【連載小説】第11話 仕組まれた希望

【連載小説】第11話 仕組まれた希望

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『もしもし三上さん』
『おお雅子か、昨日が花見の会だったね。
それで櫻木とはどうだったんだ?』
と三上の声は、昨夜の出来事など何もなかったように
穏やかだった。
『ええ、言われた通りにしたわ』
雅子は三上に言われるままに行動を起こしたが
こうして直接話すとなると自分がしたことに恥ずかしさを感じ
後悔の念にとらわれそうになっていた。
『そうか、よく辛抱してくれたね。それで櫻木は何て?』
『今日の事は女将さんには内緒にするようにって悪いようにしないからとも言ってたわ』
『あの爺さんそんな事を言ったのか。
内緒にしろというのは知られると厄介なことになるからそう言ったのさ、
それで車代にとか言ってお金を渡さなかったか?』
『ううん、タクシーは用意して貰っていたし特別渡された物なんて何もないわ、それより早く帰れみたいな感じで嫌な人だったわ』
『やっばりな。あの男にはいろいろ良くない噂があって女癖も悪いし金しか信じない。だからこそ利用できるのさ』
と三上は軽い口調で事もなげに言った。

そんな男よくも私の相手として選んだものだと
憤慨したがそれは後の祭だった。
もうすでに賽は投げられた。
どうこう言っている場合じゃない。
それどころか時間との戦いなのは雅子にも分かっていた。
ただ言いようもない不安と三上への恋慕の思いを押さえるにはまだ若かった。

『私、三上さんに会いたいの、会って安心したいの!今すぐにでも!』
『雅子落ち着いてよく聞くんだ。
これからが正念場なんだよ。
雅子と俺とのことは誰も知らない。
もし雅子から妊娠の話しがでたらあいつのことだ私立探偵を雇っても
調べるだろうから俺達暫く会わないほうがいいんだよ』
『そんな、もうずっと会えないの、いやよ』
と雅子は何のために自分の心を削ったのか、
それまで持ちこたえていた、ぎりぎりの感情がいっぺんに崩れて大声を出した。
2人のため2人の赤ん坊のためという大義名分があったから行動に出たのに
会えなくなるなんて雅子は三上の言葉に初めて疑問を感じた。
『雅子と何もこの先ずっと会えないって訳じゃないんた。
これから言うことを頭に入れて実行してくれ、
これは雅子の演技力にかかってるし上手くいけば親子共一生安泰だからな』
『私どうしたらいいの』
『またいつか2人の時間がきっとくるさ。
その時は俺達3人だ。
誰が何と言おうと雅子と子供は俺が守るよ』
俺達という響きに雅子は急に陶酔にも似た感情が湧き
暗いトンネルから脱出して一筋の光を見出だしたような感覚だった。

『私達3人のためなのね』

まずは女将さんから櫻木へ今回の妊娠を伝えるというものだった。
お金に欲深い女将さんだから櫻木との間に子供が出来ましたなんて
言おうものなら目を輝かせて喜ぶに違いないと踏んでいた。
櫻木のほうも例え一度であっても身に覚えがあるのなら
納得する可能性が大であった。

すべては女将さんの強欲に賭けることにした。

そして萌が生まれ順調に事は運んでいると思っていた矢先、
たった一言が原因で
この計画が足元から崩れるとは
誰も予想していなかった。

運命はいつも静かな顔で近づいてくる。
そして壊す時だけ、音をたてる。

天罰は忘れた頃に訪れるのではない。
信じたいと願った瞬間から、すでに始まっているかもしれない。
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