現在の学校英文法では、「5文型」においては、節(単文)を構成する要素として「主語」(Subject)、「述語動詞」(Verb)、「目的語」(Object)、「補語」(Complement)の4つを設定し(これら以外の要素は「修飾語Modifier」と位置付けられます)、これらの結合の仕方によって、英文の備え得る基本的構造を5種類に分類しています。
①第1文型 S+V
これは修飾語Mを除いた時、主語Sと述語動詞Vだけで文章が完結している文型で、この時、そのVを「完全自動詞」と言います。第1文型に用いられる動詞にはbe, come, goなどがあります。
②第2文型 S +V +C
これは修飾語Mを除いた時、主語Sと述語動詞Vと主語を説明する補語Cで文章が成り立っている文型で、この時、そのVを「不完全自動詞」と言います。この時、「主語S=補語C」という関係が成立しているので、この補語を特に「主格補語」(Subjective Complement、アメリカの文法教科書では「主語補語」〔Subject Complement〕と呼ぶのが一般的です。「格」の概念が明瞭ではない英語に「主格補語」という呼称は妥当ではないという意見も聞かれます)と言います。アメリカの小学生には「主語とつなぎ動詞によって始められた意味をcompleteにするから、Subject Complementと呼ぶ」と単純明快に説明されますが、小学生の理解としてはそれでいいものの、実際にはそれだけではありません。
第2文型に用いられる動詞には次のものがあります。
状態の維持を表すbe, remainなど。
状態の変化を表すbecome, get, come, goなど。
感覚を表すseem, feel, look, hear, smell, tasteなど。
③第3文型S +V + O
これは修飾語Mを除いた時、主語Sと述語動詞Vと動作の対象となる目的語Oで文章が成り立っている文型で、この時、そのVを「完全他動詞」と言います。
④第4文型S +V +IO +DO
これは修飾語Mを除いた時、主語Sと述語動詞Vと動作を受ける間接目的語IOとその動作を受けて動く直接目的語DOで文章が成り立っている文型で、この時、そのVを「授与動詞」と言います。間接目的語IOと直接目的語DOの位置を入れ替えると、前置詞が加わってS+V +DO +前置詞+IOという形になり、この時の前置詞はtoかforの場合がほとんどです(toの場合の方が多い)。
第4文型に用いられる動詞には次のものがあります。
toが加わるgiveなど。
forが加わるdo, cookなど。
「文型」を中心にアメリカにおける文法教育と日本における英文法教育を比較すると、最も違いが生じるのがこの第4文型の捉え方です。アメリカでは「ダイアグラム」と呼ばれる図式化が盛んに取り入れられていますが、そこでは「間接目的語」という概念は無く、「目的語」は全て「直接目的語」(Direct Object)を意味し、objectという語が単独で見られることもほぼありません。実はアメリカでは第4文型に相当する文型は認められておらず、「間接目的語」は副詞と同じ扱いを受けているのです。第4文型の考えに慣れている日本では、「直接目的語」と「間接目的語」は対等であるとの印象を持ちやすいものですが、例えば、Mr. Spinoza gave us the test.という文の場合、Mr. Spinoza gave the test.とは言えますが、Mr. Spinoza gave us.では不完全であり、また、The test was given.は可能ですが、We were given.では文が完成したことにならないように、必ずしも同等とは言い難いのです。しかし、両方共受動態で主語になり得る場合もあり、第4文型での表現と第3文型での表現のニュアンスの違いも広く論じられていますので(例えば、He taught English to them.では単に「英語を教えた」だけですが、He taught them English.だと「彼らは英語を身に付けた」ことまで含意します)、これは日本式の分類の方にメリットがあるのではないかと見られています。
実はこのアメリカ式発想と日本式発想の違いは「5文型理論」の元祖たるオニオンズも迷ったところであり、彼は” Fourth Form of the Predicate”の例として挙げた”I gave him the money.”のhimをindirect objectとしながらも、そのわずか数ページ後には”Give him a glass of wine.”のhimをadverv-equivalent(副詞相当語句)と見なしているのです。
⑤第5文型S +V +O +C
これは修飾語Mを除いた時、主語Sと述語動詞Vと動作の対象となる目的語Oと目的語を説明する補語Cで文章が成り立っている文型で、この時、そのVを「不完全他動詞」と言います。「目的語O=補語C」という関係が成立しているので、この補語を特に「目的格補語」(Objective Complement、アメリカの文法教科書では「目的語補語」〔Object Complementと呼ぶのが一般的です〕)と言います。第5文型におけるこの関係をイェスペルセンが考えた用語で、「ネクサス」(nexus)と呼びますが、「ネクサス」とは「SV構造」のことを意味し、節の「簡易形式」という視点で捉えられます。また、第5文型は基本文型とされていますが、元の文における目的語Oを主語Sとし、補語Cを動詞Vとするような文を含む実質上の複文の構造であるとも考えられることから、基本文型としては扱わないほうが実際的だという考えもあることも知っておくといいでしょう。
第5文型に用いられる動詞には次のものがあります。
知覚動詞のfeel, see, hearなど。
使役動詞のmake, have, letなど。
ところで、通常、進行形や完了形の文は第2文型とは見なさず、動詞部分を原形や三単現の形にして文型を考えており、受動態の文も第2文型とは見なさず、能動態にした時の文型を元に、それぞれ第3文型の受動態、第4文型の受動態、第5文型の受動態と考える場合が多いと言えます。群動詞(動詞句)を含む文は群動詞全体を1つの動詞と考えることが多いでしょう。