二人で並んで歩いていることが嬉しい。

二人で並んで歩いていることが嬉しい。

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コラム
放課後の教室を出て、昇降口へ向かう途中、
窓の外が少し暗くなっていることに気づいた。

さっきまで差していた夕陽は、
厚い雲に隠れ始めている。

「雨降りそうだね」
陽菜が言う。

凪も空を見る。
確かに朝は晴れていたのに、
いつの間にか雲が増えている。

校門を出た頃だった。
ぽつ。小さな雨粒。
そして、もう一粒。

「あ」
陽菜が空を見上げる。
次の瞬間、雨が少しずつ強くなり始めた。

「急にきたね」
陽菜が鞄から折りたたみ傘を取り出す。

ぱっと開く。
そして、何の迷いもなく言った。

「入る?」

凪の心臓が跳ねる。
「え」

「風邪ひくよ」
陽菜は当たり前みたいに言う。

凪は頷くしかなかった。
傘に入る。

距離が近い。
近すぎる。
肩が触れそうになる。

雨の音が聞こえる。
車の音も。
人の話し声も。

なのに、凪の耳には、
自分の心臓の音ばかり響いていた。

「狭くない?」
陽菜が聞く。

「だ、大丈夫」

全然大丈夫じゃない。
でも、そう言うしかない。

陽菜は少し笑った。

その横顔を見た瞬間、
凪は慌てて前を見る。

雨は少しずつ強くなっていく。
道端には、紫陽花が咲いていた。

青。紫。
雨粒をまとって、
静かに揺れている。

凪は思い出す。
紫陽花は、ひとつの色じゃない。

青にも見える。
紫にも見える。
見る場所によって、少しずつ違う。

今の気持ちも、少し似ている気がした。
友情なのか。
憧れなのか。
安心なのか。
恋なのか。

まだ分からない。
でも、ひとつだけ分かることがある。

二人で並んで歩いていることが嬉しい。
この時間が終わってほしくない。

その気持ちだけは、
昨日よりもはっきりしていた。

雨音が少し強くなる。
紫陽花が揺れる。

その時だった。
陽菜がふと前を向いたまま言う。

「ねえ」

凪の胸が跳ねる。
「ん?」

少しだけ沈黙。
雨音だけが聞こえる。

そして陽菜が言う。
「まだ悠真のこと好きなの?」

凪の足が止まりそうになる。
雨音が、急に大きく聞こえた。


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