【連載小説】第22話 もう一人の視線

【連載小説】第22話 もう一人の視線

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『何やってんだ!その手を離しな』
『先輩!』
と3人組の一人が痣が出来るくらい萌の両手を持っていたが
その一言でいきなり離した。
3人はばつの悪そうな顔をして下を向いた。
『もうこんな真似するんじゃねえぞ』
と聞く間もなく走りだしてどこかに行ってしまった。

萌は目を閉じたまま体を固くしていた。

足音が近づく。

逃げなければと思うのに
体が言うことをきかない。
その時だった。

『大丈夫?』

さっきまでの荒い声とは違う
静かな声だった。
萌はゆっくり顔を上げた。
ネオンの光の中に
二人の男が立っていた。

『こんな所で一人でいるなんてライオンの檻の中にいるうさぎみたいだぞ』
『すみません』
と萌は震えながらやっと声が出るようになった。
『この時間に一人で居るなんてどうかしたの?』
と拓海は萌に近づいた。
萌は目の前で起こったことが現実だとは思えず
どう対処していいのかただただその場から動けずにいた。

『拓海、もういいじゃねえか、行こうぜ』
ともう一人の男が面倒だと言わんばかりに言った。
『でもさ、このままじゃまたあいつらみたいのがいるから心配だよ』

拓海は背が高く
長い髪がネオンの光を受けて揺れていた。
モデルのような体型で
どこか余裕のある笑みを浮かべている。
こうゆう男が
女の子を簡単に惹きつけるのだと
萌はまだ知らなかった。

もう一人の男、智史は
少し離れた場所に立っていた。
一重の鋭い目。
感情をあまり表に出さない男だった。
だが萌が震えていることを
誰より早く気づいていた。

『あの、私一人で帰れますから』
と萌はやっと体を起こし立ち上がった。
『じゃ大丈夫だね、早くここから出たほうがいいよ』
と拓海は魅力的な笑顔で言った。

こんなに素敵な男性がいるなんて信じられないと萌は思った。
今まで男性を意識したことがなった萌にとって
この拓海との出会いは何故か運命すら感じた。
このままここで別れたら一生会えないような気がして
萌に積極的な行動を起こさせた。

『拓海さん?あの、連絡先教えてもらえないですか?』
『えっ、連絡先?』
『ええ、親に話したらきっとお礼言いたいと思うので』
『いいよ、お礼なんて。親じゃなくて君から電話くれると嬉しいな』
『電話してもいいのですか?』
『もちろん、ほらこれが電話番号』
と何処からか用意されていたようにメモ用紙を渡した。
『わぁ、必ず電話しますね』
萌は怖いことがあったことはどこかへ飛んでしまい
拓海に出会えてことが嬉しくて仕方がなかった。
『じゃ』
『あっ、はい、ありがとうございました』
と萌は頭を下げた。
もう一人の智史のほうは何も言わず立ち去った。

『おい拓海、また悪い癖が出たんじゃないのか?』
『そんな訳ねえよ、あんな子供、相手にするわけないよ』
『それならいいけど』
と智史は拓海の女癖の悪いのを知っていた。
ただこの時、
小さな違和感を覚えていた。
それがなんなのか
まだ分からなかった。

だが後になって
智史は何度も思い返すことになる。

あの夜、
何かが始まっていたのだと。

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