現代社会読本④~少子高齢化、多様化、ユニバーサル化、情報化、グローバル化など、急激に変化する現代社会について、基本的な理解と知見を持つことは重要です。

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4、男女共同参画社会(Gender-Equal Society)

(1)育児の社会化(Socialization of Child Care and Nursing)
 2021年に国立社会保障・人口問題研究所の「第16回出生動向基本調査」によると、夫婦にたずねた理想的な子ども数(平均理想子ども数)は2.25人と低下が続いています。また、夫婦が実際に持つつもりの子ども数(平均予定子ども数)は、2.01人と前回調査から横ばいとなっています。この理想と現実の差が、「産みたくても産めない現実」を示しているとされます。また、理想の子ども数を持たない理由は「子育てや教育にお金がかかりすぎるから」 (52.6%)という経済的な理由が最も多く、次に「高年齢で生むのはいやだから」(40.4%)、「ほしいけれどもできないから」(23.9%)、「これ以上、育児の心理的、肉体的負担に耐えられないから」(23.0%)といった理由が続きます。彼らが結婚や子育てをしやすい社会を作っていくことが少子化解消につながっていくと考えられている。
 ライフスタイルの変化に対しては個人の価値観に属する事柄なので、国や社会が介入することはできませんが(早く結婚しましょうとか、たくさん子供を産みましょうとか言えません)、働く女性が安心して出産・育児ができる環境を早く整えていく必要があります。基本概念は「男女共同参画(共参)社会の実現」であり、国・地方自治体のレベルでは育児・介護休業法や子育て支援施策の充実、保育園・幼稚園の拡充と弾力的運用などが挙げられ、社会や企業のレベルでは男性の育児休暇の積極的導入や女性の雇用の安定、託児・保育施設の完備など、家庭レベルでは父親の積極的育児参加・家事分担などが必要であるとされます。こうした環境整備は、女性労働力の確保という点から見れば、高齢者の人材活用と共に超高齢社会において不可欠の土台となり、青少年教育という分野においても重要な要素となっています。
 育児・介護休業法では、休業制度(育児休業・介護休業)だけでなく、時短勤務や休暇制度、ハラスメント防止措置なども定められています。2025年にかけて段階的に改正が行われ、男性の育児休業取得促進や介護と仕事の両立支援が強化されています。
➀育児支援制度
育児休業:原則1歳(最長2歳)まで。
産後パパ育休(出生時育児休業):子の出生後8週間以内に合計4週間(28日)まで、2回に分割して取得可能。
子の看護休暇:小学校就学前の子が1人の場合は年5日、2人以上の場合は年10日まで。時間単位で取得可能。
所定労働時間の短縮措置:3歳未満の子を養育する労働者が対象。
②介護支援制度
介護休業:対象家族1人につき、通算93日まで。通院の付き添いだけでなく、介護サービスの手続き代行などでも利用可能。
介護休暇:要介護状態の家族が1人の場合は年5日、2人以上の場合は年10日まで。1日または時間単位で取得可能。
介護のための所定労働時間の短縮措置:介護終了まで利用可能な所定外労働の免除制度。

(2)家族政策(Family Policy)
 日本の社会保障給付費の中で、家族政策(児童手当、保育、育児休業など)は約3%で、受益の世代間格差は先進国の中で最大と言われています。少子化対策に投じられる予算も少額で、効果もそれほど出ていません。一方、近年、出生率が回復している欧州の一部の国では、子育て家庭に大胆に公費を投入しており、「育児の社会化」が進んできているとされます。
 「育児休業」は1960年にオーストリアで初めて導入され、1970年代に他の国も追随しました。当時、欧州諸国は「労働力不足」と「低出生率」という問題に直面しており、北欧諸国は労働力不足を「女性の雇用促進」という形で乗り切ろうとし、そのために育児を公的に保障したのです。育児を労働と同じ価値があるものとして、休業中に高い所得保障を行ないました。また、父親にも育児休業の権利を与えるという動きは、EUの指令で本格化しました。現在のヨーロッパの主な出産・育児休暇の特徴は長期的な休暇制度、高水準の所得保障、父親の取得促進(パパ・クオータ)、柔軟な働き方などです。
ドイツ:「両親時間」として最長36ヶ月の育児休暇が取得可能で、12~14ヶ月の有給手当があり、月額収入の約67%(上限あり)が支給され、職場復帰が保障されます。また、両親が同時に、あるいは交代で取得してパートタイムで復帰するケースが珍しくありません。
フランス:産後10週間(第一子)+25日間の父親休暇(義務化)があり、3歳まで育児休暇が可能です。
スウェーデン:子供1人につき最大480日の有給休暇があり、男性の取得率が非常に高いという特徴があります。

(3)男女共同参画社会基本法(The Basic Law on Gender Equality)
 まず、1997年6月に改正男女雇用機会均等法が成立し、1999年4月1日に改正された労働基準法や男女雇用機会均等法が施行され、職場での男女の公平な扱いが後押しされることとなりました。採用・昇進などで男女間の差別を禁止する他、女性の深夜勤務が解禁され、セクハラでは企業により重い義務が課せられます。
<男女雇用機会均等法の改正>
①従業員の募集・採用・配置・昇進、教育訓練の男女差別が禁止され、是正しない場合は企業名の公表もある。
②女性の活用に積極的な企業には国が各種支援。
③昇進差別などの紛争について、一方の当事者(女性)からの申し立てでも調停が可能になる。
④セクハラ防止について事業主に配慮義務。
<労働基準法の改正>
①女性の時間外・休日労働・深夜業の規制撤廃。
②男女ともに時間外労働を抑制するための基準設定。
<育児・介護休業法の改正>
①女性の深夜業務解禁に合わせて、育児や家族の介護を行なう男女労働者の深夜業の制限。
 さらに1999年6月に、男性と女性が対等の立場で活動し、責任を分かち合う社会を実現するため、国の責務などを定めた男女共同参画社会基本法が施行されました。これは国連が中心となって女性の地位向上や権利の擁護を進めてきた開かれた世界女性会議の成果の中で、特に1995年の北京会議で採択された行動綱領を受けたものですが、その5つの基本理念は以下の通りです。
➀男女の人権の尊重:個人としての尊厳を重視。
②社会における制度・慣行の配慮:性別による固定的な役割分担などを是正。
③政策などの立案・決定への共同参画:あらゆる分野での意思決定への参加。
④家庭生活と他の活動の両立:育児・介護と仕事の両立支援。
⑤国際的協調:世界的な男女共同参画の動きと連動。

(4)ポジティブ・アクション(positive action 積極的差別是正措置)
 ポジティブ・アクションは、女性社員の能力活用の達成目標と期限を企業が自主的に設定し、緩やかな形で男女格差の是正を図る取り組みを言います。これには「女性の少ない職場に女性を配置する」「女性の管理職を増やす」など優遇する措置も含まれます。欧米で先行した仕組みであり、「日本は国際標準から見て、女性の登用が遅れている」といった欧米社会からの指摘に促され、一部の外資系企業で導入が進んだ。
例えば、ノルウェーでは1979年に「男女平等法」が施行され、教育や雇用面などで男女は平等に機会を与えられなければならないとされた。1988年には、公的に任命される理事会や審議会のメンバーは、「一方の性が少なくとも40%は占めなければならない」とする「クォータ制」(割当制)が導入され、公的機関のみならず、主要政党もクォータ制も導入するに至りました。男女平等法以外にも14の法律が平等推進を担っており、これらの法律の最終目標は「男女が共に仕事と家庭生活の両方に関われること」であると言います。家庭における男女平等の取り組みとしては、1993年に育児休業の一部を父親専用に割り当てる「パパ・クォータ制」が導入されました。取得しなければ権利が消滅する仕組みにより、父親の育休取得率を7割以上に押し上げ、男女平等と育児参加を促進しました。給与のほぼ100%が補償される期間もあり、制度導入前は4%程度だった男性の育休取得率が現在では70%以上に上昇しています。

(5)セクシャル・ハラスメント(sexual harassment)
 セクシュアルハラスメント(セクハラ)は、職場において相手の意に反する性的な言動により、不利益を与えたり就業環境を悪化させたりする行為です。身体への接触、食事や交際の執拗な誘い、性的な噂話、プライバシーの侵害などが該当し、相手が不快に感じたり、拒否感を示したりするものが対象です。また、18歳未満の児童が学校で経験するスクール・セクハラは、加害者が教師という権力を持つ存在であり、訴えて行く場所が無い、訴えても被害事実を信じてもらいにくいなどの問題があります。

(6)ドメスティック・バイオレンス(domestic violence=DV)
 ドメスティック・バイオレンスとは、夫やパートナーから女性に向けられる有形・無形の暴力のことです。2001年4月、配偶者からの暴力(ドメスティック・バイオレンス=DV)防止・被害者保護法が成立し、これまで「夫婦げんか」として見過ごされてきた暴力が、公式に「犯罪」として認められることとなりました。この法では、被害者のための3つの「駆け込み寺」(配偶者暴力相談支援センター、警察、保護命令申し立て)を明記しています。さらに2024年の改正で保護命令が拡大され、身体の暴力に加え、自由、名誉、財産に対する脅迫も対象となり、接近禁止の期間が1年に延長され、違反には2年以下の懲役又は200万円以下の罰金が科されます。

(7)性同一性障害(Gender Identity Disorder=GID)
 性同一性障害(GID)は、身体の性別と心の性別(性自認)が一致せず、強い違和感や苦痛を伴う状態です。生物学的には完全に正常であり、自分の体がどちらの性に属しているかは認識していますが、その反面、人格的には別の性に属していると確信しているので、いわゆる精神病ではありません。当事者数は、2013年時点の推計で約4万6千人とされますが、なぜ心と体の性の分離が起こるのか、詳しいメカニズムは謎とされています。具体的には性の不一致を強く感じ、形成的外科手術を望む「トランス・セクシュアル(Transsexual=TS)」と、手術までは望まないが反対の性での生活や、既存の性役割にとらわれないで生活することを望む「トランス・ジェンダー(Transgender=TG)」とに分けられます。
 ちなみに、「ジェンダー」(gender)とは生物学的な意味からではなく、男らしさ、女らしさといった社会的側面から見た性別のことを指しており、男女の性差に基づく固定観念のことを「ジェンダー・バイアス」(gender bias)、そうした性差からの解放を「ジェンダー・フリー」(gender free)と言う。
LGBTQ:レズビアン(L、女性同性愛者)、ゲイ(G、男性同性愛者)、バイセクシュアル(B、両性愛車)、トランスジェンダー(T、出生時に割り当てられた性別と性自認が異なる人)、クィア/クエスチョニング(Q、クィア~既存の性の枠組みに当てはまらない、クエスチョニング~性のあり方が定まっていない/分からない人の頭文字で、性的マイノリティの総称です。
アファーマティブ・アクション(積極的差別是正措置):これまで差別を解消するために、不利な立場に置かれていた人に、有利な条件をつけて平等が実現するように積極的な措置を取ること。マイノリティや女性などに対して、入学・雇用などで積極的に優遇的措置を取るなど、社会における人種やジェンダー等の構造的差別の解消に向けて実施される、暫定的な措置です。

(8)選択的夫婦別姓制度
 選択的夫婦別姓制度とは、結婚する際に夫婦が同姓か別姓かを選択できる制度です。民法第750条では、「夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫又は妻の氏を称する」とし、夫婦同氏の原則を定めているので、選択的夫婦別姓制度は現行民法では認められていません。
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