「うちはまだ、会社って呼べるようなもんじゃないよ」
建設会社の社長と話していると、この言葉をよく聞きます。登記の上では立派な株式会社で、職人さんも10人いる。それでも本人は「まだ」と言います。
最初は謙遜だと思っていました。でも、たぶん違います。社長たちは、自分の会社がいまどの段階にいるのかを、かなり正確に分かっているのだと思います。
独立から「会社」までの5段階
職人さんが独立してから「会社」になるまでの道を、僕なりに分けるとこうなります。
① 雇われの職人
どこかの会社で腕を磨く時期です。そのうち、収入に天井を感じ始めます。
② 一人親方
独立して、1人で仕事を請けます。働いた日数しか稼げず、ケガをすれば収入が止まります。
③ 人を使う親方
2〜5人の職人さんを使うようになります。自分も現場に出ながら、給料日と支払いに追われます。
④ 法人化
株式会社にします。保険、経理、役所の書類が一気に増えます。でも、事務員はいません。
⑤ 会社
社長が現場に出なくても、仕事が回る状態です。ここまで来られる会社は多くありません。
登記の上では、④で会社です。でも実態として「会社」と呼べるのは⑤、つまり社長がいなくても現場が回るようになったときではないかと思っています。
そして、僕が出会う会社の多くは、④で止まっています。
なぜ④で止まるのか
法人にはなった。人も10人前後いる。仕事もある。むしろ断っている。
それでも社長は毎日現場に出ていて、夜と週末に見積もりと請求書を書いています。
なぜか。⑤に進むために必要な仕事、つまり求人票を書く、応募に返事をする、ホームページを直す、帳簿をつける、現場を任せられる人を育てる、といったことが、全部「現場の外」にあるからです。
ある配管工事会社の社長が、こう言っていました。
「職人は現場での作業は得意なんだけど、打ち合わせや段取りといった管理業務は苦手な傾向があって」
すごく正直な言葉だと思います。社長自身も、もとは職人です。現場では誰にも負けない。でも、会社を次の段階に進める仕事は、いちばん苦手で、いちばん後回しにしたくて、いちばん時間が取れないことでした。
人が増えないと、売上が増えない商売
もうひとつ、建設業ならではの事情があります。
建設業の稼ぎ方は、突き詰めると「1人1日いくら」で人を出すか、「この工事一式でいくら」で請けるかです。どちらにしても、人が増えないと売上は増えません。機械や道具だけでは代わりがききません。
つまり「人が採れない」は、そのまま「会社が大きくなれない」という意味になります。ある配管工事会社も、今の人数では回しきれない量の仕事を抱えて、断っている状態でした。売上の上限を決めていたのは、受注ではなく人数です。
④と⑤のあいだにある壁
整理すると、こうなります。
・⑤に進むには、人が要る(現場を任せられる人、現場を増やせる人)
・人を採るには、求人票、ホームページ、応募への返事という「現場の外の仕事」が要る
・その仕事をやれるのは社長だけ。でも社長は現場にいる
ぐるぐる回って、結局「社長の時間」に行き着きます。
だから僕は、④にいる会社の「現場の外の仕事」を、外で引き受ける仕事をしています。領収書と出勤の記録はLINEで送るだけにして、夜の事務を減らす。求人票を書き直して、応募への返事と面接の日程調整まで回す。社長が自分でやらなくてよくなるほど、⑤への道は近づくと思っています。
⑤に着いたら何をしたいか。ある社長は「管理する人を2〜3人に増やして、自分は社内のことに専念したい」と話していました。
その景色まで、あと一歩の会社がたくさんあります。
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