カイロンを深掘りする(神話編)

記事
占い
西洋占星術では、私たちがいる場所=地球を中心として、地球から見た太陽、月を含む太陽系の10天体を主として用います。太陽、月、水星、金星、火星、木星、土星、天王星、海王星、冥王星です。しかし、土星より遠くにある天王星、海王星、冥王星が発見されたのは、それぞれ、1781年、1846年、1930年なので、長い占星術の歴史から見たら、つい最近のことです。それまでの古典占星術では、これらを除く7天体だけが使われていました(インド占星術では現在でも基本的に7天体だけを使用しています)。

もちろん、発見前もこれらの天体は宇宙に存在していたわけなので、これらが意味する事象は地球上の歴史や個人の人生の中で占星術的には存在していたのでしょうが、新しい天体の発見以降、その天体の意味するところが歴史上で可視化されてきて、人々の意識にのぼりやすくなってきたことは言えるようです。例えば、天王星が発見された1700年代後半頃から、天王星の意味するテクノロジー、革命、人道主義などが歴史の中で重大な意味を持ち、格段に可視化されてきて、個人の人生の中でも意味合いが強くなってきたと言えるかもしれません。現代の私たち、とりわけ文明の中で生きる者にとっては、天王星、海王星、冥王星の意味するところを見ずしては、個人を語ることにも無理が出てくるのではないでしょうか。

さて、今回は時代をさらに先に進めた1977年に発見された天体カイロン(日本語ではキロンとも呼ばれています)を掘り下げていきます。1977年とは、びっくりするほど最近です。一口に天体といっても、カイロンは小惑星なのか彗星なのか明確にはわかっていません。太陽の周りを土星と天王星の間で公転しています。主要10天体以外でも、西洋占星術で意味づけされ用いられる小惑星は多くあるのですが、個人的に、このカイロンと1801年に最初に発見された小惑星のセレスは10天体とほとんど変わらないくらい重要な、無視できないものとして見ています。

じつは今回、カイロンをフォーカスするきっかけとなったことがあります。それは、ロックンロールの創始者の一人とも言われているリトル・リチャードのドキュメンタリー映画『I am everything』に関する感想で、リチャードの人物像について語られていた話を聞いていた時、そのまんまカイロンの特徴を思い出したのです。自分はこの映画を未視聴なので詳しい内容は分かりませんが、興味津々でさっそく彼のホロスコープを調べてみたら、カイロンが1ハウスに入っているではありませんか(1ハウスについては、ブログで記事にしています)! 占星術的に、リトル・リチャードはこれからお話するようなカイロン的なキャラクターを色濃く持っていることになります。ということで、この機会にカイロンという天体について掘り下げてみましょう。

夜空の星が象る星座が神話からできているのと同じように、占星術で用いられるそれぞれの天体も神話によって意味付けがされています。つまり、神話なしでは占星術は意味を成しえません。今回フォーカスするカイロンも神話に登場するキャラクターから名前と性格を与えられています。もちろん、神話は天体カイロンの発見よりもはるかに昔からありました。占星術と神話の関係を考えると、世界最大の謎の一つだと思うのですが、あまりそこを深く考えたり疑問を持つ人はなく、ただ「そういうもの」として受け取ってしまうくらい、私たちは神話という権威に盲目的に従順で飼い慣らされています。では、その神話の中で、カイロンとはどのようなキャラクターなのでしょうか。「傷ついたヒーラー」と呼ばれる天体カイロンの「傷」と「癒し」とはどのようなものなのか、神話から辿っていきます。


画像.jpeg


ギリシャ神話に登場するカイロンはクロノス(占星術で土星に該当する神です)とニンフであるピリュラーの息子で、半人半馬のケンタウロス族として生まれます。しかし、神々の一員であるクロノスの血筋として不死の体を持っており、粗野で享楽的な他のケンタウロスと違い、より文化的で、数々の教養と賢明さを与えられます。その神性を特徴づけるように、身体的な特徴も他のケンタウロスとは違っているところがあり、伝統的な記述では、カイロンの前足は馬ではなく人の足で描かれています。ですが、他のケンタウロスと比べて何か変な、独特なこの息子の姿を見た母親は嫌悪感を抱き、その存在を恥じ、カイロンは親に捨てられてしまいます。

孤児になったカイロンはアポロ(占星術で太陽に該当)とアルテミス(月に該当)の双子の兄妹に拾われ、音楽、薬学、アーチェリー、予言などの教育を受けました。高い教養を身につけたカイロンは、ケンタウロスでありながら、後に文化的ヒーローとして知られる多くの弟子たちの師匠、メンターのような存在にまでなります。西洋占星術におけるカイロンは「傷ついたヒーラー」というキャッチフレーズで語られるように、「傷」を負っていることがキーワードになっています。この傷というのは、他のケンタウロスたちと違った姿だったため恥とされ、親に捨てられた心の傷が元になっているのだと思いますが、それとは別に、さらに致命傷となる傷を負う経験をします。皮肉にも、自らの弟子であるヘラクレスの放った矢が誤ってカイロンの膝に命中してしまったのです。

ヘラクレスはカイロンの異母兄弟に当たるゼウス(木星に該当)の放蕩によりできた子の一人なのですが、その存在はゼウスの本妻ヘラの怒りを買います。ある時、ヘラによって「狂気」を吹き込まれたヘラクレスは自分の子供たちを炎の中に投げ込んで殺してしまうのです。その罪を償うために、12の勤めが命じられました。そのうちの一つ、大猪を生け捕りにする勤めを果たした時、フォルスというケンタウロスに出会い、歓迎されます(ちなみに、フォルスも西洋占星術で用いられる主要な小惑星の一つです)。フォルスは宴を催し、その際にヘラクレスはフォルスの所有していたワインを勝手に飲んでしまいます。そのワインは他のケンタウロスたちとの共有物だったため、他のケンタウロスらはそれに怒り、ヘラクレスを襲撃しました。

応戦したヘラクレスに追われ、ケンタウロスたちはカイロンのところへ逃げ込みます。その際、ヘラクレスがケンタウロスに向けて放った矢がカイロンの膝に命中します。その矢には怪物ヒドラの猛毒の血が塗られていました。カイロンは非常に苦しみますが、不死の身であるため死ぬことができず、その苦しみから逃れることができません。痛みの末、自らの不死の力をプロメテウスに与えることをゼウスに頼むよう、ヘラクレスに託しました。プロメテウスというのはタイタンに属する神で、天界の火を盗んで人類に与えたことで知られています。それがゼウスの怒りを買い、岩に鎖で繋がれて鷹に肝臓をついばまれるという😰、不死の身にとっては終わりのない拷問を受けていたのです。そんなプロメテウスですが、カイロンの不死の力を与えに来たヘラクレスによって鎖から放たれ、苦しみからついに解放されます。

カイロンは自分と同じような痛みを経験している他者を苦しみから解放し、その傷を癒すことになりました。ですが、自分自身の傷を癒すことはできなかったのです。この神話のストーリーから、天体カイロンの表す性質とキーワードが浮かび上がってきます。

キャラクターを示す1ハウスにカイロンがあるリトル・リチャードですが、同性愛者であったため父親に勘当され家族から追い出されたこと、生まれつき片方の足がもう片方より少し短く歩き方が変わっていて、女々しい姿として幼少期にからかわれたこと、黒人でありながら、後に名を馳せる数々のロックスターたちの師のような存在であったことなど、まさにカイロンの神話とそのまま被るようなところがあり、興味深い以上に、なんだか可笑しいです。もっとも、神話のカイロンのような落ち着いた感じではなく、暴れん坊のイメージ(アセンダント牡羊座)ですが。また、彼の1ハウスにはリリスという感受点も入っていて、それが自分というキャラクターにおいて男性社会で抑圧されるような問題を想起させます。

次回も引き続き、リトル・リチャードの例を交えながら、カイロンの意味するキーワードを深掘りしていきます。

サービス数40万件のスキルマーケット、あなたにぴったりのサービスを探す ココナラコンテンツマーケット ノウハウ記事・テンプレート・デザイン素材はこちら