1、世界的問題としての環境問題(global environmenntal problems)
(1)国連人間環境会議(ストックホルム会議:United Nations Conference on the Human Environment)
1972年、スウェーデン首都ストックホルムで開催。テーマは「かけがえのない地球:Only One Earth」。
国連主催による初めての環境に関する国際会議で、この会議が環境問題対策の原点にあると言えます。会議では「人間環境宣言」を採択し、この会議の成果を実施に移すために設立された国際機関が国連環境計画(UNEP=United
Nations Environmennt Programme、事務局はケニアのナイロビ)です。
(2)地球サミット(環境と開発に関する国際会議:Earth summit / United Nations Conference on the Environment and Development)
1992年、ブラジルのリオデジャネイロで開催。将来の世代に資源と良好な環境が残せるようにという観点から、開発と環境保全を調和させる「持続可能な開発(サスティナブル・ディヴェロップメント:sustainable
development)」を基本理念として打ち出しています。このサミットでは、「環境と開発に関するリオ宣言(Rio Declaration on Environment and
Development)」、「アジェンダ21(Agenda 21)」(21世紀に向けた人類の行動計画)、「気候変動枠組み条約(地球温暖化防止条約:the United
Nations Framework Convention on Climate Change)」、「生物多様性条約(Convention on Biological Diversity)」、「森林原則宣言」が採択されました。環境問題に対する具体的な取り組みはこのサミットから始まったと言ってもよいでしょう。
(3)国連ミレニアム開発目標
2000年の国連ミレニアムサミット(Millenium Summit)で「ミレニアム宣言」が採択され、貧困撲滅のために次のような目標が決定されています。
①2015年までに1日1ドル未満で暮らす人口、飢餓に苦しむ人口の比率をそれぞれ半減する。
②2015年までに男女の差別無く、全ての児童が初等教育課程を完全に修了する。
③あらゆる教育段階で男女の均等な機会を確保する。
④2015年までに5歳以下の子供の死亡率を3分の2削減する。
⑤2015年までに妊産婦死亡率を4分の3削減する。
⑥2015年までにHIV・エイズ感染、マラリアなどのまん延を止め、減少に転じさせる。
⑦各国の政策に「持続可能な開発」を組み入れ、環境資源の破壊を阻止する。飲料水へのアクセスがない人口割合を半減する。2020年までに最低1億人のスラム居住者の生活を顕著に改善させる。
⑧政府開発援助を増額させる。市場へのアクセスを拡大する。債務を長期的に持続可能なものとする。
(4)環境開発サミット(持続開発な開発に関する世界首脳会議:WSSD=
World Summit on Sustainable Development)
2002年、南アフリカのヨハネスブルクで開催。1992年にブラジル・リオデジャネイロで開かれた「国連環境開発会議(地球サミット)」から10年を機に開催されたもので、世界170カ国以上から100人以上の首脳ら政府代表、民間活動団体(NGO)、企業、地方自治体など6万5000人以上が参加しました。リオでは地球環境保全の行動計画「アジェンダ21」が採択されましたが、実行されていない部分が多いため、「アジェンダ21」の検証と促進を目的として先進国や途上国の国益が激しくぶつかる中、経済、社会、環境を将来にわたって調和させる「持続可能な開発」に向けた具体的な行動計画と、各国首脳の決意が示されました。具体的には貧困対策としての「世界連帯基金」の設立、「生産・消費パターンを転換させる10年計画の策定」などですが、採択文書には法的拘束力は無く、実行は各国政府の自主的な対応にかかっていました。
ちなみにアナン国連事務総長は2001年末にまとめた報告書「アジェンダ21の実施」で、「リオで決めた目標の達成は予想以上に遅く、いくつかの分野では10年前より悪化している」として、次のような指摘をしています。
①1日1ドル以下で生活する最も貧しい人々は12億人。
②安全な飲み水を確保できない人は11億人以上。
③絶滅の危機にある動植物種は1万1000種。
④1990年代に伐採された森林は年間1400万ヘクタール。
⑤1992~99年に世界のエネルギー消費量は10%増加し、温室効果ガスは増え続けている。
(5)持続可能な開発目標(SDGs:Sustainable Development Goals)
2001年に策定されたミレニアム開発目標(MDGs)の後継として、2015年9月の国連サミットで加盟国の全会一致で採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」に記載された、2030年までに持続可能でよりよい世界を目指す国際目標です。17のゴール・169のターゲットから構成され、地球上の「誰一人取り残さない(leave no one behind)」ことを誓っています。
SDGsは発展途上国のみならず、先進国自身が取り組むユニバーサル(普遍的)なものであり、日本としても積極的に取り組んでいます。
目標1【貧困】あらゆる場所、あらゆる形態の貧困を終わらせる。
目標2【飢餓】飢餓を終わらせ、食料安全保障及び栄養の改善を実現し、持続可能な農業を促進する。
目標3【保健】あらゆる年齢の全ての人々の健康的な生活を確保し、福祉を促進する。
目標4【教育】全ての人に包摂的かつ公正な質の高い教育を確保し、生涯学習の機会を促進する。
目標5 【ジェンダー】ジェンダー平等を達成し、全ての女性及び女児のエンパワーメントを行う。
目標6【水・衛生】全ての人々の水と衛生の利用可能性と、持続可能な管理を確保する。
目標7 【エネルギー】全ての人々の、安価かつ信頼できる持続可能な近代的なエネルギーへのアクセスを確保する。
目標8【経済成長と雇用】包摂的かつ持続可能な経済成長及び全ての人々の完全かつ生産的な雇用と働きがいのある人間らしい雇用(ディーセント・ワーク)を促進する。
目標9【インフラ、産業化、イノベーション】強靭(レジリエント)なインフラ構築、包摂的かつ持続可能な産業化の促進及びイノベーションの推進を図る。
目標10【不平等】国内及び各国家間の不平等を是正する。
目標11【接続可能な都市】包摂的で安全かつ強靭(レジリエント)で持続可能な都市及び人間居住を実現する。
目標12【接続可能な消費と生産】持続可能な消費生産形態を確保する。
目標13【気候変動】気候変動及びその影響を軽減するための緊急対策を講じる。
目標14【海洋資源】持続可能な開発のために、海洋・海洋資源を保全し、持続可能な形で利用する。
目標15【陸上資源】陸域生態系の保護、回復、持続可能な利用の推進、持続可能な森林の経営、砂漠化への対処ならびに土地の劣化の阻止・回復及び生物多様性の損失を阻止する。
目標16【平和】持続可能な開発のための平和で包摂的な社会を促進し、すべての人々に司法へのアクセスを提供し、あらゆるレベルにおいて効果的で説明責任のある包摂的な制度を構築する。
目標17【常套手段】持続可能な開発のための実施手段を強化し、グローバル・パートナーシップを活性化する。
(6)環境問題のポイント
①環境問題は地球的規模の問題である
かつて高度経済成長の裏面として生じた公害問題は、企業の責任が問われ、OECD(経済協力開発機構)によって「汚染者負担の原則」(PPP=polluter
pays principle)が確立されましたが、今日の環境問題は一企業・一国家というレベルを超えた国際協力の中で対処するしかない段階に来ています。環境関連諸費用も増大化しつつあり、これらの負担をめぐるルールとシステムの本格的な検討が急務となっていると言えます。
②環境立国の道
環境問題は従来の社会システムが生み出した構造的問題でもあり、「大量生産・大量消費・大量廃棄」というあり方から、「省エネルギー・適正生産・リサイクル」というあり方へ転換していかない限り、必然的に直面する問題であると言えます。こうした「循環型社会」の実現が急務であり、経済面でも「環境的に健全で持続可能な経済」(environmentally sound and sustainable
economy)=「環境保全型経済」を目指していくことが避けられない課題となっています。
③人間と自然の共生
「自然を利用し、支配する」という発想から、「自然と調和し、共存する」という発想の転換が必要です。これは西洋的自然観に東洋的自然観をマッチさせていくことでもあります。
④think globally, act locally
地球規模で考え、足元から行動を。環境問題に取り組む姿勢を表した標語。