新サービス
昨日に続き、本日も新たにサービスを出品しました。
(サービス内容)
なぜかわからないけど、ずっと重い。
その重さに、形を与える物語です。
ふとした瞬間に蘇る場面。
もう終わったはずなのに、まだ残っている感覚。
気づいていないだけで、あの出来事が今の自分に影を落としていることがあります。
別れ。失敗。後悔。誰かを傷つけたこと。傷つけられたこと。
匂いや声や風景に、不意に揺さぶられる日がある。
そういう経験を、物語にします。
このサービスでは、あなたの過去の出来事を題材に、
タロット・百人一首の和歌・禅語・ビジネスフレームワークのいずれかを
シンボルとして使い、4,000字前後の短編物語を紡ぎます。
読了時間は5〜10分。通勤の電車の中でも、寝る前の布団の中でも読めます。
あなたの体験そのものを書くのではありません。
あなたの状況に近い架空の主人公が、シンボルとの出会いを通じて、
過去の出来事を別の角度から見るようになる——そういう物語です。
主人公の中に、きっと自分が見えます。
過去を変えることはできません。
でも、過去の見え方を変えることはできます。
■ お願いすること
7つの質問に答えてください(選択式)。
加えて、その出来事について書ける範囲で教えてください
(自由記述・任意)。
詳しく書く必要はありません。断片的で構いません。
「何があったか」より「何が心に残っているか」だけで十分です。
所要時間は数分です。
■ お届けするもの
あなたの状況に近い架空の主人公の物語(テキストファイル)。
アンケートへのご回答から3日以内にお届けします。
■ こんな方に
・なぜかわからないけど、ずっと気持ちが重い
・大切な人やものを失ったことが、まだ心に残っている
・あのとき違う選択をしていたらと考えてしまう
・失敗した経験を、まだ許せていない
・終わったはずなのに、ふとした瞬間に思い出す
・誰かに話すほどではないけれど、ひとりで抱えている
答えを出す物語ではありません。
体験を、新たな視点で問いの形に変える物語です。
カウンセリングや心理療法の代替ではありません。
でも、物語だからこそ届くものがあります。
/サンプル/
持っていなかったものを、手放すということ
台所の蛇口から、水が一滴落ちた。
静かな午後だった。食器棚の上に置いたままの時計が、秒針の音だけを刻んでいる。テーブルの上には、飲みかけの緑茶。湯気はもう消えていた。
彼女は椅子に座ったまま、何をするでもなく、窓の外を見ていた。隣の家の庭に、白い洗濯物が風に揺れている。空は薄く曇っていて、光が柔らかく、どこにも影がなかった。
こういう時間が、最近よくある。
何かをしようとして、途中で手が止まる。掃除機をかけようとして、廊下の途中で立ち止まる。買い物リストを書こうとして、ペンを持ったまま動かない。忙しくないわけではない。子どもたちの学校のこと、来月の町内会のこと、冷蔵庫の中身のこと。やるべきことは山ほどある。なのに、体の中に薄い膜が一枚入っているような感じがして、すべてが少しだけ遠い。
四ヶ月前に、母が死んだ。
その言葉を心の中で呟くたびに、まだ輪郭がぼやけている。「死んだ」という言葉と、母の顔が、うまく重ならない。電話すれば出るような気がする。日曜に実家に行けば、台所に立っているような気がする。
でも、いない。
葬儀の日のことは、よく覚えている。白い菊の匂い。読経の低い声。参列者の靴が砂利を踏む音。自分は喪服を着て、受付の隣に立っていた。「しっかりしてるわね」と誰かに言われた。しっかりしていたのではなく、何も感じていなかっただけだった。
それからの日々は、よく覚えていない部分と、異様に鮮明な部分がまだらに混ざっている。遺品の整理をした日。母の字で書かれた買い物メモが冷蔵庫に貼ってあった。「たまご、牛乳、あんぱん」。その三つの文字がぼやけて、涙が落ちた。
あんぱん。母はいつもあんぱんを買っていた。小さいころ、おやつに出してくれた。自分は最近、あんぱんを食べていない。食べられない。
実家の台所の匂いを思い出す。出汁の香り。母はいつも朝から鍋を火にかけていた。「手抜きでいいのに」と言うと、「手抜きが一番難しいの」と笑っていた。あの声が、まだ耳の奥にある。四ヶ月しか経っていないのだから、当然かもしれない。でも、あの声が薄れていく日が来ることの方が、今は怖い。
痛いのは、大きなことではなく、小さなことだった。母の声。母の癖。母が使っていた洗剤の匂い。日常の至るところに母の痕跡があって、そのたびに胸の奥が詰まる。泣くほどではない。でも、詰まる。
(続きは、2,400文字程度)
雲がくれの月を、まだ見ている
改札を抜けたとき、すれ違った人の香水が鼻をかすめた。
柑橘系の、どこか甘い匂い。一瞬だった。人混みの中で、もう誰だったかもわからない。でも、足が止まった。
あの人と同じ匂いだった。
一年半前に別れた人。名前を心の中で呟くことは、もうない。写真も消した。共通の友人にも、あえて近況は聞かない。未練はない。たぶん。
なのに、こういうことがある。
匂い。声のトーンが似ている誰か。カフェで隣の席の人が頼んだアイスティー。冬の朝の空気の冷たさ。何の脈絡もなく、日常のどこかで、あの人の輪郭がふっと浮かぶ。思い出そうとして浮かぶのではない。向こうから来る。
そのたびに、胸のあたりが少しだけ重くなる。悲しいとは違う。苦しいとも違う。ただ、重い。数秒で消える。消えるのに、消えたことに気づいている自分がいる。
先週もあった。残業の帰り、コンビニでおにぎりを選んでいるとき、棚に梅昆布茶が並んでいるのが目に入った。あの人が好きだった。冬になると「これ、意外とうまいんだよ」と言って飲んでいた。手に取りかけて、やめた。買う理由がない。自分は梅昆布茶を好きだと思ったことが一度もない。
こういう瞬間が、予告なく来る。構えようがない。
駅を出て、いつもの道を歩いた。十一月の風が冷たかった。街路樹の葉が半分ほど落ちていて、歩道に茶色い影を作っていた。イチョウの黄色い葉が一枚、靴の先に張りついた。払わずに、そのまま歩いた。
別れたのは去年の五月だった。桜が散った後で、まだ風が少し肌寒い頃だった。
特別なことがあったわけではない。喧嘩が増えたわけでも、裏切ったわけでもない。ただ、少しずつ会う回数が減って、連絡の間隔が空いて、ある日「このまま続けても、お互い同じだと思う」と言われた。
否定できなかった。自分もどこかでそう感じていたから。
最後に会ったのは、新宿の喫茶店だった。窓際の席。あの人はブラックコーヒーを頼んで、自分はカフェオレを頼んだ。いつも通りだった。特別な最後の言葉はなかった。「じゃあ、元気で」と言って、改札に向かった。それだけだった。
あの人は振り返らなかった。自分はその場に立ったまま、改札の向こうに消えていく後ろ姿を見ていた。何色の服を着ていたかは、もう思い出せない。でもあの背中の角度だけが、記憶の中に残っている。思い出そうとすると、周りの音が消えて、あの後ろ姿だけが鮮明になる。
一年半経って、まだ残っているものの正体がわからない。
未練なら、連絡を取りたいと思うはずだ。でも、そうは思わない。戻りたいわけでもない。あの関係が間違いだったとも思わない。ただ——何かが未完成のまま閉じた感覚だけが、消えずにある。
言い足りなかったことがあったのか。聞きたかったことがあったのか。それすらもわからない。わからないまま、匂いや声のトーンに不意に揺さぶられる。
(続きは、2,100文字程度)
過去に捕らわれて前へ進みづらい。そんな状況に役立つサービスです。
どうぞよろしくお願いいたします。
みずいろの雨・・・
セカンド・ラブ・・・