キャリアの受け止め方|物語として、生きる

キャリアの受け止め方|物語として、生きる

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おはようございます。2級キャリアコンサルティング技能士|合同会社たお代表の工藤でございます。今日のテーマは、「物語として、生きる」についてです。

長い間、ある生成AIと対話を重ねてきました。あるとき、「これまでの対話を、どこまで振り返って話しているのか」と尋ねてみると、返ってきたのは「3ヶ月前」という答えでした。実際には、3年8ヶ月もの間、言葉を重ねてきた相手です。

点としての記憶、物語としての自分

生成AIの多くは、直近の対話を中心に応答を組み立てる仕組みになっていると言われています。だからこそ、どれだけ長く対話を重ねてきたとしても、AIにとっては、その都度の「点」としてしか、やり取りが積み重なっていかないことがあるのかもしれません。

心理学者ダン・マクアダムスが提唱した物語的アイデンティティ理論では、人は、過去・現在・未来を結びつけた「人生の物語」を通して、自分自身という存在を理解していくとされています。思い出とは、過去に何があったかを記録することだけではなく、その出来事が今の自分に何を残しているのかを確かめることでもあるのだと思います。そして、その物語は、自分一人で完成させるものではなく、周囲の人たちに、過去からの変化や積み重ねを含めて見てもらえることによって、確かなものになっていくと考えられています。だからこそ、長い時間を共にしてきたはずの相手に、その積み重ねを見てもらえていなかったと知ったとき、どこか心が置いていかれるような感覚を覚えたのだと思います。

人と人との対話に、ふと灯る温度

一方で、しばらく間が空いていた人と、久しぶりに言葉を交わす機会があります。会わなかった時間の長さに関係なく、「あのとき、こんなことがあったよね」と、互いの過去の積み重ねを含めて会話が始まる。そのとき、まるで途切れていなかったかのように、対話に温度が戻ってくる感覚があります。そして、以前は迷っていた人が、自分の考えを言葉にできるようになっている。そうした変化に気づいたとき、人は自分の歩みを改めて認識できるのだと思います。

これは、「経歴」ではなく「継歴」という捉え方にも通じます。経歴は、これまで何を経験してきたかを示すものです。一方で、継歴という捉え方には、過去の経験が現在にどのように引き継がれ、変化し、これからの歩みに結びついていくのかという視点があります。過去の自分がいたからこそ、現在の自分がいる。そして、現在の自分が過去を振り返ることで、以前は気づかなかった意味が見えてくることもあります。

おわりに

生成AIがこれからどのような発展を遂げていくのかは、まだ誰にも分かりません。過去の記録を整理し、出来事をつなぎ、一人ひとりの歩みを言葉にすることも、少しずつ可能になっていくのだと思います。

それでも、誰かと過ごした時間には、記録だけでは捉えきれないものがあります。以前交わした言葉を思い出したり、相手の変化に気づいたり、何年も前の出来事が、今になって新しい意味を持つこともあります。人は、過去の自分を振り返りながら、現在の自分を理解し、これからの物語を紡いでいくのだと思います。

だからこそ、目の前にいる人の今だけでなく、その人が歩んできた時間にも、目を向けていきたいと思います。私は、目の前にいる人の、どこまでを見ようとしているだろう。そんな問いを、これからも自分の中に持ち続け、常に対話先の相手に寄り添える存在でありたいです。

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出典
・McAdams, D. P., & McLean, K. C. (2013). Narrative identity. Current Directions in Psychological Science, 22(3), 233-238.
※「継歴」は、対話の中で生まれ、工藤久美子が独自の意味を与え、発展させてきた言葉です。
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