太陽: 外にいる時、外着を着ている時のような自分、意識的な行動、意志
月: 家にいる時、家着を着ている時のような自分、無意識の行動、意思
月は内面/感情面、プライベートな自分を意味します。それと共に、母親のことも表しています。このことは、母親(または生育環境で母親的/養育係的な役割の人)の存在が子供の感情面にダイレクトに影響を与えていることを示しています。
誰でも日々の中で感情を元に動いていて、何かを選択するにしても心の声を無視することはできません。幸せも内面から感じるもの。月(内面)を無視して幸せは得られません。月の意味するところはとても大きいことがわかります。
「月星座」は最近では太陽星座に次いで広く知られていますが、自分の感情面や母親のことを見る時、月のサインだけで複雑な内面が表されているわけではありません。月と天体が強いアスペクトを取っている場合は、月のサイン以上にアスペクトする天体の性質が表れます。例えば、月と冥王星が強いアスペクトをとっている場合、月蠍座と同じように、あるいはそれ以上に月蠍座的な性質を持ちます。
月と冥王星が強いアスペクト(ハードアスペクトやタイトなメジャーアスペクト)をとっている場合、月が蠍座にある場合、または月が8ハウスにある場合、この月を「ハデスムーン」と呼ぶことがあります。ハデスというのはギリシャ神話に登場する冥界の王で、冥王星はハデスのローマ名 Pluto が由来。「冥王星エネルギーを持った月」ということです。
今回は月の配置の一例としてハデスムーンについて書いていきますが、月のナチュラルハウスである4ハウスも家庭環境やルーツを表すと同時に、自分の内面や母親のことも示しているので、4ハウスに冥王星が入っていたり、カスプが蠍座の場合も、何かカルミックな家庭環境の中でハデスムーンのような緊迫した感情を強く経験しています。また、8ハウスのカスプが蟹座の場合も母親の特徴の一部として表れますので、多少当てはまる部分があるのではないかと思います。
冥王星/蠍座は深い感情や物事の深部にまつわることを表し、演歌のような一途な愛情深さや情の深さ、親密さや強い結びつきと同時に、深部で煮えたぎるマグマのような怒り、嫉妬や執着などのダークな感情、物事のダークサイドを示します。これらの、誰もが持っていたり直面することがあるけれども、タブーとして地下に隠されていて、変えないかぎり連鎖して受け継がれていくようなカルミックなものを表しています。
感情面で冥王星エネルギーが強いということは、上に書いたようなダークな感情を感じやすかったり、それゆえに相手の心の奥を見透かす洞察力が働きます。自分が通ってきた激しい内面の経験から、人の心を誰よりも理解するような深みと洞察力を備えるので、情や愛情深さと共にそれがポジティブに生かされると、ヒーラーやセラピストのような温かい部分が表れます。この洞察力がネガティブに使われると、人の心を見透かすことで「フフン・・」と弱みを握って優位に立ち、相手や状況を心理的にコントロールするために利用する場合もあります。
対人関係では心理面で相手より強い立場でいられるようにパワーやコントロールを握ることを求めるため、弱い部分が見せられず、本当の感情を隠すようにポーカーフェイスを装ったりします。相手の言動などから心が大きく動揺して最も脆弱になっている時、心とは正反対に、まるで何も起こってないかのように、しれっとポーカーフェイスに振る舞います。そんな時、表から見えている部分は氷山の一角で、水面下では巨大な感情が凍りついている状態。心の奥底はドロドロになった感情でギリシャ悲劇のようになっていたり、アパシーになっていたりします。怒りの感情だけは時に火山が噴火するように爆発することがありますが、怒りのような強いところは見せられても、悲しみや不安など、人から見て弱いと思われる部分はやはり頑なに見せません。これがハデスムーンの陥りがちな特徴です。
内面は月が意味するように家庭環境や生育環境、母親からの影響を受けます。この場合、自分の目から見て蠍座/冥王星的な特徴を持った母親にケアされて、あるいはケアされずに育ってきた影響が表れます。冥王星はオール・オア・ナッシング、0か100(むしろ120や200のイメージ)の両極端を意味するので、過保護なくらいケアされているか、あるいは全くケアされていないかになりやすいです。
母親/母親役との間に支配的な力関係や心理的なコントロールが働いていたり、何かタブーや秘密があったりすることが多く、過保護な場合も監視や過干渉など、所有や支配に繋がっていることがあります。必ずしもお母さんの方がパワーを持っているというわけではなく、両者の間柄にそういった駆け引きのようなコントロールや力関係が多かれ少なかれ働いているということです。弱い部分を見せないように自分のリアルな感情を自ら抑制するような内面的な不穏さを経験しているため、物事のダークサイドを見抜く洞察力が発達して「知りすぎていた男」のような気持ちを持っているかもしれません。裏切られないよう、誰も信用していないようなところがあり、人には騙されにくいが、代わりに人を見る時に性悪説から出発し、疑いを持つことから始めてしまうような癖が無意識についていることもあります。
冥王星/蠍座/8ハウスの示すことには、対人関係の中で連鎖して受け継がれていくものの意味があり、わかりやすいことでは相続、遺産、負債、遺伝なども表すのですが、同時に「変容」「超越」「破壊と再生」といった、負の連鎖を断ち切って新しい形に生まれ変わるようなことも重要なキーワードになっています。直面することはむしろ、変わらなきゃいけないようなカルミックな連鎖がテーマになっていることがほとんどです。
蠍座のよく知られたキーワードで「生と死」があります。これは “birth and death” ではなく “death and rebirth” なので、「死と再生」といった方が正確です。占星術の中にも過去世、今世という輪廻転生の考え方があるのですが、そういえばこのキーワードもそれを示しているものの一つだなと思います。蠍座/冥王星の意味するカルミックさが過去や過去世から連鎖しているものと考えると、妙にしっくりくるところがあります。閉じ込められた感情は、それを抑制して何事もなかったかのように振る舞ったからといって無くなったわけではなく、その時にパンドラの箱に閉じ込めたようなもので、それは負債となって残っていきます。とりわけ対人関係の出来事なので、周りの人にも確実に影響を与えています。それはもしかしたら、過去世からカルミックな連鎖や遺産として引き継がれている何かを表しているかもしれません。
実際、蠍座/冥王星エネルギーの強い人はどんな荒波をくぐり抜けてきても物凄い生命力で強く生きていることが多く、特にハデスムーンはそういった強さがあります。ただ、その強さは面倒臭い感情と向き合わせる事柄、感情的な修羅場から目を背けてパンドラの箱に押し込める方法で得ているところもあります。過去世という考え方でなくても、単純に過去の自分と現在の自分で、ハデスムーンが通ってきた内面的経験を振り返ってみて、それによってもたらされた思いや結果で、負債を背負っているように感じているのであれば、変えないかぎり続いていくということです。変容 (transformation)というキーワードがありながら、変えるというのは蠍座/冥王星にとって極めてチャレンジングなこと。0か100かしかなく、中間がないので、ニュートラルな気持ちは持てないからです。
ハデスムーンが心を開くには他人を信頼することが課題になってきますが、信頼できる人を見つけるなんて誰にとっても難しいこと。100%信用できる人などほぼいないでしょう。誰だってそうです。それをわかった上で、コントロールを手放し、目を背けてきたものと向き合い、茶番なしで少しずつ弱い部分もオープンにしていく。そうすることで、それは弱い部分ではなく、柔らかく強い部分だということに気づいていくのかもしれません。