南半球で今夏流行、日本でもインフルエンザが3年ぶり大流行? 新型コロナとワクチンは同時接種できる?
新型コロナウイルスのオミクロン株対応ワクチンの接種が9月下旬に始まりましたが、インフルエンザのワクチン接種も始まっています。
2シーズン続いて大流行がなかったインフルエンザが「今シーズンは流行するのでは?」との見方もあるようです。
新型コロナ用のワクチンとインフルエンザのワクチン、どちらを優先すべきなのでしょうか。
同時に接種した場合、副反応はどうなるのでしょうか。医療ジャーナリストの森まどかさんに聞きました。
ワクチン同時接種、可能に
Q.「インフルエンザが今冬は久しぶりに大流行するのでは?」との見方があるようです。なぜ、大流行を予測する声があるのでしょうか。
森さん「季節性インフルエンザの流行予測は、そのシーズンの南半球の状況が指標になります。
南半球の冬(その時、日本では夏)に流行したインフルエンザが、日本など北半球の冬に流行する可能性が高いからです。
新型コロナウイルス感染症の流行が拡大して以来、世界的に季節性インフルエンザの流行は見られませんでしたが、オーストラリア政府保健省の報告によると、オーストラリアでは今年4月中旬以降、インフルエンザ(インフルエンザ様疾患)の届け出数が過去5年平均を上回り、5月、6月をピークに例年以上の勢いで拡大しました。
この報告から、日本でも秋から冬にかけて流行が拡大する可能性が指摘されています。
また、昨年一昨年と流行の規模が明らかに小さく感染者が少なかったため、社会全体のインフルエンザに対する集団免疫が低下していることも指摘されていて、これにより今冬の流行の拡大につながる可能性もあります。
一般社団法人日本感染症学会は8月に、2022~2023年シーズンのインフルエンザ対策について提言を発表し、その中で『2022~2023シーズンは、インフルエンザの流行の可能性が大きい』と注意喚起しています」
Q.インフルエンザのワクチン接種によって期待される効果を教えてください。
森さん「インフルエンザウイルスに感染した人の発症(発熱、喉の痛みなどの症状が出る)を防ぐ効果が一定程度ありますが、最も期待されている効果は、発症した人が重症化し肺炎やインフルエンザ脳症などの合併症を引き起こすことを防ぐことです。
国内における研究では、65歳以上の高齢者福祉施設に入所している高齢者については 34~55%の発症を阻止し、82%の死亡を阻止する効果があったと報告されています」
Q.インフルエンザワクチンと新型コロナワクチンの主な違い(注射方式の違い、副反応など)を教えてください。
森さん「インフルエンザワクチンは日本では『皮下注射』と呼ばれる方法で接種し、新型コロナワクチンは『筋肉注射』と呼ばれる方法で接種します。
皮下注射は皮膚と筋肉の間にある皮下組織に薬液を注入し、筋肉注射はそれよりも深い層にある筋肉組織に注射する方法です。
インフルエンザワクチンの副反応で比較的多いものは、注射した部分が赤くなったり、腫れたり、痛みが出たりするなどの局所反応で、頻度は10~20%と考えられています。
全身反応としては発熱、頭痛、寒気、倦怠(けんたい)感(だるさ)などが5~10%の人にみられることが分かっています。
どちらも数日後には症状は消失します。
また、頻度は低いですが、アナフィラキシーという急性のアレルギー反応が出ることもあり、緊急の治療が必要な場合も、まれにあります。
新型コロナワクチンの初回接種(1回目、2回目)では、注射した部分の痛み、倦怠感(だるさ)、頭痛の訴えが多く、50%以上でみられました。
また、38.5度以上の発熱、筋肉痛や関節痛、寒気なども一定数の報告があります。
追加接種(3回目接種、4回目接種)での副反応も初回接種と同様の傾向がみられますが、脇の下の痛み、リンパ節の腫れや痛みは、3回目接種後の方が2回目より頻度が高かったと報告されています。
このような症状の多くは数日以内に回復しています。
また、頻度は低いもののアナフィラキシーが報告されているほか、ごくまれですが、接種後に心筋炎や心膜炎を疑う事例が報告されています。
いずれも軽症が多く、治療で回復しています」
Q.インフルエンザワクチンと新型コロナワクチンは同時に接種できるのでしょうか。
森さん「新型コロナワクチンとインフルエンザワクチンの同時接種は今年7月22日から実施可能になりました。
それ以前は、安全性に関する十分な知見が得られていないことから、異なる種類のワクチンを接種する場合は、新型コロナワクチン接種前後に13日以上の間隔を空けることとされていました。
しかし、インフルエンザワクチンと新型コロナワクチン同時接種の有効性と安全性が確認されたことと、諸外国でもインフルエンザワクチンと新型コロナワクチンの同時接種をおおむね認めている状況から、日本でも同時接種を含む13日未満での接種が認められました。
ただし、同時接種の場合、厚生労働省は『各ワクチンの局所反応を区別できるように、それぞれ別の腕に接種する(同じ腕に接種する場合には接種部位の間隔を2.5センチ以上あけることが望ましい)』としています」
Q.同時に接種すると、副反応が強くなるといった懸念はないのでしょうか。
森さん「同時接種によって副反応は変わりません。同時に接種した場合でも安全性に影響はないことが確認されています。
イギリスの研究で、2回目接種においてファイザー社のワクチン単独接種とインフルエンザワクチンとの同時接種を比較した試験を12施設で実施し、局所副反応と全身副反応の発生率は同程度であったと報告されました。
モデルナ社のワクチン単独接種とインフルエンザワクチンとの同時接種の比較はアメリカの6施設で行われ、局所副反応も全身副反応も発生率に大きな差がないと報告されました。
どちらの報告も、世界で最も評価の高い医学雑誌の一つである『ランセット(The Lancet)』に掲載されています。
一方、同じく世界で広く読まれている医学雑誌で米国医師会発行の『JAMA』には、新型コロナワクチン(追加接種)とインフルエンザワクチンの同時接種後1週間までの全身反応の報告が、新型コロナワクチン(追加接種)の単独接種と比較して、8~11%程度多かったことが示されました。
ただし、多くは軽度のものであり、重大な安全性への懸念はなかったと結論付けられています。
日本の『厚生科学審議会 予防接種・ワクチン分科会』はこれらの海外の報告を踏まえ、同時接種による安全性への懸念はないと判断しています」
Q.それでも「同時接種は不安」という人の場合、新型コロナとインフルエンザ、どちらを優先すべきでしょうか。
森さん「感染症専門医やワクチン接種を担当している医師に尋ねたところ、『どちらが優先ということはない』ということです。新型コロナワクチンとインフルエンザワクチ