初学者の英文法学習において、「5文型理論」は英語の体系的理解を助けてくれますが、学習が進んでいくと、余りにも例外が多いことや、整合性のある説明ができないケースがあることに気づき始め、「拡張」や「修正」を盛んに行うのですが、単にパターンが増えるのみで、汎用性のある普遍的文法概念としてはなかなかしっくりこないという現実があります。実際、5文型に限らず、「文型」論は文構造についての規則としては一般性が比較的高いものの、学習者が個別の文を理解したり、実際に文章を書いたり、英会話によるコミュニケーションを実践する場合、むしろ個々の動詞の「語法」や、いわゆる「構文」といった個別性の高い規則の方がはるかに実用性が高いということもよく知られた事実です。例えば、学習者が英文を理解する上で「5文型」の知識が有効であるかを実証的に検証した研究でも、日本人EFL学習者を対象とした調査において、「ある英文の意味を理解する能力」と「その文型を認識する能力」とは互いに独立したものであり、また、特に習熟度の低い学習者ほどその傾向が強いことを示されています。
あるいは個々の文型理解においても、「目的語」と「補語」の区別が論理的に考えると難しく(どちらも「動詞が要請する語」であり、「文の必須要素」となっている)、この区別に固執しすぎると、「文法のための文法」という本来の英語学習の目的を忘れた、一種の「クイズ解き」になる危険性も出て来ます。
さらに「補語」になり得る品詞は通常「名詞」「代名詞」「形容詞」とされますが、She acted strangely.やMother is out.のような文を見ると、これらは「5文型理論」では第1文型SVと分類されますが、actは自動詞であるものの、やはり「どのようにふるまったのか」といった語が必要であると思われ、あるいはoutは副詞であるから補語ではないと見なされるものの、「Mother=outの状態にある」と考えられるので、「主格補語」と同じに見ることができてしまうわけです。そこでbe動詞と結合した場合は「形容詞」とも見られるという解釈も成り立ちますが、むしろ、従来、「修飾語」と位置付けられてきた「副詞」の中には文意上不可欠なものがあると考えられるようになってきました。こうなると、She put the book on the desk.なども第3文型SVOではなく、on the deskは文の必須要素と見るべきだとなるわけです(「the book=on the desk」、あるいは「the book is on the desk.」の状態にputしたと考えれば、第5文型SVOCにも見えてきますね)。