お前が泣くの、嫌なんだよ

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コラム
昼休み、
教室の空気はいつもよりざわついていた。

三條輝の告白が広まってから、
凪の席の周りには、
ひそひそ声と鋭い視線が飛び交っていた。

――なんであの子なの?
――凪って地味じゃない?
――告られたくらいで調子乗ってない?

凪は、下を向いてお弁当のふたを閉じる。

(お願い……誰も、何も言わないで)

そう願った瞬間。

「ねえ、凪さん。」

クラスで有名な“輝ファン”の
中心格・美緒が、机に影を落とした。

凪は一度だけ顔を上げ、
すぐに視線を落とした。

「……なに、かな」

美緒は笑っているのに、
目だけが笑っていなかった。

「どうして、
 よりによって“あの人”に告白されたの?
 あなたがそんな、
 選ばれるタイプに見えないからさ。」

周りの女子がクスッと笑う。

凪の胸がぎゅっと縮んだ。

「わ、私……そんなつもりじゃ……」

「つもりとかじゃなくて。」
美緒が机を指でトントン叩く。

「迷惑なんだよね、凪さんみたいな子が、
 “輝くんの近くにいること”自体。」

その言葉は、教室中に響いた。

凪の手が震える。

何か言わなきゃと思うのに、
声が出ない。

(どうしたら……いいの……?)

涙がにじんだ瞬間――

ガタンッ!

強い音と共に、
凪の机の横に影が落ちた。

「……おい。」

低く、怒りを押し殺したような声。

悠真だった。

周りの視線が一斉に凪たちへ向く。

悠真は美緒の前に立ち、
真正面から睨みつけた。

「さっきから聞いてれば、
 勝手なことばっか言ってんじゃねえよ。」

美緒は一歩後ずさる。

「な、なに? 私、事実言ってるだけ――」

「事実? は?」
悠真の声が鋭くなる。

「凪は、お前らに何かしたのか。
 告白されたのは凪のせいじゃない。
 それを嫉妬で八つ当たりするの、
 見苦しいって分かんねえの?」

クラスが静まり返る。

悠真は凪の肩にそっと手を置いた。

その手だけが、温かい。

「凪、ここ出よ。」

凪は驚いて顔を上げた。

「で、でも……授業、もうすぐ……」

「いいよ。お前が泣きそうなのに、
 ここにいさせられるか。」

その言い方は乱暴なのに――
凪の胸の奥に、すっと光が灯った。

(……どうして……こんなに……)

悠真が、手を差し出した。

「行こう。俺が連れてく。」

凪は、迷うようにその手を見つめ――
小さく、小さく頷いた。

二人が教室を出ていくその背中を、
誰も止められなかった。

美緒ですら、一言も言えなかった。

凪は歩きながら、涙をこらえきれず、
小さくつぶやいた。

「……どうして悠真が、
 こんなに……私なんかのために……」

悠真は横を向かずに答えた。

「“なんか”じゃねえよ。
 お前が泣くの、嫌なんだよ。」

その言葉が、凪の心の奥深くに触れた。

どうして、こんなにも。

どうして、こんなに優しいの。

涙がこぼれた。

それでも――

凪は、悠真のつかんだ手を、
離さなかった。
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