その気持ちは、もうごまかせなかった。
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コラム
家の窓を、
雨粒が静かに叩いていた。
凪はベッドの上で、
スマホを見つめている。
陽菜からのメッセージ。
『ちゃんと家着いた?』
たった一行。
それなのに、
何度も読み返してしまう。
返信はもうした。
『うん。着いたよ』
それだけ。
本当は、もっと送りたかった。
今日の雨のこと。
紫陽花のこと。
相合傘のこと。
でも、送れなかった。
変に思われるかもしれない。
迷惑かもしれない。
そんな考えが浮かんでしまう。
凪はスマホを置いた。
そして、天井を見上げる。
その時だった。
スマホがまた震えた。
陽菜からだった。
『よかった』
その後に、もう一通。
『風邪ひかないでね』
凪の胸が、
少しだけ苦しくなる。
どうしてだろう。
こんな何気ない言葉なのに。
こんなに嬉しい。
こんなに安心する。
目を閉じる。
すると、今日の帰り道が浮かぶ。
雨。傘。紫陽花。
そして、
「まだ悠真のこと好きなの?」
陽菜の声。
凪は布団を引き寄せる。
昔なら、答えられた。
でも今は、"わかんない"
その言葉しか出なかった。
なぜだろう。
悠真は優しい。
かっこいい。
一緒にいると嬉しい。
それは本当。
でも、今日、陽菜からメッセージが来た時の気持ちと
悠真からメッセージが来た時の気持ちは、
同じなんだろうか。
考えた瞬間、胸がざわつく。
その答えを考えるのが、少し怖い。
もし本当に違っていたら、
私は、何に気づこうとしているんだろう。
窓の外では、雨が少しずつ弱くなっていた。
そして凪は、知らないうちにスマホを手に取る。
陽菜とのトーク画面を開く。
何か送りたい。
でも、送る理由が見つからない。
その時、ふと指が止まる。
画面の上に残る、
陽菜のアイコン。
それを見つめながら、
凪は初めて思う。
明日、早く陽菜に会いたい。
その気持ちは、もうごまかせなかった。