店舗を開業するとき、収支計画を作る場面があります。
売上はいくら必要か。
家賃はいくらまでなら払えるか。
人件費はどのくらいかかるか。
借入返済後にいくら残るか。
こうした数字は、専門家に相談しながら作ることもできます。
もちろん、それ自体は悪いことではありません。
ただ、開業前の収支は、
一度作って終わり
ではなく、
条件を変えながら何度も確認するもの
だと思っています。
今回は、店舗開業前の収支を、自分でも数字を動かしながら確認した方がいい理由について整理します。
開業前の数字は「正解を1回出すもの」ではない
開業前の計画では、
「この条件なら月商はいくら」
「この客数なら利益はいくら」
という数字を出します。
でも、実際の開業準備では条件がどんどん変わります。
たとえば、
・候補物件が変わる
・家賃が変わる
・客単価を見直す
・営業時間を変える
・スタッフ人数を変える
・時給を変える
・原価率を見直す
・借入額が変わる
といったことがあります。
つまり、
最初に作った収支計画が、そのまま最後まで使えるとは限りません。
だからこそ、
条件が変わるたびに、自分で数字を動かして確認できること
が大切になります。
「家賃が5万円高くなったら?」をすぐ試せる
たとえば、候補物件が2つあったとします。
A物件
家賃20万円
B物件
家賃25万円
B物件の方が立地は良い。
でも、毎月5万円高くなります。
このとき、
「5万円くらいなら大丈夫そう」
と感覚で決めるのではなく、
家賃を20万円から25万円に変えて、営業利益や黒字ラインがどう変わるか
を確認します。
すると、
「この5万円を払うには、1日何人くらい客数が必要になるのか」
まで見えてきます。
こういう比較をすぐできるのが、自分で数字を動かすメリットです。
客数を1人変えるだけでも収支は動く
店舗では、
客単価 × 客数 × 営業日数
が売上の基本になります。
たとえば、1日20人来る想定をしていたとしても、
19人ならどうか。
18人ならどうか。
22人ならどうか。
少し変えるだけでも、月単位では差が出ます。
だから、
想定通りの客数が来る前提だけで計画しない
ことも重要です。
自分で数字を動かせれば、
「客数が少し落ちても黒字か」
「どこまで下がると赤字になるか」
まで確認できます。
客単価を上げれば必ず解決するわけでもない
収支が厳しいとき、
「客単価を上げればいい」
という考え方もあります。
確かに、数字上は客単価を上げると売上は増えます。
ただし、
現実にその価格でお客様が来るか
という別の問題があります。
そのため、
・客単価を上げる
・客数を増やす
・原価を見直す
・人件費を調整する
・家賃を抑える
など、複数の条件を組み合わせながら確認した方が現実的です。
一つの数字だけで帳尻を合わせるのではなく、
どの条件なら無理なく成立するか
を見ることが大切です。
人件費も「月○万円」だけでは分かりにくい
スタッフを雇う場合は、人件費も条件によって動きます。
たとえば、
人数 × 時給 × 勤務時間 × 勤務日数
まで分けて考えると、
「スタッフを1人増やしたら?」
「時給が100円上がったら?」
「勤務時間を1時間増やしたら?」
といった確認ができます。
月の人件費を一つの固定金額で置くだけよりも、
どの条件でその金額になっているか
が分かる方が、後から見直しやすくなります。
原価率が少し上がったときも確認する
飲食店なら食材費。
美容院ならカラー剤や施術用品。
ネイル・エステなら材料や消耗品。
こうした原価も、ずっと同じとは限りません。
仕入価格が上がることもあります。
そこで、
原価率が少し上がっても利益が残るか
を試しておきます。
理想的な数字だけで成立する計画よりも、
少し条件が悪くなっても成り立つ計画の方が余裕があります。
黒字になるかだけではなく「どれくらい余裕があるか」を見る
収支を確認するとき、
「黒字です」
だけを見るのではなく、
黒字ラインからどれくらい余裕があるか
まで見ておきたいところです。
たとえば、
想定客数:1日20人
黒字ライン:1日19人
なら、一応黒字です。
でも余裕は1人分しかありません。
一方、
想定客数:1日20人
黒字ライン:1日14人
なら、6人分の余裕があります。
同じ「黒字」でも、計画の安定度はかなり違います。
営業利益が出ても、そこで終わりではない
借入をして開業する場合は、
営業利益が出たあとに返済があります。
そのため、
営業利益
→ 借入返済
→ 返済後に残る金額
まで確認します。
営業利益が黒字でも、
返済後にほとんど残らないなら、
設備故障や売上低下などへの余裕は小さくなります。
だから、
店として利益が出るか
だけではなく、
実際に返済した後にどれくらい残るか
まで見ることが大切です。
初期投資の回収も確認する
店舗を開業すると、
・保証金
・敷金
・内装費
・設備費
・厨房機器
・美容機器
・家具
・備品
など、最初にまとまったお金がかかります。
そのため、
「毎月黒字になるか」
だけではなく、
最初に使ったお金をどのくらいの期間で回収できそうか
も確認しておきたいところです。
利益が出ても、初期投資が大きすぎれば回収には時間がかかります。
ここも条件を変えながら見ると、物件や設備の選び方が変わることがあります。
専門家に相談することと、自分で確認することは別の話
専門家に相談することが悪いわけではありません。
融資や税務、契約、事業計画など、
専門的な確認が必要な場面もあります。
ただ、
自分の店の数字を自分で動かして確認すること
とは役割が違います。
たとえば、
「この条件なら利益はいくらです」
と結果だけ聞くよりも、
自分で、
家賃を変える。
客数を変える。
原価率を変える。
時給を変える。
と試してみた方が、
どの数字が収支に大きく影響するのか
が分かります。
その理解があると、物件や営業時間、スタッフ配置なども考えやすくなります。
一度作った計画書ではなく「何度も試す道具」にする
開業前の収支は、
完成した1枚の表を作ることよりも、
条件を何度も変えて試すこと
に意味があります。
たとえば、
「この物件ならどうなる?」
「スタッフを1人増やしたら?」
「客数が少なかったら?」
「原価が上がったら?」
「返済額が増えたら?」
と、その都度確認します。
こうして数字を動かしていくと、
自分の店がどんな条件に弱いのか
も見えてきます。
手間なしラボが作っているのは「答え」ではなく「確認するための道具」
手間なしラボでは、
店舗を開業する人に代わって、
「この物件なら絶対大丈夫」
「この売上なら成功する」
という答えを出すものは作っていません。
作っているのは、
自分で条件を入れて、自分で比較できる道具
です。
Excelの黄色い入力欄に、
・客単価
・客数
・営業日数
・原価
・人件費
・家賃
・固定費
・生活費
・借入返済
などを入力して、
数字を変えるたびに結果を確認できます。
見るのは、
・月商
・営業利益
・黒字に必要な客数
・想定客数との差
・返済後に残る金額
・初期投資の回収目安
などです。
開業前に、
一度計算するためではなく、何度も試すため
に使ってもらうことを想定しています。
飲食店向け
▼ 飲食店 出店前収支シミュレーター
## 美容院向け
▼ 美容院 出店前収支シミュレーター
## ネイル・エステサロン向け
▼ ネイル・エステサロン 出店前収支シミュレーター
店舗開業前の数字は、
誰かに一度作ってもらって終わり
ではなく、
自分で条件を変えながら、納得できるまで確認する
ために使うものです。
物件を決める前。
借入を決める前。
スタッフを雇う前。
条件が変わるたびに数字を動かして、
「この条件で本当に続けられるか」
を確認してみてください。