コラム86 手技ものの上手い下手

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 私自身カテーテル治療、ペースメーカー手術などの手技ものは比較的好きな方で、好きがゆえに真剣に取り組んできました。そして、その結果比較的どんな手技でも循環器系のものはできる様になってきたのが10年目くらいからでしょうか。人それぞれ段階は違えどもそれくらいになってくるとある程度できる様にはなります。私も決して中学生、高校生くらいの時は器用とはいえず、至って普通くらい図画工作五段階で真ん中くらいの人間です。最近人に手技を教える立場になってきてよく思うことは、どんなに手取り足取り教えても上達しない人もいれば、あまり教えなくてもすぐに上手くなる人もいるということです。一昔前までは、好きで興味がある人が早く成長するのだと思っていたのですが、最近は上達する人としない人は好き嫌いだけではない様な気がしてきました。今回はどうやれば手技ものが上達するのか、上達が早い人はどんな人なのか考察してみようと思います。これは当然どんな仕事に関してであっても通用する理論だと個人的には考えているのですが、あまり啓発本などには載っていないような気がして、私オリジナルの考えです。 
 まず、上達が早い人の特徴は見ただけである程度できる様になるということです。新しい技術を見学した場合、見学中にその技術を習得する様に誰もが集中しています。でも上達が早い人は見ながらにして自分が手技を行っている感覚で見ています。主に術者の手元に集中していますが、術者の視線、物の配置など自分がやる場合のイメージを作りながら見学しています。そうでない人は、見学は見学。一回みても当然やったことがない手技として判断していて見ただけでは自分の手技になりません。見た後に実際に2ndオペレーターとして手技に入り、さらにエキスパートと一緒に数回やってみてから、自分のものになります。でも、上達が早い人は一回みただけでやれる感覚を持って帰ってきて、「次これやってみよう」となるわけです。場合によっては一回みて、当日帰宅後に風呂に浸かりながらイメトレして、本番前にもう一度確認のイメトレして、それで3回分自分で手技をやった気になって本番に臨む感じです。ここの差が10年も経ってくると大きくなってきます。若いうちはやはりチャレンジ精神がものを言うのでしょうか?チャレンジし続けた結果、一回みただけで自分のものにできる様にだんだんなってくるのだと思います。
これに付随してというか個人的にもっと大事だと考えているのが、上達が早い人の特徴として時間の感覚を持っていると言うことです。具体的には見学の際に何時から始まって、何時頃にはこの段階、終了までに何分くらいとメモを取ったりしています。手技の上達とはすなわち、的確、安全を優先した後に手技時間を減らす行為だと知っているからです。手技時間の短縮は患者さんの合併症を減らせますし、医療スタッフや資源の有効活用に直結します。従ってエキスパートと言われる人たちは最終的には手技時間が早くなっていくことを上達が早い人は最初から知っていて、目標の手技時間の目安とするために、初めてみた手技であっても、エキスパートがどれくらいの時間でその手技を行うかどうか気にしているのだと思います。イメージトレーニングも大事なのですが、私はもしかしたらこの時間配分を気にする点が、より上達への近道なのではとすら考えています。
エキスパートと言われる人に上手だけど手技時間が長い人はいません。なぜなら、ゆっくり丁寧かつ正確に手技を行いながら、周りの全てを考慮し手技全体を統制しながらことを進めているからです。そうすることによって、周囲のサポートする人間がうまく時間を短縮する方向に動き、全体としてスムーズに手技時間がどんどん短くなって合併症なく終了できる様になります。ゆっくりやっている様に見えて全体で見ると早い、それがエキスパートの証です。
上達が早い人は特に時間配分に配慮し、結果的にエキスパートへと進化していくのだと思います。手技物が上達するための私なりの考えをお示ししました。

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