「強みに着目して生きる」大切さを具体的に教えてくれるのが、米国Gallup社が開発した「ストレングス・ファインダー」。34の資質が提示され、受検者は自分の資質トップ5(あるいは全34)が分かるようになっています。その中の一つに「包含」という資質があります。包含を持つ人は、周りの人を積極的に巻き込むことが得意であり、孤立する人がいないように気を配る独特の才能を備えています。
今回は、この「包含」という資質に焦点を当てて、その特徴や強みとしての生かし方、さらに才能を磨くための具体的な行動や思考法について探っていきます。
1. 「包含」の特徴
ストレングス・ファインダーにおいて「包含(Includer)」という資質を持つ方は、「みんなでやる」「孤立する人を作らない」という意識が非常に強いと言われています。たとえば、組織やグループの中で誰かが取り残されそうになると、それを見過ごさずに手を差し伸べる姿勢を自然と取れるのが包含の資質を持つ人の大きな特長です。
さらに包含を持つ人は、「全員を巻き込むことが結果的に良いパフォーマンスにつながる」ということを感覚的に理解していることが多いのも強みです。人材を排除せず、あらゆる立場や役割の人の存在価値を尊重するため、チーム全体としては多様な視点や意見を取り込むことができます。結果として、新しいアイデアやイノベーションが生まれやすくなることも含まれるのです。
一方で、「包含」を持つ人にとっての課題として挙がりやすいのが、誰も排除しないように気を配るあまり、自分のリソース(時間や労力)を知らず知らずのうちに大量に消費してしまう点です。本来であれば、全員を丁寧に巻き込むことで成果を高められるはずが、過度に抱え込みすぎてかえってストレスになってしまうこともあり得ます。また、全体を見渡すあまり、一部の人と深く踏み込んだ関係を築きにくいというジレンマを感じる人もいます。
ただし、こうした課題はあくまで「包含」という才能を持っているからこそ起こり得る面です。うまくマネジメントし、才能を生かした役割を担えれば、誰一人取り残さないチームづくりや、多様なアイデアの創出に大きく貢献できることは間違いありません。
2. 「包含」の才能を本当の強みに進化させるための行動と思考法
(1)境界線を意識した“巻き込み”を実践する
包含の人が抱えがちな悩みのひとつに、「全員の意見を聞こうとしすぎて、結局まとまりがつかなくなる」ケースがあります。誰も置いていかない姿勢は素晴らしい強みですが、巻き込みにもある程度の“範囲”や“タイミング”が必要です。たとえば、プロジェクトの初期段階では多様な意見を募り、方向性が決まったらあえて決定メンバーを絞って実行フェーズに進むなど、状況に応じた境界線の引き方を意識してみると良いでしょう。
(2)自分のリソースを可視化し、適切に配分する
包含を持つ方は、自分から相手に近づいて「巻き込む」ことに喜びを感じます。しかし、その「喜び」を優先しすぎると、自身のエネルギーを必要以上に使いすぎるリスクが生じます。チームやプロジェクトを支える力を維持するためにも、あえて「ここまでなら私はサポートできる」というリソースの線引きを明確にしておくのがおすすめです。自分自身の余力を把握し、キャパシティをコントロールすることで、長期的にも安定して周囲を巻き込めるようになります。
(3)意見を聴くだけでなく、役割や責任分担も促す
包含が強い人は、多様な立場や考えを取り入れることに喜びを感じます。しかし、それがチームの成果につながるためには、単に「たくさんの意見を拾う」だけで終わらず、誰が何を担うのかを整理し、合意を得るプロセスが欠かせません。発言や役割を整理し、責任分担を明確にすることができると、全員が「自分もチームの一員なのだ」という当事者意識を持ちやすくなり、それが結果的にチーム全体の能力を最大化することにつながります。
(4)多様性の価値を“ストーリー”として伝える
「包含」の資質を本当の強みに変える秘訣のひとつは、多様性を尊重する姿勢や意義を、周囲に分かりやすい“ストーリー”として共有することです。たとえば、「こんな立場や視点の人が加わったおかげで、アイデアが飛躍的に広がった」などの具体的な事例をストーリー化して伝えると、みんなが「含まれることの価値」に納得しやすくなります。あなただけが「みんなを巻き込みたい」と思っていても、周囲がそれを理解していないと、逆に「時間がかかりすぎる」「混乱する」とネガティブに捉えられがちです。多様性の恩恵を物語として語ることで、包含の才能は組織の真の力になるのです。
3. もっと深く自分の強みを理解しよう
ここまで包含の資質を取り上げ、その才能を「本当の強み」に進化させるためのポイントをいくつか紹介しました。しかし、ストレングス・ファインダーの大きな魅力は「自分の持つ資質の組み合わせ」を通して、オンリーワンの強みを発見できる点にあります。同じ「包含」の資質を持っていても、たとえば「共感性」「社交性」「個別化」など、他に強い資質が掛け合わさることで、その強みの発揮され方は全く異なるものになるからです。
実際、ストレングス・ファインダーで測定できる34の資質は、あくまで「入り口」に過ぎません。自分の強みをより深く理解したいのであれば、なぜ自分は含まれない人を見ると気になってしまうのか、全員の意見を聞きたいと思うとき、どのようなプロセスで判断をするのか、といった掘り下げが必要になります。さらに、「自分の弱み」や「自分が苦手とする資質の領域」とのバランスを考えることも大切です。
自分の資質を深掘りするには、専門的にトレーニングを積んだストレングスコーチのサポートが有効です。コーチとの対話を通して、「なぜ自分がそのように考えるのか」「どんなときに自分の才能が最も生きるのか」を客観的に整理できるからです。日常の中では見落としがちな思考のクセや行動パターンを一緒に振り返り、強みをさらに強くする道筋を描くことができます。
私自身、Gallup認定ストレングスコーチとして多くの方のコーチングを行ってきましたが、受ける前と後ではご自身の才能に対する理解が大きく変わったと感じる方がほとんどです。これは決して大げさな表現ではなく、一度でも「自分の才能が自然に発揮される感覚」「自分が活躍できるフィールド」を体感すると、その後の行動や選択、さらにはキャリアデザインまで大きく変化していくのです。
もし、この記事を読んで「包含」の才能に興味を持った方、あるいは自分が持つ他の資質との掛け合わせを知りたいと思われた方は、ぜひストレングスコーチングを検討してみてください。独りで考えるだけでは見えにくい部分にこそ、あなたならではの輝きが眠っているかもしれません。