青年は、人の言葉に振り回される日々を送っていました。
褒められれば、胸がいっぱいにふくらみ、
まるで大空を飛んでいるような気持ちになる。
けれど、ひとたび批判を浴びると、
心の中にある“法廷”で、悪徳裁判官が大声で断罪を始めるのです。
「やっぱりダメなやつだ!」
「努力が足りない!」
その声は、心の奥で木槌のように響き、
青年の背筋をすっかり縮こまらせました。
──そんな日々に、ある朝。
師匠のもとを訪ねると、窓から爽やかな日曜の光が差し込んでいました。
鳥の声が響き、風が白いカーテンを揺らしている。
「師匠、私はどうしてこんなに心が揺れるのでしょう。
褒められると調子に乗ってしまい、批判されると生きる気力さえなくなるんです」
師匠はしばらく空を眺め、静かに微笑みました。
「人はね、好意50%、批判50%のときに、一番育つものなんだよ」
青年は驚いて聞き返しました。
「半分ずつ……ですか?」
「そう。褒められることで自信が育ち、
批判されることで改善が進む。
そのどちらも必要なんだ。
だから、裁判官の声だって、実は“成長の合図”に過ぎないんだよ」
青年ははっとしました。
そうか、あの裁判官は敵ではなく、
自分を磨くための片翼だったのだ。
そのとき、心の中の法廷で、悪徳裁判官がふぅと大きなあくびをしました。
「……まあ今日は日曜だしな。判決はお休みだ」
木槌が机に置かれ、法廷に光が差し込みます。
窓から入る風に乗って、裁判官の黒いマントさえ、やわらかく揺れていました。
青年は肩の力がふっと抜けていくのを感じます。
「好意と批判、どちらも大切……でも、休むこともまた必要なんですね」
日曜の朝。
法廷は静まり返り、ただ小鳥の歌声だけが響いていました。
心の奥にやさしい風が吹き抜け、青年は少し軽やかに歩き出したのです。