「介護離職ゼロ」
それは政府が掲げたスローガンのひとつです。
確かに、この言葉だけを聞くと希望があります。
「介護のために仕事を辞めなくてもいい社会にしよう」
その理念は、まちがいなく素晴らしい。
けれど現場では、理想と現実の距離があまりにも遠いのです。
在宅介護を続けながら仕事を持つというのは、
想像以上に過酷です。
デイサービスの送迎時間にあわせて出勤を調整し、
夜は親の薬を確認しながらパソコンに向かう。
電話の途中で「お母さんが転んだ」と連絡が入る。
そんな毎日が続くと、心も体も削られていきます。
「離職したくてする人なんて、いない」
多くの介護者がそう口にします。
仕事を続けたい。でも、もう両立できない。
その結果、静かに職場を去っていく。
そして、ここでもやはり女性が圧倒的に多い。
親の介護を理由に退職するのは、いまも娘や嫁が中心です。
介護離職を減らすために必要なのは、
「がんばれば両立できる」という精神論ではなく、
現実に即した制度と支援です。
たとえば、
・介護休業の柔軟な分割取得
・在宅勤務制度の拡充
・介護保険の利用時間の上限見直し
こうした「仕組み」こそが、本当の意味での支えになります。
介護と仕事の両立は、本人だけの努力ではどうにもなりません。
社会が、「支える側の人」を支える。
その視点が欠けている限り、「介護離職ゼロ」はただの言葉に終わってしまいます。