日々の仕事やネット、日常の会話で
「どうしてこの人は、自信に満ちあふれた発言ばかりなのだろう」
「なぜそこまで言い切れるんだろう」
と感じた経験はないでしょうか。
私自身、自分の勤め先や
社外の方とやり取りをした際に、
強い違和感を覚えたことが何度もあります。
その方は、
「これは必ずこうなります」
「こうすれば100%うまくいきます」
という表現をよく使っていました。
もちろん経験則からそう考えているのかもしれません。
しかし、具体的に話を聞いていくと根拠やデータが示されることは少なく、「なぜそう言い切れるのか」が分からないことも多々ありました。
仕事の世界では、相手の状況や環境、
組織文化、市場の変化によって結果が変わることは珍しくありません。
そのため、本来であれば
「可能性が高いです」
「私の経験ではそうでした」
「こういう傾向があります」
という表現になることが多いものです。
それにも関わらず、断定的な言葉が繰り返されると、「本当に客観的に見られているのだろうか?」と疑問を感じることがあります。
こうした現象は、単なる性格の問題だけではなく、
実は、人間の脳に備わっている「認知バイアス」が関係していることがあります。
今回は、ビジネスやネット、
日常生活でよく見られる
代表的な認知バイアスを紹介しながら、
断定的な発言の背景とリスクについて考えてみます。
認知バイアスとは?
認知バイアスとは、
脳が効率よく判断するために生じる
「思考のクセ・偏り」のことです。
私たちは毎日膨大な情報を処理しています。
そのため脳は、すべてを丁寧に分析するのではなく、
経験や先入観を使って素早く結論を出そうとします。
普段の生活では役立つ仕組みですが、
ときに思い込みや誤った判断を生む原因にもなります。
① 素朴実在論(Naive Realism)
➡️ 「自分は客観的に見ている」という思い込み
人は誰でも、
「自分は事実をそのまま見ている」
と思いやすい傾向があります。
そのため、自分と異なる意見を持つ人を見ると、
「相手の知識不足だ」
「相手が間違っている」
と考えてしまうことがあります。
ビジネスでの例
ベテラン社員が、
「俺のやり方が一番効率的だ」
と考え、新しい提案を頭ごなしに否定する。
ネットでの例
自分と異なる意見を見ただけで、
「まともな知識がない人だ」
と決めつける。
日常での例
「普通はこうするでしょ?」
が口癖になり、
自分の常識を相手にも求めてしまう。
② 確証バイアス(Confirmation Bias)
➡️「見たいものだけを見る」思考
人は、自分の考えを支持する情報を集めやすく、
反対の情報を軽視する傾向があります。
ビジネスでの例
「この企画は成功する」
と思い込み、都合の良いデータだけを集める。
ネットでの例
「○○は危険だ」
と信じると、その意見を裏付ける情報ばかり検索する。
日常での例
「あの人は自分を嫌っている」
と思い込むと、相手の何気ない態度まで
悪意として受け取ってしまう。
③ ダニング=クルーガー効果
➡️ 知識が少ないほど自信満々になりやすい
能力や知識が十分ではない段階ほど、
自分の理解度を過大評価しやすい現象です。
本当に詳しい人ほど
例外や複雑さを知っているため慎重になります。
ビジネスでの例
本を1冊読んだだけで、
「マーケティングは分かりました」
と言い切る。
ネットでの例
専門家が
「一概には言えません」
と説明している横で、
「原因はこれです。100%そうです」
と言い切る投稿が注目を集める。
日常での例
経験の浅い人がベテランに向かって、
自信満々にアドバイスをしてしまう。
なぜネットでは断定的な発信が人気なのか
SNSや動画サイトでは、
「絶対に成功する方法」
「これだけで解決」
といった発信をよく見かけます。
理由は単純です。
断定的な言葉は目立つからです。
「可能性があります」
よりも、
「絶対です」
のほうが印象に残ります。
「状況によります」
よりも、
「これが正解です」
のほうが分かりやすく感じます。
しかし、本当に専門性が高い分野ほど、
簡単に断定できないことが少なくありません。
医療、介護などは、その代表例です。
経験豊富な専門家ほど、
「ケースによります」
「個人差があります」
「現時点の情報では」
という表現を使うことがあります。
それは自信がないからではなく、
多くの例外を知っているからです。
断定的な表現に潜むリスク
① 相手の状況を無視しやすい
人によって環境も事情も違います。
それにもかかわらず、
「絶対にこうなる」
と言い切ると、個別性が見えなくなります。
② 間違いを修正しにくくなる
強く断言した人ほど、自分の考えを修正しにくくなります。
新しい情報が出ても、
「いや、私は正しい」
となりやすいことがあります。
③ ハラスメントにつながることがある
職場では、
「普通はこうする」
「絶対できるはずだ」
「なぜできないの?」
という言葉が、相手を追い詰めることがあります。
本人は指導のつもりでも、
受け手は否定や圧力として感じるかもしれません。
④ 誤情報が広まりやすい
断定的な発信は拡散されやすい特徴があります。
しかし、拡散されることと正しいことは別です。
強い言葉ほど注目を集めるため、誤った情報も広がりやすくなります。
⑤ 信頼を失うことがある
最初は頼もしく見えても、
断言した内容が外れ続ければ信頼は失われます。
長く信頼される人ほど、
根拠を示しながら慎重に説明する傾向があります。
「絶対こうなる!」と言い切る人に違和感を覚えたら【認知バイアスを知る】まとめ
認知バイアスは誰にでもあります。
問題なのは、思い込みそのものではなく、
自分の考えが絶対に正しいと信じ込み、
それを相手に押し付けてしまうことです。
職場で起きるハラスメントや人間関係のトラブルの背景には、
・自分のやり方が正しいという思い込み
・相手が間違っているという決めつけ
・経験を一般化しすぎること
が隠れている場合があります。
もし、
「普通はこうだ」
「絶対そうなる」
という言葉を頻繁に使う人に出会ったら、その言葉をそのまま受け止めることには慎重になりたいものです。
そして、自分自身の発言に対しても、
「本当にそうだろうか?」
「別の見方はないだろうか?」
と問いかける習慣を持つことが大切です。
主観の押し付けがエスカレートすると、
それは立派なパワーハラスメントになります。
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