陽菜が言った好きと。自分が考えている好きは、同じなんだろうか。
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部屋の時計を見る。
もう十一時を過ぎていた。
明日も学校なのに、なかなか眠れない。
スマホの画面は暗くなっている。
でも、手放せない。
凪はもう一度、
陽菜とのトーク画面を開いた。
最後のメッセージ。
『風邪ひかないでね』
その文字を見ているだけで、
胸の奥が少し温かくなる。
おかしいな。
ただのメッセージなのに。
ただの心配なのに。
どうして、こんなに嬉しいんだろう。
凪はスマホを胸の上に置いた。
そして目を閉じる。
その瞬間、陽菜との出来事が次々に浮かんでくる。
放課後の教室。
夕暮れの廊下。
雨の匂い。
紫陽花。
傘の下の距離。
陽菜の声。
「今の凪の方が好きだけどね」
胸がぎゅっとなる。
「好き。」
その言葉だけが、頭の中に残る。
でも、陽菜が言った好きと。
自分が考えている好きは、同じなんだろうか。
分からない。
分からないけれど、ひとつだけ、
はっきりしていることがあった。
明日、陽菜に会えたら嬉しい。
朝、教室に入ってきたら安心する。
話せたら嬉しい。
笑ってくれたら嬉しい。
その気持ちは、嘘じゃない。
窓の外では、雨が止んでいた。
雲の切れ間から、月が少しだけ見える。
凪は小さく息を吐いた。
そして、スマホを置こうとした時。
画面が光る。
新しい通知。
凪の心臓が跳ねる。
また陽菜かと思った。
でも違った。
表示された名前は、悠真。
『明日、数学のノート見せて』
凪は画面を見つめる。
少し前までなら、
その一言だけで嬉しかった。
すぐに返信していたと思う。
でも今は。
嬉しい。
それは確かだった。
けれど、
さっき陽菜からメッセージが来た時とは、
何かが違った。
その違いの正体を、
凪はまだ言葉にできない。
ただ、胸の奥で静かに思う。
私は、何を好きだと思っていたんだろう。
そして、誰を好きになろうとしているんだろう。