「自分はSNSで毎日文章を書いているから、原稿を書くのは得意だ」
「文章には自信があるし、そんなに直されることはないだろう」
本を書こうとする人の多くが、心のどこかでこう思っています。
しかし、いざプロの編集者に原稿を渡したとき、待ち受けている現実は往々にして想像とまったく違います。
戻ってきた自分の原稿が、編集者の赤字で“真っ赤っか”になっている。
この光景に驚き、ショックを受ける著者は少なくありません。
私が赤字を入れた原稿の実例をお見せしましょう。
驚くかもしれません。
↑どうしても横で表示できなくてすみません!
実際、何十冊も出版しているベテラン著者であれば、赤字がほとんど入らないこともあります。
ですが、初めての出版では、ほぼ例外なく原稿は赤ペンだらけになります。
これは「文章力がないから」ではなく、「本にするための文章の書き方」と「日常的に書いている文章の書き方」がまったく違うからなのです。
赤字が入る3つの典型的なポイント
編集者がどんなところに赤字を入れているのか、代表的な例を3つあげてみます。
① 良い文章を書こうとしすぎる
初めて本を書く人ほど「いい文章を書かなきゃ」と力が入りがちです。
すると、修飾語をやたらと重ねたり、後の展開を考えずに思いつくまま書いてしまったり…。
結果、読み手からすると「結局何を言いたいの?」と迷子になってしまう文章になります。
本は「著者が書きたいこと」を並べる場ではありません。
「読者が読みやすい形に整えられたメッセージ」を提供する場です。
ここを意識できるかどうかが、赤字の量を大きく左右します。
② 一つの文章に一つのことだけ書く
日本語は主語がなくても成り立ってしまう言語です。
そのため、気を抜くと「主語と述語の関係があいまいなまま、複数の内容を一気に詰め込んだ一文」になりがちです。
例えばこんな文章です。
「昨日打ち合わせをした企画は、実現すれば面白いものになるだろうし、クライアントも期待しているから、なんとか前に進めていきたいと思っている」
一文に要素を詰め込みすぎて、読み手は途中で息切れしてしまいます。
こういう場合は文を分けるのが鉄則。
「昨日打ち合わせをした企画は、実現すれば面白いものになりそうです。クライアントも期待しているので、なんとか前に進めたいと思っています」
これだけで読みやすさは格段に上がります。
③ 指示代名詞は慎重に使う
「これは大事なことだ」「それが本質だ」といった表現。
書き手は「これ」「それ」が何を指しているか自分の頭の中ではわかっています。
しかし、読み手には伝わっていないことが非常に多いのです。
例えば、前の段落と次の段落の間に「これ」が入っていた場合、読み手は「どっちを指しているの?」と混乱します。
編集者はこうした曖昧さを嫌います。赤字で「“これ”が指す対象を明記してください」と指示を入れるのです。
「自分の原稿が真っ赤になる」経験の意味
SNSで短文を書き慣れていても、数万字の原稿を読者目線で整えるのは別物です。
だからこそ、初稿の段階で編集者の赤字がびっしり入るのは自然なことです。
実際に私が関わった原稿を例にすると、真っ赤に修正が入って「これ、本当に自分の原稿?」と著者が戸惑うケースは日常茶飯事です。
しかし、著者と編集者が対話を重ねて修正を進めていくと、文章はどんどん研ぎ澄まされていきます。
読み手に届く“本の文章”へと磨かれていくのです。
赤字が多いからといって落ち込む必要はありません。
むしろ「編集者と一緒に本をつくっている」証拠であり、著者が一段上のステージに進むための大切なプロセスなのです。
あなたの原稿はどうなる?
初めて本を書く人は、きっと自分の原稿が真っ赤になったときに動揺します。
しかしその赤は「否定」ではなく「伸びしろの可視化」です。
ぜひ、機会があれば自分の原稿を編集者にチェックしてもらいたいです。
読者に伝わる形にするためのリファイン作業。
その一歩一歩を経験することで、著者は「書き手」から「本を書く人」へと変わっていきます。
ですから、原稿が真っ赤になったら、ぜひこう考えてみてください。
「これは、私の文章が“本の文章”へと進化していくための過程なんだ」と。