精神疾患当事者が「やりたいこと」を見つけるのが難しい理由と、その向き合い方
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精神疾患を抱えていると、「やりたいことが見つからない」という悩みに直面することがよくあります。
周囲からは「好きなことを見つけたらいいよ」「目標を持ったほうがいい」と言われることもありますが、その言葉がかえって苦しくなることも少なくありません。
結論から言うと、精神疾患の急性期にやりたいことを見つけるのは、とても難しくて当たり前です。
❇️急性期は「探す」より「休む」が最優先
急性期とは、心も脳も大きく疲弊している状態です。
この時期は、思考力や判断力、興味関心そのものが低下します。
そんな状態で「将来どうしたい?」「何が好き?」と考えるのは、骨折している人に「どんな走り方をしたいか考えよう」と言うようなものです。
まず必要なのは、休むこと、悪化させないこと、生き延びること。それだけで十分です。
何もできない自分を責める必要はありません。
何もできないのではなく、今は休むことが仕事なのです。
❇️「やりたいこと」より「嫌じゃないこと」を探す
回復の初期段階で大切なのは、「やりたいこと」を無理に探すことではありません。
代わりに意識したいのは、嫌じゃないことです。
・これなら少し気が紛れる
・やっても苦痛が増えない
・終わったあと、どっと疲れない
この程度で十分です。
たとえば、音楽を流す、窓の外を眺める、好きだった作家の本を1ページだけ開く、動物の動画を見る、温かい飲み物を飲む。
どれも「意味」や「役立つか」を考える必要はありません。
❇️評価基準を変えてみる
多くの精神疾患当事者は、「できたかどうか」「成果があったか」で自分を評価しがちです。
でも回復期に必要なのは、別の視点です。
それは、自分にとって負荷が少なかったかどうか。
少しやってみてしんどくなったなら、それは今は合わなかっただけ。
大したことはしていないと感じても、悪化しなかったなら、それは大きな成功です。
❇️やりたいことは、後から意味を持つ
やりたいことは、最初からはっきりした形で現れるものではありません。
多くの場合、
嫌じゃないことをする
→ 少しだけ回復する
→ 振り返ったときに「これは割と好きだったかも」と気づく
この順番で見えてきます。
最初は「今の自分でもできたこと」だったものが、後になって「大切なこと」になることもあります。
❇️何も見つからない時期があってもいい
本当に何も興味が湧かない時期もあります。
生きているだけで精一杯な時期もあります。
それは失敗でも停滞でもありません。
回復の一部です。
「今は探さない」という選択も、自分を守るための立派な判断です。
❇️おわりに❇️
精神疾患当事者がやりたいことを見つけるのが難しいのは、怠けているからではありません。
心が必死に守ろうとしているサインです。
焦らなくて大丈夫です。
やりたいことは、元気の回復と一緒に、あとから静かに現れてきます。
今はただ、今日を乗り切ること。それだけで十分です。