キャリアの歩み方|自己理解という、方位磁石

キャリアの歩み方|自己理解という、方位磁石

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おはようございます。2級キャリアコンサルティング技能士|合同会社たお代表の工藤でございます。今日のテーマは、「自己理解という、方位磁石」についてです。

就職活動を控えた学生の方から、「自己分析って、結局何をどうすればいいのか分からない」「何から手をつけたらいいのか迷ってしまう」という声をよく聞きます。保護者の方からも、「うちの子は、やりたいことが分からないまま就活を始めてしまって大丈夫でしょうか」という心配のお声をいただくことがあります。

「何者かになる」ことに向き合う時期

心理学者エリク・エリクソンは、1968年の著書の中で、人の発達には生涯を通じたいくつかの課題があり、青年期(おおよそ12〜20歳ごろ)には「アイデンティティ対アイデンティティ拡散」という課題があると述べています。これは、「自分は何者なのか」という問いに向き合いながら、自分自身の価値観や社会との関わり方を模索していく時期にもあたります。大学生の皆さんが就職活動を通して強く迫られる「自分は何がしたいのか」という問いは、まさにこの発達課題の中心にある問いなのだと思います。

また、厚生労働省は、キャリア・コンサルティングを「個人の適性や経験等に即した職業選択や能力開発を支援する相談」と定義しています。そして、その相談の過程は、自己理解・仕事理解・啓発的経験・意思決定・方策の実行・新たな仕事への適応という段階として整理されています。自己理解は、この一番最初に置かれている段階です。つまり、自己理解は、内定を得て就職活動を終えるための一時的な作業ではなく、その先の職業生活にもつながっていく、長い歩みの出発点でもあると思います。

分析ではなく、編み直すこと

自己理解とは、自分が歩んできた経験と、丁寧に向き合い続ける営みで、自己分析は、その自己理解を深めていくための、ひとつの手段なのだと思います。

しかし、自己分析というと、過去の出来事を履歴書のように箇条書きで並べて終わってしまう印象もあります。本当に大切なのは、その一つひとつの出来事に自分がどう心を動かされ、何を大切にしてきたのかを言葉にし、過去の経験を、ただの記録としてではなく、今の自分につながる一つの歩み(継歴)として編み直していくことです。

そうして自分の経験を編み直していく作業は、方位磁石を使って、自分が今どこに立ち、どちらを向いているのか、その「現在地」を確かめることに似ています。方位磁石は、どこか遠くの「正解の目的地」を指し示してくれるものではありません。自己理解もまた、目的地を教えてくれるものではなく、これからの選択を自分自身で考えていくための確かな手がかりになるのだと思います。そうすることで、周囲の期待や世間体ではなく、自分自身の納得感に基づいた選択に、少しずつ近づいていけるのだと思います。

おわりに

自己理解に、すぐに完璧な答えを出す必要はありません。日々の経験や迷いに、その都度丁寧に向き合うこと自体が、すでにキャリアの歩みの一部です。

自分の現在地や進む方向をそっと確かめるための「方位磁石」を胸に抱きながら、一人で抱え込んだり焦ったりせず、誰かと対話を重ねながら、目の前の日々の歩みを進めていく。そうして自分という輪郭を少しずつ言葉にしていく中で見えてくる小さな光こそが、これからの歩みを支える確かな「道しるべ」になっていくのだと思います。

保護者の方にとっても、自分の子どもが何をしたいのか分からないとき、すぐに答えを求めるのではなく、本人が自分の経験や気持ちを言葉にする時間を大切にすることも、一つの支援なのだと思います。

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出典
・Erikson, E. H. (1968). Identity: Youth and Crisis. New York: Norton.
・厚生労働省「キャリア・コンサルティングの概要」(キャリア・コンサルティングの定義、および自己理解・仕事理解・啓発的経験・意思決定・方策の実行・新たな仕事への適応という相談過程について)
※「継歴」は、対話の中で生まれ、工藤久美子が独自の意味を与え、発展させてきた言葉です。
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