心の注意を払って触れています。
今回はかろうじて太陽光に耐えうるものたちですが、中には「光は一切不要」と拒絶する子もいます。 月の光しか受け付けない子、新月の闇夜にしか目覚めない子、あるいは、生贄にも似た代償を求める気難しい子……。 彼らは皆、人間よりも遥かに強烈な自我を持っているのです。
禁忌の道具たち
今回お見せしているのは、私が所持する呪具のほんの氷山の一角に過ぎません。
実際はこの10倍以上の数が、光の届かない場所に眠っています。その多くは、「他人の目に触れた瞬間、術者に災いをもたらす」あるいは「関わった者の精神を蝕む」といった、危険な性質を持つ禁忌の品々です。そのため、家族にさえ、その存在を明かしたことはありません。
中には一見すると、ただの朽ちた木片や、錆びついた鉄屑に見えるものもあるでしょう。 しかし、そうした「価値なきもの」に見える外見の下にこそ、常人には扱いきれない凄まじい力が封印されているのです。
特に木製の呪具は、扱いが非常に厄介です。湿度や乾燥といった環境の変化だけでなく、持ち主の心の揺らぎにさえ敏感に反応します。
彼らは、最高級の葉巻を保管するための「ヒュミドール」という調湿箱の中で、外界から隔離されながら、次の出番を静かに待っています。一番手のかかる、しかし最も強力な力を秘めた、愛しい怪物たちです。
深淵への潜行 ~セットアップ~
ご依頼をいただいた際、私は150点以上あるこれら呪具の中から、ご依頼者様の魂の深淵、お悩みの闇の深さに合わせて、最適な組み合わせを選び出します。
縁結びであれば約10点。 思念伝達を伴う、因果に干渉するような複雑な術であれば、25点近くを厳選します。
それらを配置する台座も、適当なものでは許されません。 術の発動時、莫大なエネルギーの奔流を受け止める防波堤となるため、数ある中から最も相性が良く、強固なものを選定します。
20cm四方の小さな祭壇、あるいは護符を伴う場合は30cm四方の祭壇へ。 選び抜かれた呪具を配置し(セットアップ)、最後に中央の蜜蝋へ火を灯すことで、現世と常世(とこよ)の境界が曖昧になり、深淵への扉が開かれます。
施術の流れについて ~禁忌と約束~
私の行う術は、あなたの魂と対象者の魂を、深淵を通じて接続する危険な作業です。 術を確実に成功させ、代償を最小限に抑えるため、以下の流れを厳守してください。
❶ 予備鑑定・調律(1次準備)
まず、あなた様の魂の状態と、叶えたい願いの「闇」の部分までを直視するための予備鑑定を行います。 これは結果をお伝えするためではなく、どの呪具を選び、どの禁断の祈祷書を紐解くべきかを決めるための「契約書の作成」です。 セージやクロモジなど、場の浄化と結界形成に必要な香草の調合もこの段階で行います。
❷ 施術開始の合図
準備が整い次第、「施術を開始する」旨のご連絡を差し上げます。 【絶対厳守事項】 このご連絡に対し、ご返信は一切不要です。 かつて、術の直前に言葉を交わしたことで、形成しかけたエネルギーの回路(フロー状態)が逆流し、ご依頼者様に反動が及んだ事例がございます。 「既読」をつけていただくだけで、あなたの覚悟は十分に伝わっています。息を潜め、静かにお待ちください。
❸ 祭壇の構築(2次準備)
ご連絡の直後から、本格的なセットアップに入ります。 選定した呪具を配置し、蜜蝋に火を灯し、私自身の精神を極限まで研ぎ澄ませ、深淵へと沈めていきます。護符をご希望の場合は、この張り詰めた空気の中で、魂を削りながら製作に入ります。
❹ 儀式の執行
完全に意識が接続されたことを確認し、術を行います。 開始のご連絡からおおよそ40分後。そこから24時間~48時間をかけ、計12回にわたる、魂への働きかけを行います。
❺ 結び・完了
すべての工程が滞りなく完了した後、祭壇を解き、〆(しめ)の術を行います。
思念伝達をご依頼の場合: お相手の潜在意識の深層から引きずり出した「本音」を、完了報告と共にお伝えします。 あなたの投げかけた想いに対し、彼らの魂がどう蠢(うごめ)き、何を叫んだのか。 耳を塞ぎたくなるような言葉であっても、ありのままをお届けいたします。