こんにちは。2級キャリアコンサルティング技能士|合同会社たお代表の工藤でございます。
今日のテーマは、「業務は変わらないのに、給与は下がる」再雇用の現実を知って備える
前回の記事で「次回は、実際に再雇用制度を確認する際のチェックポイントについて書いてみたい」とお伝えしました。今日はその約束通り、再雇用後にどんな現実が待っているのか、そして50代の今、何を確認しておけるのかについて書いていきたいと思います。
「同一労働・大幅減給」というギャップ
まず、データから見ていきたいと思います。ある調査によると、再雇用後の勤務時間や日数については63.5%が、業務量については47.9%が「定年前と同水準」と回答しています。「定年前より増えた」という回答もあわせると、いずれも半数を超えるそうです。
つまり、働く時間も仕事の量も、実感としてはほとんど変わっていない方が多数派ということになります。
一方で、年収はどうかというと、「定年前の6割程度」という回答が20.2%で最多、「5割程度」が19.6%、「4割程度」が13.6%と続き、定年前と同等かそれ以上をもらっているケースは1割にも満たないというデータもあります。別の調査では、4割近くが「再雇用後の給与が半額以下になった」と回答し、7割以上が給与に不満を感じているという結果も出ています。
業務内容や拘束時間はほとんど変わらないのに、収入だけが大きく下がる。この落差こそが、「想定外」「納得がいかない」という声の正体なのだと思います。
なぜ、このギャップが生まれるのか
制度的な背景として、再雇用は法律上、定年前とまったく同じ労働条件を保証するものではありません。高年齢者雇用安定法は、65歳までの雇用機会を確保することを企業に義務づけていますが、雇用形態(嘱託・パート・契約社員など)や給与、業務内容は、定年前と同じでなくても差し支えないとされています。
ただし、まったく自由に変えられるわけでもありません。過去の裁判例では、事務職として勤務していた社員を、再雇用時に清掃員として配置したケースについて、まったく異なる"業種"への変更にあたるとして違法と判断された事例もあります。業務内容が変わること自体は認められていますが、職種そのものが変わるほどの変更には、一定の歯止めがあるということだと思います。
こうした制度の骨格を知っておくと、「うちの会社だけ厳しいのかもしれない」という不安が、「多くの会社に共通する構造なのだ」という理解に変わっていくのではないかと思います。
だからこそ、事前に確認しておきたいこと
制度の実態を踏まえると、50代のうちに確認しておきたいポイントが見えてきます。
1. 給与の決まり方 一律に何割カットという単純な仕組みなのか、評価制度に基づいて変動する仕組みなのかによって、自分の働き方次第で収入が変わる余地があるかどうかが変わってきます。
2. 雇用形態と契約更新のルール 嘱託・契約社員など、どの雇用形態になるのか。また、有期雇用は通常5年で無期転換の権利が発生しますが、再雇用者はこのルールの対象外にできる特例制度を、会社が利用しているかどうかも確認しておきたいところです。
3. 業務内容・責任の変化の見込み 今の業務がどこまで引き継がれ、どこが変わるのか。役職手当など、役割に紐づく手当がどうなるのかも合わせて確認しておくと安心です。
4. 労働条件通知書に書かれている内容 始業・終業時刻、賃金の決定方法、支払い時期、退職に関する事項などが、書面できちんと明示されているか。口頭の説明だけで済ませず、書面で残しておくことをおすすめしています。
知ったうえで、今からできる備え
ここまでの現実を踏まえて、私がキャリアコンサルタントとしてお伝えしたいことは、結局のところシンプルです。年齢が変わっても、大切なのは「資格取得」と「資産運用(ファイナンシャルプランの明確化)」という2つの軸だと思っています。
資格取得という視点では、社内でしか通じない経験を、社外でも通じる形に翻訳しておくことが、収入交渉や転職の選択肢を広げることにつながります。2026年は「ミドルシニア元年」とも言われ、50代の転職市場も動き始めているというデータもあるので、選択肢を持っておくこと自体が、実質的な交渉力になるような気がします。
資産運用という視点では、再雇用後の収入がどの程度になりそうかを早めに把握しておくことで、老後の資金計画を具体的に組み立てられます。年金の受け取り方や、在職老齢年金の基準額の変更なども含めて、収入の全体像を早めに描いておくことが、安心につながるのだと思います。
おわりに
「業務は変わらないのに、給与は下がる」という現実は、知らずに定年を迎えるか、知ったうえで備えるかで、その後の納得感が大きく変わってくるのだと思います。不満そのものをなくすことは簡単ではないかもしれませんが、少なくとも「想定外」を減らすことはできるはずです。
お子さんの就職活動を見守るタイミングだからこそ、ご自身のキャリアや資格、資産計画にも目を向けてみる。そんなきっかけにこの記事がなれたら嬉しいです。