店舗を開業するとき、融資の申込みなどで創業計画書を作る場面があります。
その中でも、意外と手が止まりやすいのが、
「売上はいくらになるのか」
「経費はいくらかかるのか」
「最終的にいくら利益が残るのか」
という数字の部分ではないでしょうか。
「とりあえず月商200万円くらい」
と書くことはできます。
ただ、その数字が現実的なのかを自分自身で説明できなければ、出店後の計画としても不安が残ります。
そこで今回は、店舗開業前に考えておきたい「売上・経費・利益」の組み立て方を整理します。
売上は「月商○万円」から考えない
まず、売上を考えるときに、
「月商200万円を目標にする」
というところから始めると、数字の根拠が見えにくくなります。
店舗型ビジネスなら、もう少し細かく分解して考える方が分かりやすくなります。
たとえば飲食店なら、
客単価 × 1日客数 × 月間営業日数
で、おおよその月商を考えられます。
客単価1,200円、1日70人、月25日営業なら、
1,200円 × 70人 × 25日
= 月商210万円
です。
これなら、
「月商210万円を目指します」
だけでなく、
「客単価1,200円で、1日70人を想定しています」
と具体的に考えられます。
美容院やサロンでも考え方は同じ
美容院なら、
施術客単価 × 1日来店客数 × 営業日数
を基本にできます。
さらに店販を行う場合は、
・シャンプー
・トリートメント
・スタイリング剤
などの売上も加わります。
ネイル・エステサロンなら、
施術単価 × 1日の施術人数 × 営業日数
が基本になります。
物販を行う場合は、その売上も別に考えます。
つまり、
「月商はいくら欲しいか」ではなく、「その月商はどうやって作るのか」まで分解する
ことがポイントです。
次に「売上に連動して増える費用」を確認する
売上が増えれば、そのまま利益が増えるわけではありません。
飲食店なら食材や飲料の仕入れ。
美容院なら薬剤やヘアケア用品。
ネイル・エステなら施術材料や化粧品。
さらにカードやQR決済を利用すれば、決済手数料も発生します。
こうした費用は、売上と一緒に増えやすい費用です。
そのため、
売上 − 売上に連動する費用
まで見ておく必要があります。
たとえば売上が100万円増えても、その100万円がそのまま利益になるわけではありません。
毎月固定でかかる費用も整理する
次に確認したいのが、売上に関係なく毎月発生する費用です。
代表的なのは、
・家賃
・人件費
・水道光熱費
・通信費
・予約システムや集客媒体
・広告費
・その他の固定費
などです。
特に見落としやすいのが人件費です。
飲食店であれば、
人数 × 時給 × 1日の勤務時間 × 勤務日数
まで分解すると、かなり現実的な数字になります。
「アルバイト代は月30万円くらい」
とまとめて置くより、
「3人、時給1,300円、1日5時間、月20日」
と分解した方が、条件を変えたときの影響も確認できます。
自分の生活費も入れて考える
小規模店舗の開業では、
オーナー自身のお金
も忘れないようにしたいところです。
店として黒字でも、自分の生活費が残らなければ事業を続けるのは難しくなります。
そのため、
「店として利益が出るか」
だけではなく、
自分の生活に必要な金額まで含めて考える
方が現実的です。
たとえば、
営業利益30万円
と出ても、自分の生活費として25万円必要なら、残る余裕はそれほど大きくありません。
借入があるなら「返済後」まで確認する
開業時に融資を利用する場合は、毎月返済が発生します。
そのため、
営業利益がいくらか
だけで終わらせず、
返済後にいくら残るのか
まで確認しておくと安心です。
たとえば、
営業利益:30万円
毎月返済:10万円
なら、
返済後に残る金額は20万円です。
この20万円で、
・予想外の出費
・設備の修理
・売上が落ちた月
・追加の仕入れ
などに対応できるかも考えておく必要があります。
「黒字ライン」まで出すと計画が分かりやすくなる
さらに一歩進めるなら、
どのくらい売れば赤字にならないのか
も確認しておくと便利です。
これが、いわゆる損益分岐点・黒字ラインです。
店舗の場合は、
「月商いくらで黒字になるか」
だけでなく、
「1日何人来れば黒字になるか」
まで落とし込むと、かなり分かりやすくなります。
たとえば、
想定客数:1日8人
黒字ライン:1日6.2人
なら、
約1.8人分の余裕があります。
一方で、
想定客数:1日8人
黒字ライン:1日7.8人
なら、一応黒字でも余裕はほとんどありません。
この違いは、月商だけを見ているとなかなか見えません。
1つの数字だけでなく、条件を変えて確認する
開業前の計画では、
「この条件なら黒字になる」
という1パターンだけを見るより、
条件を少し変えて何度か試す
ことが大切です。
たとえば、
・客数が1日2人減ったら?
・家賃が5万円高くなったら?
・原価率が3%上がったら?
・時給が100円上がったら?
・客単価を500円上げたら?
といった形です。
条件を変えてもある程度利益が残るなら、比較的余裕のある計画と言えます。
逆に、少し条件が悪くなっただけで赤字になるなら、出店前にもう一度計画を見直す材料になります。
創業計画書を書く前に、一度自分の数字を整理する
創業計画書の数字は、書類を完成させるためだけのものではありません。
本来は、
「この店は本当に成り立つのか」
を自分で確認するための数字でもあります。
まず、
1. 客単価
2. 1日の客数
3. 営業日数
4. 売上に連動する費用
5. 家賃・人件費などの固定費
6. 自分の生活費
7. 借入返済
を整理し、
そこから、
売上 → 営業利益 → 返済後に残る金額 → 黒字に必要な客数
まで確認してみると、計画がかなり具体的になります。
手間なしラボでは業種別の出店前シミュレーターを用意しています
手間なしラボでは、店舗開業前の数字を自分で整理できるExcelシミュレーターを用意しています。
黄色の入力欄に自分の想定条件を入れると、
・月商
・営業利益
・黒字に必要な客数
・現在の想定客数との差
・返済後に残る金額
・初期投資の回収目安
などを確認できます。
創業計画書そのものを作成するツールではありませんが、
創業計画書を書く前に、売上・経費・利益の想定を整理するための一次シミュレーション
として使えます。
▼ 飲食店 出店前収支シミュレーター
▼ 美容院 出店前収支シミュレーター
▼ ネイル・エステサロン 出店前収支シミュレーター
創業計画書に数字を書く前に、
「なぜこの売上になるのか」
「なぜこの利益が残るのか」
を、一度自分の条件で確認してみてください。