ある社長との打ち合わせで、僕はこう言いました。
「忙しくて正直休みが少ない、というところも、逆手に取る求人票の作り方ができます。正直、のんびり働きたいと思っている人に来られても、困っちゃうじゃないですか」
社長は笑って「困っちゃう。訴えられても困っちゃいますからね」と返しました。
この短いやりとりに、僕の求人票の考え方がほとんど入っています。
求人票は、ラブレターであり、ふるいでもある
世の中の求人票には共通点があります。「アットホームな職場です」「やる気のある方歓迎」「頑張り次第で高収入」。
どの会社にも書ける言葉は、どの会社の魅力にもなりません。読んだ人の頭に、何の絵も浮かばないからです。
もうひとつ。全員に良く見せようとした求人票は、合わない人まで連れてきます。入社して2週間で辞める人や、「聞いていた話と違う」と言う人です。会社にとっていちばん痛いのは、応募が来ないことより、合わない人が入ってすぐ辞めることだと思います。
だから僕は、求人票を「ラブレター」であると同時に「ふるい」だと考えています。来てほしい1人には深く刺さって、合わない人には自然と選ばれない。それが良い求人票です。
弱点は、絞り込みに使える
ある電気工事会社では、休みの少なさと忙しさを、あえて求人票で前に出しました。
すると、かえってそこに反応する人から応募が来ました。休みより収入を優先したい人は、確かにいます。その人にとって「忙しい」は「仕事が途切れない」「稼げる」と同じ意味で、弱点ではなく魅力です。
隠せば嘘になる情報が、出し方ひとつで、その会社にいちばん合う人を呼ぶ看板になる。もちろん、休日や給与のように書くべき数字は正しく書きます。嘘は書かない。でも見せ方は設計する。この両立が、求人票の腕の見せどころだと思っています。
細部が、空気を伝える
もうひとつ大事なのが細部です。求人票の役目は、読んだ人の頭の中に、入社したあとの自分の一日を映すことです。それができるのは、抽象的な言葉ではなく細部です。
たとえば、こう言い換えます。
・「アットホームな職場」→「朝7時に倉庫に集合して、現場へは2人1組で直行。昼はだいたいコンビニ」
・「頑張り次第で高収入」→ 2年目、5年目、10年目の年収を並べて見せる
・「未経験歓迎」→「最初の1か月は、先輩の横で道具の名前を覚えるところから」
千葉のある足場会社は、年収を「2年目451万円、5年目845万円、10年目1,016万円」と年次で並べ、役職手当も主任から本部長まで階段で全部見せました。応募は月3名で安定するようになりました。
神奈川のある保温工事会社は、かなり珍しい職種で、経験者も未経験者も採りにくい仕事です。社員の話と会社の中を見せ続けた結果、県外から「社長に惚れた」と、朝5時に家を出る覚悟で入社した若手がいました。
全員に好かれる必要はありません。届けたい1人に届けば、珍しい職種でも決まります。
応募する人が、本当に知りたいこと
応募を迷っている人の頭の中には、口に出さない不安が並んでいます。
・どんな人が働いているんだろう。怖い人ばかりじゃないか
・未経験の自分でも、やっていけるのか
・実際、いくら稼げるのか
・休みの日は、ちゃんと休めるのか
求人票とホームページの役目は、この不安に先回りして答えることです。
ある電気工事会社では、若手社員の「自分は中卒ですが、電気工事士として頑張っています」という話をホームページに載せました。それを読んだ同じ境遇の若者が「僕もこの人みたいになれるかな」と応募して、入社しました。
誰かの正直な言葉が、次の誰かの一歩になる。求人票は、そういうものを書ける場所だと思っています。
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