大学生から始める狩猟記録 #3 いざ、講習へ

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 試験応募のすったもんだが解決して、僕の狩猟免許取得までのスケジュールは決まった。
 その年の最後の試験に応募したものだから、気がつけば夏休みは終わっており、秋学期に突入。
 大学の勉強と並列して、私は試験の勉強を行った。
 とはいえ教本は全部で340ページ。私が取るのは罠の免許なので、当然網や銃の項目は必要ないが、それでも結構なボリュームだ。
 一人で要点を探し出して勉強することも考えたが、せっかく講習があるのなら、そこできっちり学んでからの方が勉強しやすそう。
 というわけで講習の日までは、たまに教本をパラパラ読んだり、問題集を数問解くだけ。
 そして講習当日。休みの日にしては早い時間に起きて、会場へと向かった。
 入り口で罠のカタログやらハンターさんのインタビューやらを貰い、適当な席に着く。


 席に座って貰った資料を流し読みしていると、二列先に一人の男性がやってきた。歳は僕と近そうだ。
 もちろんここに来る人は全員初対面だし、話したこともなかったはず。
 それなのに僕は彼に見覚えがあった。
 誰だろうと考えるが、こんな所に来るんだから狩猟関係で見たに決まってる。すぐに思い出した。
 この人、私はNHKのはがきをもって、林務事務所で応募手続きをしていた時に駆け込んできた人だ。
 私と全く同じで、学生で住民票を移しておらず、手続きが出来なくて困っていた。
 隣で受付の方に私と同じアドバイスをされて、住んでることを証明できるものを持ってきます、と言って帰っていった。
 僕ですら期限的にギリギリだったので、果たして間に合うかどうか。そんなことを考えていたのを覚えてる。
 無事手続き出来たんだ、そう思ってホッとしていると講習が始まった。


 午前中は狩猟に関する法令と狩猟の知識、そして鳥獣の判別。いわゆる座学だ。
 特に法令に関しては自分の専門外の話なので、自分で勉強する時も何となく避けてきた項目。ここできちんと学ばなければ。
 とはいえ、これはあくまで狩猟免許を取得するための講習。狩猟のための講習とは、また意味合いが違ってくる。
 講師の方曰く、『実際の狩猟の知識や技術は、免許を取ってから実践で覚えて下さい。これは狩猟免許を取るための講習です』だそうだ。
 そんなわけで試験に出てきそうな要点だけを教えられ、出てこないであろう場所は飛ばしていった。
 そしてその後は狩猟鳥獣の判別。どの鳥獣を獲って良くて、その場合はどんな名前なのかを覚える必要がある。
 まず日本では使う猟具によって、獲っていい鳥獣が違ってくる。
 なので本来、罠の免許を取る予定の私が、銃や網で獲れる鳥獣を知っても意味がない。
 ただ講習では、全員まとめて鳥獣の判別知識を教わった。
 その教え方も面白く、非狩猟鳥獣は名前すら教えず見た目の特徴だけで終わらせたのだ。
 というのも、実際の試験では狩猟鳥獣は名前を書かなければならないが、そうでない非狩猟鳥獣は名前を書いてはいけない。
 そんな中で非狩猟鳥獣の名前まで教えたら、こんがらがって余計に迷う。
 だから名前は覚えないで、とのことだった。
 そんな前置きを話してから、講習が始まる。
 正直獣は外見の違いが分かりやすくて、すぐに覚えられた。
 タヌキとアライグマがよく似ているという話もあり、尻尾の形で判断するらしい。
 ただ個人的には、尻尾云々以前に灰色のタヌキは見かけないし、茶色いアライグマも見かけない。
 実践の際はともかく、試験で迷うことはないだろう。
 他の獣もとても分かりやすくて、強いて言えばリスの分別に少し迷ったくらいだった。
 獲っていいかどうかの判断が出来れば、そんな難しい話ではない。
 問題は鳥の方だ。
 まぁ自分には関係ないが、興味深くはあるのでメモをして聴くことにした。
 鳥の判別の中で特に難しいと判断したのは、カモの識別だ。
 同じ類の鳥のため似たようなシルエットが多い中、手がかりはオスの色くらい。
 似たような色もある中、獲っていい鳥に関しては名前も覚えなければならない。
 他の鳥に関しても、似た見た目をしたものがいくつか見られた。
 これは、網や銃の免許を取る人は大変なんだろうな。
 そう思いながら、講師の話を聞いていた。
 さぁそんな中、講師の方はどんな教え方をするのかといえば

『ホシハジロは左を向いています』
『スズメとニュウナイスズメは背景と羽数で判別してください』
『ヒヨドリは後ろに人がいます』

 ………いいのか、それで。
 実際に試験で使うイラストを指差しながら解説する講師に、僕は思わず目を細めた。
 重ねて言うが、これは免許を取るための講習だ。そう考えれば、これが一番合理的なんだろう。
 馬鹿正直に外見だけでの判別するのは、普通に難しすぎる。
 それに中には鳥の修正を表したイラストもあったので、実践の面でもためになりそうだった。
 実際ヒヨドリは公園にもいるそうなので、人がいるのは当たり前とも言える。
 自分もいつか網や銃を持つなら頑張らないとな。
 そんな先のことを考えながら、午前中の講習は終わった。
 その『先のこと』は意外にも早く訪れたのだが、それはまた別のお話。


 午後の講習は猟具の説明で、取る免許によって部屋を分けるらしい。
 とりあえず近くのコンビニでお昼ご飯を買おうと、講習会場を出た。
 コンビニは、道路を挟んだ会場の向かい側。そしてその隣には家電量販店のJoshinがあった。
 知らない人向けに解説すると、家電量販店には特撮作品のおもちゃも販売している。
 特撮作品が好きな僕は、お昼ご飯を買うことも忘れて隣のJoshinに吸い込まれた。
 何となく店内を彷徨いているうちに、気がつけば当時放送してたの仮面ライダーのコレクションアイテムに手が伸びてしまう。
 会場に戻る僕の手には、お昼ご飯ではなくそのコレクションアイテムが握られていた。
 こうしてお昼ご飯代を溶かした僕は、みんながご飯を食べてる中、既に分けられた部屋の端で買ったアイテムを開封することにした。


 そして始まった午後の講習。
 罠免許を取る僕達の前に、様々な種類の罠が並べられた。
 実際の試験では、これらの罠の内法的に使って良いもの(法定猟具とも言う)と悪いものを判断。さらに使って良いものの内から一つを選んで、それを仮設するもいうものだ。
 罠の中には筒式イタチ捕獲器というものがあり、これはストッパーがあるものとない物があるので、そこは気をつけなければならない。
 仮設する罠は自由だが、ほとんどの人が箱罠を選ぶ。
 というのも、罠猟でよく使うのはこの箱罠とくくり罠だ。
 ただくくり罠は、アンカー(大木などのワイヤーを巻き付けられるもの)が必要になってくる。
 室内である試験会場にそんな物があるわけないので、必然的に箱罠を選ぶことになるのだ。
 両開きの箱罠は、組み立て手順そのものは簡単だった。
 ただ設置する時、罠の扉はどう固定するのかというと、扉に繋がる金具をトリガーに繋がった金具に引っ掛けるだけ。
 言ってしまえば、固定が不安定なのだ。少しズレるだけで扉が閉まってしまう。
 手先が不器用な私は、苦戦しながらも何とか設置出来るようになった。
「何でこんな不安定なんですかね?」
 そうぼやく僕に講師の方が言った。
「不安定だからこそ、小動物が踏んだだけで作動するんだよ。しっかりロックしたら作動しないって」
 そりゃそうかもしれないけどさ………
 文句を言ってても始まらないので、何度も試して感覚を覚えた。
 他の試験は帰ってからいくらでも復習できるが、罠の仮設だけは本物の罠が無ければ実際に仮設して復習することは出来ない。
 ただ当時の私に箱罠を用意することは無理なので、感覚だけはここでしっかり覚えるしかないのだ。


 そんなこんなですっかり日が傾く時間になり、全ての講習が終わった。
 最初はどこをどう覚えていいか分からなかったが、講習のおかげで覚えなければならない知識もだいぶ絞られて、これならいける。
 とりあえず帰ってから復習しようと、私は帰りの駅へと向かった。
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