私のルーツ旅・第10話|ルーツの旅は、まだ終わらない

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コラム

拓本に浮かび上がった家紋を目にしたとき、
私は静かに息を呑みました。


白い和紙に滲んだ墨のかすれ。
一見すると、ただの模様に見えるかもしれません。


けれど、その一文字一文字が、
確かに語りかけてくる。


忘れられた先祖の声のように、静かに、深く。
風化した墓石に刻まれた戒名の一文字。


それが、過去帳の記録から
「初代・長蔵」だとわかりました。


さらに郷土史には、彼の本名が「銀蔵」
であることも残されていました。
——船大工だった男です。 


戸籍には書かれていないその人生にたどり着くのは、
想像以上に高い壁でした。


けれど、菩提寺の住職のひとこと。
そして、郷土史の片隅に残された短い記録。


それらが、空白だった時間を
静かに埋めてくれました。


耳を澄ませば、遠くで
波の音が聴こえるようでした。


舟を削る木槌の音が響く、墨縄の張られた造船小屋。


湿った木の香りが立ちのぼる。


──200年前の海辺の町に、私は確かに立っている。


そう感じました。


ーーーー本家に連絡を入れたときのこと。ーーーー
調査の進捗をお伝えすると、
電話の向こうで一瞬、沈黙が流れました。


「……そうですか、船大工……だったんですね」


少し震えた声で、そうおっしゃいました。


私の先々代が、なぜ桐タンス職人を始めたのか。その理由も、少し見えてきた気がします。 


それに、母が話していた“親戚の誰かが一代で財を成した”という話。家族の誰も、その人物が誰なのか記憶が定かではありませんでした。昔話だと思っていたけれど—


本当の話だったんですね。


初めて知ることばかりで、私も驚きました。


「……なんだか、自分でもご先祖のことをもっと知りたくなりました」


「自分のことを、、、、少しずつ知り直しているような気がします、、、。」


その言葉を聞いたとき、ハッとしたんです。


ああ、この旅はもう、
“自分のため”だけのものではないんだ、と。


旅のはじまり、第一話で私はこう問いかけました。
「自分の過去を辿る旅が、誰かの心を動かすのだろうか?」


その答えが、今、ここにあります。


──自分の旅が、誰かの心を動かすこともある。


戸籍、地図、郷土史、菩提寺、
本家の子孫との出会い、そして拓本。


さまざまな角度から辿ってきたその先に、
確かな手応えがありました。


けれど——旅はまだ終わりません。


今、私はもう一つのルーツを辿っています。


祖母の「養親」。その足跡を追い始めました。


先祖が漁師ではなく船大工だったことで、
「技術のルーツ」へと関心が向いたのです。


調べてみると、造船技術は江戸中期に紀州から伝わり、
銀蔵たちは“ヤンノー船”という大型の遠洋漁船を
造っていたことがわかりました。


郷土史の一行の記録——「城ヶ崎にて船を修理」。


伊豆と関係があるのでは?


そう思い名字や家紋を調べると、
本家の姓は静岡・愛知・神奈川に多いと判明。


そして、奇しくもこの地こそ、
養親の最古の本籍地でもあったのです。


養親のルーツを辿ることが、
実親の真のルーツへとつながっているのではないか。


そうした仮説のもと、私は次なる旅の準備を始めています。
この旅は、もともとは“私ひとり”のためのものでした。


でも気づけば、あの問いの答えにたどり着いていました。
「自分の過去を辿る旅が、誰かの心を動かすのだろうか?」


動かされたのは、誰かの心だけではなかった。
一番動かされたのは、きっと私自身です。


過去を辿ることは、今の自分を知り直すことでもあります。
ずっと置き去りにしてきた“自分の感情”に、
静かに耳を澄ます時間でした。


目を閉じると、海の匂いがします。
舟を削る音が聴こえます。


今はもういない誰かが、確かに生きていた場所に、
自分が立っている——


それだけで、「ちゃんと生きていていいんだ」と、
そう思えたのです。


そんな旅が、本当にあるのだとしたら。



第一章・完




次にルーツの旅を始めるのは──あなたかもしれません。


私も最初は、「何から始めればいいのか分からない」状態でした。
地図もなく、ただ手探りで始めた旅でした。


でも、調べるたびに見えてきたのは、
過去のことだけではありませんでした。


むしろ、“今の自分”を見つけ直す時間だったのだと、
今ならはっきり言えます。


そしてこの旅は、まだ終わっていません。
これからも、新しい発見が待っている。


だから今度は、あなたのそばで、
そっと地図を広げる役になれたら——そう思っています。


たった一枚の戸籍から、知らなかった物語が静かに立ち上がってくる。
それは、200年の時を越えて私に届いた、手紙のようなものでした。


実はこの旅は、私がこれまで支援してきた「終活」とは少し違います。
でも、どこか通じるものを感じました。


それは、「人生の終わり」に向けた準備ではなく、
“これからをどう生きていくか”を整える時間だったということ。


ルーツを辿るという行為は、過去と向き合うことでありながら、
実は「今この瞬間の自分」を見つけ直すことなのかもしれません。


この旅はきっと、あなた自身だけでなく、
あなたの大切な人や、未来へと続く誰かの心にも、
何かを届けてくれると思います。


戸籍、菩提寺、郷土史、聞き取り──
あなたのペースで、あなたらしいかたちで。


旅の記録を、一つの“物語”として、共に残していきましょう。

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ここまでお読みいただきありがとうございました。
私のルーツの旅・第一章はいかがでしたでしょうか。

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