精神疾患当事者がパートナーを探すことが難しい理由と、それでも関係を築くために
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「精神疾患を抱えていると、恋人をつくるのは難しい」
そう感じたことのある人は、決して少なくないと思います。
理由のひとつとしてよく挙げられるのが、依存や共依存に陥りやすいことです。
実際、当事者の多くがこの問題に悩み、苦い経験をしてきました。
では、どうしてそうなりやすいのでしょうか。そして、どうしたらいいのでしょうか。
❇️なぜ依存・共依存になりやすいのか
精神疾患を抱えていると、自己肯定感が下がりやすく、不安や孤独を一人で抱えることがとてもつらくなります。
「見捨てられたら終わり」「この人がいなくなったら自分は壊れてしまう」
そんな感覚が、心の奥に根を張りやすいのです。
その結果、パートナーを安心のすべての拠り所にしてしまったり、相手の言動や機嫌に人生そのものが左右されるような関係になりやすくなります。
これは決して意志の弱さではありません。
不安定な世界を生き延びるために、心が必死に選んだ反応なのです。
❇️恋人を「唯一の支え」にしない
依存を避けるために大切なのは、「依存しない相手を見つけること」ではありません。
それよりも、支えをひとつに集中させないことです。
医師やカウンセラー、気軽に話せる友人、趣味や創作、安心できる居場所。
これらが少しずつでもあると、「この人に嫌われたら終わり」という感覚は弱まっていきます。
依存は、相手が特別だから起きるのではなく、他に拠り所がないときに強くなります。
支えを分散させることは、関係を守るためでもあるのです。
❇️恋愛を「治療」にしない
恋人ができて調子がよくなることはあります。
しかし、恋愛そのものを回復や治療の代わりにしてしまうと、関係が揺らいだときに症状も一気に悪化しやすくなります。
治療やセルフケア、生活リズムは、できる限り「恋人がいなくても回る形」を保つこと。
恋愛は人生の支えにはなっても、治療の代替にはならないという視点が大切です。
❇️目指したいのは「並んで立つ関係」
理想の関係は、片方が常に支え、片方が支えられる形ではありません。
それぞれが不安定な部分を抱えながらも、隣に並んで立てる関係です。
しんどいときは「しんどい」と伝えていい。
けれど、相手にすべてを解決してもらおうとしない。
相手の人生を背負わず、自分の人生も明け渡さない。
助けを受け取ることと、依存することは違います。
その境界線を意識することが、長く続く関係につながります。
❇️病気を「免罪符」にしない
病気があるからできないことは、正直に伝えていいと思います。
ただし、それを理由に相手を縛ってしまうと、関係は対等ではなくなります。
病気は説明にはなりますが、相手をコントロールするための切り札ではありません。
この意識を持つことが、共依存を防ぐ大きなポイントです。
❇️完璧な自立を待たなくていい
「まず一人で生きられるようになってから恋愛を」
そう言われることも多いですが、精神疾患当事者にとって完全な自立を待っていたら、恋愛は遠のいてしまいます。
必要なのは、倒れないことではなく、倒れたときに立て直す方法を知っていること。
そして、その支え先が一箇所だけにならないことです。
精神疾患があるから、恋愛ができないわけではありません。
ただ、恋愛に救いを求めすぎず、相手を人生の中心に置きすぎないこと。
恋人は命綱ではなく、隣を歩く人。
その距離感こそが、当事者にとっても、相手にとっても、いちばん安心できる関係なのだと思います。