こんにちは。2級キャリアコンサルティング技能士|合同会社たお代表の工藤でございます。
今日のテーマは、定年後のキャリアは、もう「他人事」ではない時代に
キャリアコンサルタントとして日々ご相談を受ける中で、50代の方から「自分の定年後のことなんて、考えたこともなかった」という声を耳にすることがあります。お子さんの就職活動が近づいてくると、多くのご家庭では「子どもの将来」に意識が向きがちです。けれど実は、同じタイミングで「親自身の定年後のキャリア」も、静かに動き出しているような気がします。
そのため、お子様のファーストキャリアと、親御さんのセカンドキャリアの準備は平行して進めていく必要があろうかと思います。
今日は、定年後のキャリアを取り巻く制度や市場の変化を整理しながら、ちょうどお子様の就職活動を横目に見守っている親御様世代に対しても、今、何を準備しておけるのかについて書いてみたいと思います。
65歳までの雇用確保が「義務」になった
2025年4月から、高年齢者雇用安定法の経過措置が終了し、企業は65歳まで継続雇用を希望する従業員すべてを雇用する義務を負うようになりました。中小企業でも大企業でも、65歳までの高年齢者雇用確保措置を実施済みの割合はほぼ100%に達しているそうです。
つまり、「定年」という言葉の意味そのものが、少しずつ変わってきているのだと思います。60歳はもう「働き終わりの年齢」ではなく、「働き方が変わる年齢」になりつつある、という理解で合っているような気がします。
収入は、想像より下がる
ここで気になるのが、再雇用後の収入です。国税庁の令和6年分民間給与実態統計調査によると、60〜64歳の平均年収は男性604万円、女性294万円で、直前の55〜59歳と比べて男性で約131万円、女性で約62万円下がるのが平均的な姿だそうです。
さらに、55〜59歳の平均月収が約37万円であるのに対し、60〜64歳では約29.5万円まで下がり、平均年収でおよそ90万円のダウンになるというデータもあります。役割や評価制度が変わることで、給与も見直されるケースが多いのだと思います。
こうした数字を知らないまま60歳を迎えてしまうと、「思っていたより手取りが少ない」というギャップに戸惑う場面が出てくるかもしれません。だからこそ、50代のうちに一度、ご自身の会社の再雇用制度を確認しておくことが、後々の安心につながるような気がします。
年金の受け取り方にも、変化がある
年金についても、知っておきたい変化があります。在職老齢年金の支給停止基準額は2025年度が51万円でしたが、2026年4月からは62万円に引き上げられる予定です。この改正により、65歳以降も働き続ける方が年金を減額されにくくなり、より自由度の高い働き方を選びやすくなるのだと思います。
一方で、60歳で定年を迎えてすぐに年金を繰り上げ受給すると、1か月につき0.5%減額され、最大30%も年金額が下がってしまいます。年金をいつから、どう受け取るかは、定年後のキャリア設計と切り離せないテーマだと感じています。
2026年は「ミドルシニア元年」
転職市場にも、大きな動きが見られます。パーソルキャリアが発表したレポートによると、2026年は役職定年や定年を目前にした50代が本格的に転職に動き出す「ミドルシニア元年」になると予測されているそうです。2025年上期時点で、dodaに新規登録したミドルシニア人材は2019年同期比の164%まで増加しているとのことで、これまで「50代の転職は厳しい」と言われてきた状況が、少しずつ変わり始めているのだと思います。
ただし、40代・50代の転職では、20代・30代と比べて転職後の平均年収の伸びが緩やかで、50代のみ転職後に年収が下がる傾向があるというデータもあります。市場が動いているからといって、誰もが年収アップを実現できるわけではなさそうです。むしろ、「収入」だけを目的にせず、経験や専門性をどう活かすかを考える方が、結果的に納得のいくキャリアにつながる、という気がします。
業種によっても差があり、介護・福祉業界は人手不足に加えて利用者との年齢の近さから安心感を与えられるため、シニア採用に積極的な業界の一つだそうです。ご自身の経験がどんな業界・職種で活きるのか、一度棚卸ししてみる価値はありそうです。
では、今、何から始められるのか
ここまでの制度や市場の動きを踏まえて、私がご相談の中でよくお伝えしているのは、次の3つです。
1. 自社の再雇用制度を、具体的な数字で確認する 「65歳まで働けるらしい」という漠然とした理解ではなく、給与テーブルや評価制度がどう変わるのかを、就業規則や人事担当者に確認しておくことをおすすめしています。
2. 自分の経験を、社外でも通じる言葉に翻訳しておく 社内でしか通じない言い方のままでは、いざ転職や独立を考えたときに、経験の価値が伝わりにくくなってしまいます。どうやって自分の強みを言語化していくかは、50代のうちから少しずつ取り組んでおきたいテーマだと思います。
例えば、今までの経験の記録として何かの資格取得に向けて勉学を始めてみる。そして、そこの資格取得を貫いてみる。ということも有効かと思います。
3. お金の話を、家族で一度オープンにする 定年後の収入減少や年金の受け取り方は、本人だけでなく家族の生活設計にも関わってきます。お子さんの進学や就職のタイミングと重なるご家庭も多いので、どうして今このタイミングで話し合っておく必要があるのか、家族で共有しておくことが、後の安心につながるような気がします。
家計の内訳を家族間で共有し、可視化しておくことで、お子様が就職した際に浮くであろう学費や生活費などはどのように運用していくのが望ましいか、をじっくりと事前にお話合いしてみることも大事かと思います。
おわりに
お子さんの就職活動を見守る親御様世代は、同時に、ご自身のキャリアの転換点にも立っているのだと思います。「子どものこと」で頭がいっぱいになりがちな時期だからこそ、少しだけ自分自身のキャリアにも目を向けてみる。そんな時間を持っていただけたら嬉しいです。
次回は、実際に再雇用制度を確認する際のチェックポイントについて、もう少し具体的に書いてみようと思います。