紙の本で商業出版デビュー、本当に必要ですか?
「いつかは紙の本を出したい」
そう思っている方は今も少なくありません。私自身、長く出版業界に身を置いてきた立場として、その気持ちは痛いほど理解できます。
けれども現実を直視すると、紙の本で商業出版デビューを果たすことは、かつてないほど厳しい状況になっています。
出版社は“売れる裏付け”を最重要視する時代
一昔前なら「斬新な企画」「ユニークな視点」さえあれば、編集者が目をとめてくれる可能性がありました。
しかし今は違います。
出版社がオファーしたい著者とは、すでに「売れるバックボーン」を持つ人。
たとえば、
・YouTube登録者数が数十万人以上
・SNSに数万人単位のファンがいる
・すでにテレビや新聞などで知名度がある
そうした条件を満たす人でなければ、出版社が積極的に動くことはまずありません。
新しめのことを追加すれば単なるフォロワーでは1500円以上する本を買うまでの行動は起こさない。
情報収集をきちんとしている編集者はこれに気づき始めています。
これは裏を返せば、「売れる見込みがなければ企画の中身すら見てもらえない」ということです。私自身、編集長時代には何百という持ち込み企画を受け取りましたが、中身を読まずに廃棄することも珍しくなかったのです。
出版コンサル会社に数百万円を払っても…
このような状況で登場するのが出版プロデュース会社です。
著者候補から高額なコンサル料を受け取り、出版社に売り込む企画を仕立てていきます。
費用は安くても300万円。500万、700万、さらには1000万円以上というケースも耳にします。
では、そこまで払って出版デビューできたとして、果たして結果はどうなるのでしょうか。
実際のケース:7割返品、500冊しか売れなかった本
具体的な一例をお話ししましょう。
ある健康関連の書籍が一年半前に発売されました。内容は非常に完成度が高く、著者も熱意を込めて書いたものです。
しかし結果はこうでした。
全国の書店に出荷:約1600冊
実際に売れた数:約450冊
返品:約1000冊以上(70%前後が返品)
売れたのは450冊。
つまり、仮に数百万円のコンサル料を支払っていたとしたら、「500冊に満たない販売のために数百万円を投じた」という計算になります。
しかも一度“売れなかった著者”の烙印が押されると、二冊目の企画を持ち込んでも出版社はまず相手にしません。
実際に私はこの本を読みましたが内容的には優れた本だと思いました。
それだけではダメなのが今なのです。
※すべてがこのような結果というわけではありません
出版社にとっても「大赤字」
実はこのようなケースは珍しくありません。
書店流通の仕組み上、発売から2週間が勝負。スタートダッシュで売れなければ、あっという間に返品の山に埋もれてしまいます。
かつては“売れ行きの良い書店”が起点となって部数が伸びることもありましたが、今は書店そのものが激減しています。その土俵が崩れている以上、「紙の商業出版」に多額を投じる意味は薄れつつあるのです。
電子書籍ならば、もっと戦略的に勝負できる
一方で、電子書籍はまったく状況が異なります。
・出版までのスピードが速い
・在庫リスクや返品リスクがない
・読者の反応を数字で即座に確認できる
・デジタルマーケティングと直結させられる
さらに「プロの編集者が関わった電子書籍」であれば、クオリティ面でも商業出版と遜色ありません。むしろ、柔軟かつ戦略的に認知を広げ、著者としての信用を積み上げることができます。
実際、私がプロデュースに関わった著者の中には、電子書籍デビュー後にSNSやメディア露出が増え、ビジネスチャンスを広げている方が数多くいます。
今後ますます加速する“電子出版シフト”
出版業界のさらなる縮小は避けられません。
だからこそ、「紙の本でデビュー」という幻想にこだわり、数百万円を費やすよりも、電子書籍でのデビューを通じて機動力を持ち、自分の知名度と信用を積み上げる方がはるかに合理的です。
「紙か電子か」ではなく、「どんな戦略で著者としての価値を高めていくか」。
その視点を持った人こそ、これからの時代に活躍できる著者になれると私は確信しています。
あなたは、もしも数百万円をかけて紙の出版に挑むとしたら、そのリスクを受け入れられますか?
それとも、電子書籍という新しい土俵で、賢く、戦略的にデビューしますか?