日常生活の中で、「あの人はメンタルが強いよね」と言われる人がいます。
どんな状況でも落ち着いていて、多少のトラブルが起きても動じない。
人から何か言われてもあまり引きずらない。
そんな姿を見ると、「あの人は特別に心が強い人なんだろう」と思ってしまうことがあります。
しかし、実際のところ「メンタルが強い人」というのは、決して何も感じない人でも、落ち込まない人でもありません。
むしろ多くの場合、感情はきちんと感じながらも、それに振り回されすぎない人のことを指しているのだと思います。
私たちは誰でも、悲しんだり、落ち込んだり、怒ったりします。
嫌なことがあれば心がざわつくし、誰かの言葉に傷つくこともあります。
メンタルが強いと言われる人も、それは同じです。
違いがあるとすれば、その感情との付き合い方なのかもしれません。
メンタルが強い人は、自分の感情を否定しません。
「こんなことで落ち込んではいけない」「怒るのは弱い証拠だ」などと、自分の気持ちを押し込めようとしないのです。
むしろ、「ああ、自分はいま少し傷ついているな」「今日はちょっと疲れているな」と、自分の状態をそのまま受け止めます。
感情を無理に抑え込まないからこそ、必要以上に長く引きずらないのです。
また、出来事と自分自身を切り離して考えることができるのも特徴のひとつです。
たとえば仕事で失敗をしたとき、「自分はダメな人間だ」と考えてしまうと、心はどんどん苦しくなります。
しかしメンタルが強い人は、「今回はうまくいかなかった」「次はやり方を変えてみよう」と考えます。
失敗という出来事を、自分の価値そのものと結びつけないのです。
人間関係でも同じです。
誰かに嫌われたかもしれないと感じたとき、「自分には価値がない」とまで考えてしまうと、心はとても消耗してしまいます。
しかしメンタルが強い人は、「あの人とは合わなかったのかもしれない」「そういう考え方の人もいる」と、ある程度距離を持って受け止めます。
出来事を自分の存在そのものにまで広げない。
この感覚は、心を守るうえでとても大切なのだと思います。
さらに、メンタルが強い人は、すべてをコントロールしようとしません。
世の中には、自分の努力で変えられることと、どうしても変えられないことがあります。
他人の気持ち、過去の出来事、世の中の流れなどは、自分の力ではどうにもならないことが多いものです。
それを無理に変えようとすると、心はどんどん疲れてしまいます。
メンタルが強い人は、「自分が変えられること」と「変えられないこと」をある程度区別しています。
そして変えられないものに必要以上のエネルギーを使わないのです。
そしてもう一つ大切なのは、回復する力です。
メンタルが強いというと、まるで全く落ち込まない人のように思われがちですが、実際にはそうではありません。
人は誰でも落ち込みます。問題は、その後どう戻ってくるかです。
少し休んだり、好きなことをしたり、誰かに話を聞いてもらったりして、ゆっくりと元の状態に戻っていく。
そうした回復の仕方を知っている人は、結果としてメンタルが強く見えるのです。
意外かもしれませんが、メンタルが強い人ほど完璧主義ではないことも多いように感じます。
何でも100点を取ろうとすると、少しの失敗でも自分を責めてしまいます。
しかし「今日はこれくらいで十分」「七割できれば上出来」と考えることができれば、心の負担はずいぶん軽くなります。
メンタルの強さというのは、生まれつき決まっているものではありません。
むしろ多くの人は、失敗や挫折、人間関係の悩みなど、さまざまな経験の中で少しずつ心の持ち方を学んでいきます。
そうした経験を通して、「折れにくい考え方」が育っていくのだと思います。
だからこそ、今の自分がもし「メンタルが弱い」と感じていたとしても、それは決して固定されたものではありません。
感情との付き合い方や物事の受け止め方を少しずつ変えていくことで、心のしなやかさはゆっくりと育っていくものです。
メンタルの強さとは、決して鋼のように固い心ではありません。