もう分かっている。でも、やめきれない
「出版はもう終わりだよね」
そう言われるたびに、否定できない自分がいます。
売れない雑誌、減り続ける書店、読まれなくなった本。
それでもなお、この仕事から完全に離れる気になれない。
きっとあなたも、どこかで同じ違和感を抱えているのではないでしょうか。
雑誌というビジネスモデルは、すでに崩れていた
私は何十年も出版業界を見てきましたが、雑誌というビジネスは、とっくに限界を迎えていました。
雑誌は広告収入が前提のモデルです。
読者が減る → 部数が落ちる → 広告主が撤退する。
この流れが止まることはありませんでした。
私が在籍していた講談社でも、女性誌、男性ファッション誌、ジャーナリズムを標榜した雑誌まで、次々と廃刊になりました。
文化としての雑誌が、広告媒体になった瞬間から、終わりは決まっていたのだと思います。
書籍も、静かに臨界点を越えた
書籍は長らく「雑誌よりはマシ」と言われてきました。
ベストセラーも生まれ、衰退は緩やかに見えたからです。
しかし、コロナ以降、状況は一変しました。
書店の閉店スピードは加速し、そもそも本を読まない人が急増した。
電車の中で本を読んでいるのは、ほぼ私ひとり。
周囲は全員スマホ。
この光景に、時代の決定的な変化を感じます。
それでも書籍は、広告とは違う
雑誌は広告がなければ成立しません。
しかし書籍は、1冊単体で価値を問われる商品です。
だから私は、これからの出版は二極化すると考えています。
情報を大量に扱う「情報商社」としての大手出版社。
そして、人の心をどう動かすかに本気で向き合う、小規模な出版社。
後者は派手ではありませんが、確実に必要とされ続ける存在です。
ある出会いが、確信に変わった
SNSで知り合った、ある方がいます。
視覚障害を抱え、さまざまな困難を乗り越えてきた方です。
小林正観さんの本に出会い、人生が変わったと語っていました。
私は小林正観さんの本を3冊編集しています。
ファンでもあり、日常的に「感謝」や「ありがとう」を意識しています。
その方の投稿には、売るための言葉も、テクニックもありません。
ただ、生き方そのものが伝わってくる。
出版の本質は「信用のクレジット」だ
ここで、私は改めて気づきました。
本とは、読者と提供側との「信用のクレジット」を積み重ねる行為なのだと。
この出版社が出す本なら読んでみたい。
この編集者が関わっているなら信じられる。
この人の生き方なら、時間を使ってもいい。
そうした小さな信用の積み重ねが、次の一冊を手に取らせる。
広告ではなく、信用で選ばれる。
これこそが、小規模出版社が生き残る唯一の道だと思っています。
終わるのは業界か、それとも
出版業界は衰退しています。
それは否定できない事実です。
でも、人の生き方を伝え、信用を積み重ねる出版まで終わったのでしょうか。
あなたは、どんな「信用」を読者と積み重ねていきたいですか?