【第二話】祖母の父を、戸籍で初めて見た
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戸籍を何通か取り終えたあと
次に考えたのは、
「誰から見ていこうか」ということでした。
一番古く遡れた先祖でもいい。
まったく知らない名前の人でもいい。
けれど、
最初にちゃんと見ようと思ったのは、
祖母の父でした。
理由は、とても単純です。
先祖の中で、
わずかでも話を聞いたことがある人だったから。
祖母の父。
私からすれば、
ひいおじいちゃんにあたる人です。
母から聞いていた話は、
決して多くありません。
ただ、
「遊び人だったらしい」
そんな一言だけが、
なぜか記憶に残っていました。
仕事のことも、
どんな暮らしをしていたのかも、
詳しく聞いたことはありません。
正直に言えば、
強い興味があったわけでもなかったと思います。
「もしかしたら、
母から何か一つくらい、
新しい話が聞けるかもしれない」
その程度の気持ちでした。
戸籍を開いて、
祖母の父の欄を見ました。
年齢。
本籍地。
そこまでは、
特別な感情は湧きませんでした。
けれど、
一か所だけ、
目が止まったところがありました。
「二男」
それだけです。
たった一言。
でも、なぜか引っかかりました。
兄弟が何人いたのかも知らない。
何番目の子として育ったのかも、
これまで考えたことがなかった。
「二男、そうなんだ」
なぜか、
「長男だったら、もう少し話が残っていたのかな」
そんなことを考えてしまいました。
感想としては、
本当にそれくらいでした。
大きな発見があったわけではありません。
人物像が浮かび上がったわけでもない。
むしろ、
分かったことより、
分からないことの方が増えた気がしました。
「遊び人だった」という話。
それは事実なのか。
それとも、
誰かがそう呼んでいただけなのか。
兄とは、
どんな関係だったのか。
どんな立場で生きていたのか。
戸籍を見ても、
その答えは、
どこにも書いてありませんでした。
この時、
私は「次を調べよう」とは、
まだ思いませんでした。
戸籍を閉じて、
少しだけ、
そのままにしました。
祖母の父について、
実はほとんど何も知らなかった。
その事実だけが、残っていました。
戸籍を見れば、
何か分かると思っていた。
けれど、
名前を知っても、
立場を知っても、
その人に近づいた感じはしなかった。
分からないことが増えた、
というより、
「何が分からないのか」が、
はっきりしてしまった。
この時の私は、
それを前進とも、
後退とも思えないまま、
ただ、そのページを閉じました。