1.ルールを変えれば行動が変わる
組織の構造改革において、おそらく最もシンプルでありながら、実際には最も難しいのが「ルールを変える」ことではないでしょうか。
「ルール(rule)」という言葉の語源は、ラテン語で「真っすぐな棒」や「定規」を意味する言葉に由来するとされています。
そこから転じて、物事を測るための「基準」や「規範」を指すようになり、さらに英語では「支配」や「規則」といった意味を持つようになりました。
つまり、ルールを変えるということは、組織における基準や規範そのものを変えることを意味します。
そして、働く人は皆、そのルールに従って行動している以上、ルールが変われば行動も変わる。
言い換えれば、ルールを変えるとは「行動を変えること」に直結するのです。
2.ルールは人を縛るものなのか
しかし、この「ルール」という言葉には、働く側からすると、自分たちの自由を縛る鎖のようなイメージがつきまといます。
私自身も、会社員として働いていた頃は、ルールによって行動が制限され、自分の力を発揮できないと感じたことがありました。
ただ、いま振り返ると、この捉え方は一面的だったとも感じています。なぜなら、社会という大きな枠組みで見れば、すべての秩序はルールによって成り立っているからです。
秩序とは、人や物事の動きが一定の基準や関係性によって整えられ、予測可能で安定した状態にあることを指します。
そしてこの秩序は、ルールが守られていることを前提に成立しています。
3.ルールがあっても機能しなければ意味がない
例えば、世界中の多くの人が平和を望んでいるにもかかわらず、戦争はなくなりません。
ロシアとウクライナの戦争も、その一例です。国際法や国連、国際刑事裁判所といった、平和を維持するためのルールや制度が存在していても、それだけでは秩序を守りきれない現実があります。
つまり、ルールは存在するだけでは不十分であり、「守られること」「機能すること」によって初めて意味を持つのです。
そしてこれは、組織においてもまったく同じことが言えます。
また、ルールは万能ではありません。制度として存在していても、時代や状況の変化に適応できなければ、機能不全に陥ります。
一方で、ルールが進化することで、人間の限界を補い、より正確な判断につながることもあります。例えば、サッカーにおけるVAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)の導入は、その象徴的な例でしょう。
人の目だけでは判断が難しい場面をテクノロジーで補完することで、より公平で正確な判定が可能になりました。
このように、ルールは固定されたものではなく、常に変化し続けるべきものです。
4.失敗という経験から新しいるルールが生まれる
私自身の現場でも、ルールの変化を何度も経験してきました。以前、株式会社木下の介護で入居相談員をしていた際、長期的にフォローしていたご夫婦の入居案件がありました。
当初はキャンペーン適用で入居金が二名で400万円でしたが、1年後にはキャンペーンが終了し、800万円へと変更されていました。
そのことに気づかず対応を続けてしまったのは、私の明確な失敗です。
しかし結果的には、これまでの丁寧なフォローと長期入居という価値が評価され、特例として400万円での契約が認められました。
そしてその後、この価格が“事実上の基準”として定着していったのです。
また、千葉県の総合病院へのアプローチを強化した際には、競合他社のショートステイ料金が1泊2日7,000円であることを知りました。
当時、私たちは13,000円で案内していたため、この差は大きな障壁となっていました。そこで料金の見直しを提案し、9,000円まで引き下げた結果、病院からの問い合わせが増加し、成果につながりました。
そしてこの価格もまた、新たな基準として定着していきました。
5.約束は守るもの。ルールは変えるもの。
これらの経験から言えるのは、ルールは一度決めれば永続するものではなく、時間の経過とともに形骸化しやすいということです。
そして、環境や状況が変化したとき、従来のルールに固執することは、むしろ組織にとってマイナスに働く可能性があります。
今回、挙げた事例は、いずれも失敗から得た学びです。
だからこそ私は、ルールは常に見直し、アップデートし続ける必要があると考えています。
ただし、何のきっかけもなくルールを変えることは簡単ではありません。
多くの場合、その契機となるのは「失敗」です。
組織においても同様に、失敗を放置するのではなく、振り返り、省察し、そこから学びを得ることが重要です。
そして、時代や環境を客観的に捉えたうえで、形骸化したルールを見直すことこそが、組織が前進するために求められているのではないでしょうか。
Fukushi Vision Group株式会社
医療・介護・福祉経営コンサルティング
代表取締役 塚本洋介
社会福祉士│福祉マネジメント修士