【第四話】兄弟は分かった。でも、人はまだ見えなかった

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コラム
戸籍を見ていて、
だんだん分からなくなってきました。


兄弟が多い、ということは分かっています。
祖母の父には、九人の兄弟がいました。


でも、
戸籍の中では、
その兄弟は横一列に並んでいるだけです。


さらに、
その上下には、
親や祖父母の名前があり、
横には、甥や姪の名前も続いています。


一枚の紙の中に、
関係の違う人たちが、
同じように並んでいる。


眺めているうちに、
誰が、誰と、どうつながっているのか。
頭の中で、ほどけなくなってきました。


そこで、
紙に書いてみることにしました。


特別なことではありません。
ノートを開いて、
思いつくままに、
手書きで家系図を書いただけです。


縦に親。
横に兄弟。
その下に、子どもたち。


そうやって書き出してみると、
戸籍で見ていたときより、
関係は少し分かりやすくなりました。


「ああ、こういう並びだったのか」
そんな納得は、ありました。


けれど。
書いたからといって、
人が見えてきたわけではありません。


祖母の父の兄弟たち。
当然ですが、
顔は一人も思い浮かびません。


その子どもたち――
つまり、私にとっては
かなり遠い親戚になる人たちも、
名前だけが並んでいます。


ふと、
頭をよぎったことがありました。


もしかしたら、
近所に住んでいる、
あの人も。
実は、遠い親戚だったのかもしれない。


そんな考えが浮かびました。


実際、母に聞いてみると、
「たしか、あの家は親戚だったはず」
と言われました。


ただ、
どこまでが事実で、
どこからが記憶なのかは、
母自身も、
はっきりとは分からない様子でした。


戸籍をいくら見ても
そこから先には進めません。


紙の上では、
関係は整理できた。


でも、
その人たちが、
どんな場所で、
どんなふうに暮らしていたのか。


そこには、
まだ何も手がかりがありませんでした。


兄弟が多いことも。
世代が続いていることも。
本籍地が分かっていることも。


全部、事実です。


それなのに、
自分の中に残っているのは、
相変わらず、
輪郭のない感じでした。


分かったことを整理しても、
まだ、何もつかめていない。


この時は、
ただ、
そんなところに、
立ち止まっていました。
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