こんばんは!
マンガ・アニメが伝えるメンタル予防の専門家
「心のクセ“リメイク”コーチ」✖「精神保健福祉士」
オサレビト光です。
心の秘密基地へようこそ
ここでは、あなたが好きな「推し」の生き方を語り合いながら、ガチガチになったココロをふっとゆるめる場所です。
今回、正直に告白することがあります。
漫画・アニメ『盾の勇者の成り上がり』というタイトルを見た時、私は全く興味が湧きませんでした。
大好きな人には申し訳ないのですが、なぜか心が動かなかったのです。
「また異世界ものか」
「成り上がりって、何を成り上がるの?」
そんな偏見が無意識にあり、ずっとスルーしていました。
けれど、昨日あるコミュニティの「アニメ✖日本酒」イベントで出会った方とお話をした時に強く勧められ
「相手のことを知るために1話だけ見てみるか」
と、話半分で再生ボタンを押しました。
……結果、私は画面の前で動けなくなりました。
そこにあったのは、安易なサクセスストーリーではありませんでした。
人間が信頼を全て失い、心を閉ざし、そして再び「世界」と繋がろうとする、魂の叫びそのものだったからです。
特にアニメ8話までの展開まで見まして、人生で直面する「喪失」と「再生」の教科書とも言える内容でした。
今日はこの物語を、ちょっと不思議な科学と心理学の視点で紐解いてみます。
盾の勇者の成り上がり ストーリー
ごく平凡なオタク大学生・岩谷尚文は、図書館で出会った1冊の本に導かれ異世界へと召喚されてしまう。
与えられた使命は、剣、槍、弓、盾をまとう四聖勇者の一人「盾の勇者」として、世界に混沌をもたらす災い「波」を振り払うこと。
大冒険に胸を膨らませ、仲間とともに旅立った尚文。
ところが、出発から数日目にして裏切りに遭い、金も立場もすべて失ってしまう。
他人を信じられなくなった尚文は奴隷の少女・ラフタリアを使役し、波に、世界に、立ち向かおうとするが―。
量子力学的に見る「味のしない世界」
主人公の尚文(ナオフミ)は、信頼していた仲間の裏切りによって名誉も財産も全て奪われ、そのショックから「味覚」を失います。
何を食べても味がしない。砂を噛んでいるようだ、と
これは心理学的には「解離(かいり)」と呼ばれる防衛反応ですが、ここでは少し視点を変えて、量子力学というミクロな科学の視点で見てみましょう。
「量子力学? 難しそう……」と思われるかもしれませんが、安心してください。
要するに、「世界はあなたがかけた『メガネ』の通りに見える」という話です。
量子力学には「観測者効果」という言葉があります。
「現実は、観測者がどう見るかによって確定する」という法則です。
裏切られた直後の尚文は、「世界は俺を攻撃する敵だ」という色眼鏡(フィルター)をかけました。
彼が「世界=悪意」と観測した瞬間、彼の現実はそのように確定し、優しさや温かさ(=美味しい味)という波動は、彼の世界から存在確率がゼロになってしまったのです。
味がしないのは、舌が壊れたのではありません。
「こんな酷い世界なんて、受け入れたくない」という尚文の拒絶が、現実を書き換えてしまったのです。
ニューロロジカルレベルで読み解く「覚醒」の瞬間
そんな絶望の中にいた物語が大きく動くのは、ラフタリアという少女が、尚文の心の盾をノックした時です。
彼女の言葉がなぜ尚文を変えられたのか。
これはNLP(神経言語プログラミング)という心理学の「ニューロロジカルレベル」を使うとよく分かります。
これも難しい言葉ですが
イメージとしては「意識のピラミッド」だと思ってください。
下の段が変わるよりも、上の段が変わったほうが、人生に与える影響が大きいという考え方です。
環境(どこで): 敵だらけの異世界
行動(何を): レベル上げ、金稼ぎ、ラフタリアへの厳しい態度
能力(どうやって): 盾のスキル、商才
初期の尚文は、このピラミッドの「下の方」だけで必死に生きていました。
しかし
ラフタリアが「私はあなたの剣です」、「信じています」と涙ながらに訴えた時、ピラミッドの頂上付近に劇的な書き換え(リライト)が起こります。
信念・価値観(なぜ): 「誰も信じない」 ⇒ 「信じてくれる人が一人でもいればいい」
自己認識(私は誰か): 「汚名を着せられた犯罪者」 ⇒ 「ラフタリアを守る盾の勇者」
「自分は誰か」という一番上の意識が変わった瞬間
まるで電流が走るように下のレベル(身体感覚)にも変化が起き、彼の世界に「味」が戻りました。
ラフタリアを「本当の意味」で心から受け入れた後、作ってもらったサンドイッチの味がしたあの瞬間
あれは彼が食事をしたからではなく、「世界」を受け入れた瞬間だったのです。
「凍りついた心」を溶かすもの
8話にかけて、尚文は再び苦悩します。
大切な仲間(ラフタリアやフィーロ)ができたことで
今度は「また失うのではないか」という恐怖に襲われるのです。
実はポリヴェーガル理論で説明すると、とても自然な反応なんです。
人は耐えられないほどの恐怖や絶望を感じると、心と体を守るためにスイッチを切って「凍りつき(シャットダウン)」の状態になります。
物語の最初、尚文に味がしなかったり、感情が湧かなかったりしたのはまさに心が凍りついていたから
でも、この氷を溶かせるのは、気合や根性ではありません。
ラフタリアとの間で生まれたような「温かい交流(安心感)」だけが、凍った神経を溶かすことができたのです。
氷が溶ければ、感覚が戻ります。
だからこそ、尚文は再び「失う怖さ」や「悲しみ」を感じるようになりました。
心理学的に言えば
「感情の振れ幅」はセットです。
「喜び」を感じるセンサーと、「悲しみ」を感じるセンサーは同じ蛇口から出ています。
傷つくのが怖くて蛇口を閉めれば(凍りつけば)、悲しみは消えますが、同時に喜びも、ご飯の味も、人生の彩りもすべて消えます。それが初期の尚文でした。
しかし
彼は今、恐れながらも蛇口を開くことを選びました。
「失うのが怖い」と思えるほど、大切なものができた。
その痛みこそが、彼が人間として生きている証拠であり、人生というゲームの本当の「味わい」なのです。
さいごに:あなたの「シナリオ」は書き換えられる
もし今、あなたが「人生がつまらない」、「何を食べても味がしない」などと感覚が麻痺をしていると感じているなら。
それはあなたが弱いからではありません。
過去に深く傷つき、無意識に「世界の観測」を拒否して、心を凍らせて守っているだけかもしれません。
尚文にとってのラフタリアのように、きっかけは誰かの一言かもしれませんし、小さな成功体験かもしれません。
「信じる」というリスクを取った時だけ、世界は再び色と味を取り戻します。
失うことを恐れないでください。
その恐怖を感じられるということは
あなたの人生のシナリオに、守りたいと思える素晴らしい「登場人物」や「価値観」が現れたという、何よりの幸福な伏線なのですから。
もし今、あなたの世界から「彩り」が消えているのなら
一人で抱え込まず、私のところに来てください。
一緒にあなたの大切にしていきたい思い(価値観)を、言語化するお手伝いをさせてください。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
【深掘りコラム】なぜ心は「凍る」のか? ~自律神経の3つのスイッチ~
この尚文が陥った「味がしない」、「感情が湧かない」という状態
これは気合が足りないからでも、心が弱いからでもありません。 私たちの体に備わっている「究極の守り」が発動しただけなのです。
これを説明するのが
スティーブン・ポージェス博士が提唱した「ポリヴェーガル理論(多重迷走神経理論)」です。
自律神経は「アクセル(交感神経)」と「ブレーキ(副交感神経)」の2つだと思われてきました。
しかし
この理論では、自律神経には「3つのモード(スイッチ) 」があると説明します。
これを「信号機」に例えると、尚文の状態が分かります。
① 青信号(腹側迷走神経):つながり・安心モード
状態: 心が穏やかで、人と楽しく会話ができたり、ご飯を美味しいと感じる状態
物語では: ラフタリアと信頼関係を結び、サンドイッチの味が分かった時の尚文です。
② 黄信号(交感神経):戦う・逃げるモード
状態: 危険を感じてドキドキし、戦うか逃げるかの準備をしている状態。
物語では: モンスターと戦っている時や、裏切り者に対して怒りを燃やしている時の尚文です。
③ 赤信号(背側迷走神経):凍りつき・シャットダウンモード
状態: 「もう戦っても逃げても助からない!」という圧倒的な絶望を感じた時、生物は最後の手段としてスイッチを切り、仮死状態(フリーズ)になります。痛みを感じなくさせ、エネルギーを極限まで節約して命を守ろうとするのです。
物語では: 全てを奪われ、絶望した直後の尚文です。味がしないのは、感覚を麻痺させて心を守ろうとした「赤信号」の状態だったからです。
重要なのは、「赤(凍りつき)」から「青(安心)」に戻るためには、必ず誰かとの「温かい交流」が必要
一人では、凍った心は溶かせません。 尚文にとってのラフタリアのように、安心して背中を預けられる存在がいて初めて、自律神経は「赤」から「青」へとスイッチを切り替えることができる。