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さて、今日は、榎本博明著「カイシャの3バカ」(朝日新書)という本を紹介します。著者の榎本氏は、カリフォルニア大学客員教授、大阪大学大学院助教授を経て、現在MP人間科学研究所代表を務める心理学博士です。
組織には様々なタイプの「バカ」がはびこっています。
「おしゃべり」バカ、「イエスマン」バカ、「かわいこちゃん」バカ、「前例踏襲」バカ、「手柄横取り」バカ、「使い分け」バカ、「グローバル風」バカ、「根性論」バカ、「自己アピール」バカ、「輝きたい」バカ、「評価不安」バカ、「残業好き」バカ、「ハラスメント」バカ、「自慢話」バカ、「コンプライアンス」バカ、「俺は聞いていない」バカなど多岐にわたります。
どんな組織にもこうした様々な手に負えないバカがいて、周囲の人たちを困らせていますが、厄介なのは、こうしたバカが自分たちが周りに迷惑をかけているといった自覚がないことです。
榎本氏は「バカに自覚がないのは当然」で、それは3つの幻想(心理傾向)で説明できると言っています。その3つとは、①非現実的なほど肯定的な自己評価 ②過大視されたコントロール感 ③非現実的な楽観主義です。人間はこうした3つの幻想によって、心の健康を維持しているのです。
3つの幻想を持ち、やたらと楽観的な人物は、自分自身は極めて健康なわけですが、周囲の人たちを困らせ、組織のバカたちの方が健康度が高いという困ったことになっています。正常な感覚を持つ人たちを蹴散らして組織のバカばかりがしぶとく生き残っていきます。正常な感覚を持つ人よりも健康なので始末に負えません。しかし、組織のバカを何とかすることはできなくても、最低限そういった連中から身を学ぶ術を身につけることは可能です。
この本では、特に手に負えない3つのバカに対する対処法を教えてくれています。
その3つのバカとは
Ⅰ:責任を取らない「会議好き」バカ
Ⅱ:前例ばかりの「規則好き」バカ
Ⅲ:手柄を横取り「数字」バカ
です。
自分勝手に決めずに会議でみんなの意見や承認を取り決めるというのが悪いとは言えません。規則を守るべきという言い分を否定するのも難しく、数字で根拠を示せと言われて反論するのも難しいことです。だからこそ、この3バカはタチが悪いのです。
この本は、このなんとも迷惑な3バカの生態を探り、その心理メカニズムを解明し、その弊害から身を守る術についてヒントを示してくれているのです。
1 「会議好き」バカ
「会議好き」バカの特徴は、①何かにつけて会議を開きたがる ②現場の忙しさを無視して会議を開く ③意味のない会議が多い ④会議が儀式化している ⑤会議をやたらと長引かせる ⑥いつも会議戦略しか考えていない などです。
このような「会議好き」バカには、①現場の業務に支障が出る ②決定に時間がかかり機動力が発揮できずに出遅れる ③会議が怠惰な人たちの気晴らしの場となるだけ ④会議が存在アピールの場となり、本来の仕事が滞る ⑤やる気のある人のモチベーションを下げさせる ⑥責任の所在があいまいになり無責任体質になる などの弊害が生まれます。
「会議好き」バカの心理メカニズムはというと、①ただ座っていて、仕事をしている気分になれる ②仕事のできない上司は、会議で存在を誇示できる ③必要なことを決める場でなく、「承認欲求」を満たす場になっている のです。
ムダな会議がはびこるのは日本文化特有の事情があると言われています。それは、日本には「一方的な自己主張で人を困らせたり嫌な思いをさせてはいけない、相手の気持ちや立場を配慮して判断すべき」という「間柄の文化」があるのです。「会議好き」バカが的外れな議論や議論の蒸し返しをしても、相手を傷つけず敗者を作らないように配慮することから、会議が無駄に長くなり「会議好き」バカが猛威を振るうことができるのです。
普通は上司ともなれば、「自分が何とかしなければ」と当事者意識が活性化し責任感が意識されますが、会議で話し合ってみんなで決めるという体裁をとることで当事者意識を希薄化させ、責任回避をするために。責任を取りたくない人物が「会議好き」になるのです。
2.「規則好き」バカ
「規則好き」バカの特徴は、①規則・原則を盾に仕事の妨害をする ②ひたすら指示に従うように強いる ③どうでもよいような細かな規則にこだわる ④どんな小さなことでも「ホウレンソウ(報・連・相)」を求める ⑤問題が生じるたびに新たな規則を作る ⑥規則を逆手にとってサボったり、勝手な行動を取ったりする ⑦規則やマニュアルにないことは対応できない などです。
このような「規則好き」バカには、①仕事が止まり、チャレンジできなくなる ②周囲の人物のモチベーションを下げさせる ③これまでのやり方が通用しなくなった時に行き詰まる ④新たな発想を生む邪魔になる ⑤規則に縛られて身動きが取れない職場になる無意味なコンプライアンスに足を引っ張られるという弊害が生まれます。
「規則好き」バカの心理メカニズムは ①自分で考える習慣も能力もないが、規則を検索する能力はある ②自己判断を避けるのは、「成功追求動機」よりも「失敗回避動機」が強いから ③「レジリエンス(回復力)」が低いので失敗を強く怖れる ④自己防衛本能で、妬みの感情を無意識の世界に封じ込める ⑤自己チェックのモニターカメラが壊れていて、「セルフ・モニタリング」ができない のです。
3.「数字好き」バカ
「数字好き」バカの特徴は、①数字でしか人を評価しない ②数字にしか興味がなく、目の前の人間い関心がない ③数字は客観的で正しいと信じ切っている ④数字は好きだが、数字の背景を考えようとしない ⑤何でも「見える化」と言って、むやみに数値化、グラフ化にこだわる ⑥何かにつけ、「でーたでしめされてるんですか?」が口癖 ⑦数字で表せないことがあるのをわかっていない ⑧とんでもない数値目標を突き付けてくる ⑨なんでも金額に換算して説教したがる ⑩目先の数字を追い求めるだけ です。
このような「数字好き」バカは、①数字にならない仕事の質が低下する ②背後の要因が読めないので、仕事の改善につながらない ③見せかけの数字にこだわるため、数字の偽装、横取りが横行する ④意味のない数字が独り歩きする ⑤数字を信奉することで、思考停止に陥りやすい ⑥数字ばかりが猛威を振るい、仕事のやりがいが感じられなくなる ⑦部下の信頼を得られず、組織が機能しなくなる ⑧目先の死意地に囚われることで、将来を誤る ⑨「見える化」のために本来の業務時間が犠牲になる といった弊害が生まれます。
「数字好き」バカの心理メカニズムは、①「認知的複雑性」が低く多面的な観察ができないから、数字を単純に信奉してしまう ②「一面的説得法」と「両面的説得法」の使い分けが理解できない ③論理的思考力と発想力が、普通の人よりもかけている ④学生時代の数学コンプレックスが尾を引いている ⑤「目標設定理論」のさじ加減ができない です。
4.会社の3バカからの身の守り方
3バカは、すべて自信のない保身的な小人物であり、自信のない「自分好き」です。
3バカ共通の心理メカニズムは
Ⅰ:劣等コンプレックスの強い人物は、往々にして「敵意帰属バイアス」が働いている。
Ⅱ:日本人の自己愛過剰タイプは「誇大型」より「脆弱型」が多い。
Ⅲ:能力に自信のない人物ほど「見下され不安」が強い。
Ⅳ:自尊心を保てるかどうかは、「上方比較」と「下方比較」がカギとなる
Ⅴ:傷つきやすい人は、ストレスコーピングができていない。「情動コントロール志向のコーピング」が効果的
Ⅵ:人は理屈では動かない。情動コミュニケーションなら、相手の心をつかめる。
です。
3バカの弊害をなくそうとして、本人に、いかに迷惑か、いかに困っているか、説明しても感情的に反発されるだけです。3バカの気持ちのケアを心掛けながら、その弊害を最小限に食い止める工夫が必要です。そのためには、本当の信頼関係が築ける上役、先輩、同僚、後輩、部下のネットワークを築いておくということが重要になります。
個別の対処法として次のようなものが挙げられています。
(1)「会議好き」バカへの対処法
Ⅰ:会議中に本来の仕事に関わる内職をする
Ⅱ:やむを得ないとみなされるサボり方を工夫する
(2)「規則好き」バカへの対処法
Ⅰ:前例を探す
Ⅱ:例外規定を作ろうと提案する
Ⅲ:自己愛をくすぐる(自己防衛的な気持ちを刺激する)
Ⅳ:ツルの一声を期待する
Ⅴ:加点法的発想に導く
(3)「数字好き」バカへの対処法
Ⅰ:数字好きに付け込んで数字好きの弊害を防ぐ
Ⅱ:苛つかずに、数字で納得する思考力のなさに合わせる
Ⅲ:「見える化」へのこだわりに合わせて、大げさに見せる工夫をする
Ⅳ:都合の良いデータを生み出す
どのような社会、組織、会社にも困った手に負えないバカはいます。こうしたバカとうまく付き合わなければこちらの精神が疲弊します。この本て紹介されている対処法は心理学に則ったものなので参考になります。また、自分がバカになっていないかもチェックすることもできそうです。